22話・改 せめて、素直に
「私を…… どうしたいの……?」
私はそう、口にする
龍斗には勝てるハズだ
でも……
コイツは……
加藤は……
別次元の、使い手だ
敵わない……
心のどこかで確信してしまった
だから、私の言葉には
諦めが、在った
そんな私に、加藤は言った
「なんもー? ただぁー……」
一瞬言葉を止め、再び口を開く
「色々となぁー…… 確認したい事がぁあるんだわぁー…… 協力してくんねぇー?」
私は言葉を選ぶ
何と答えればベストなのだろう……
そんな事は解らない
加藤の性格を知らない
まともに会うのすら初めてだ
たから、せめてもの抵抗を言葉にした
「嫌だとは、言えないんだね……?」
と……
コレが私の抵抗だった
今の私にとって精一杯の、抵抗だった
なのに……
だから……
彼の言葉は意外とも言うべきものだった
「えー? 嫌ならいーよぉ? 知りたく無ければァー?」
私のささやかな抵抗
ソレに彼の反意が欠片も無い……
それに、何だって?
知りたくなければとは、何の事!?
「え? 何を?」
素っ頓狂に、思いと言葉が同時に出る
それにも悪意は無さそうな半笑いを加藤は浮かべていた
「俺やぁー、龍斗がぁー知りたいのはぁー…… 1つだけなんだぁー」
1つ……
1つとは何だ……?
私は額に溢れる程の汗をかいている事が拭かなくても解る……
ドクン…… ドクン……
緊張で鼓動が聞こえる
顔の目の前に心臓があるかと錯覚する程、大きな心音が耳障りだ
集中し無きゃ……
軽く息を吐く
そして……
機嫌を損ね無いように、私は聞いた
「1つって…… 何を……?」
それだけ何とか、口にした
私の言葉に彼の表情が変わる
マズイ……
何か言葉を間違ったか!?
いや、深く考えすぎたらしい……
加藤は首を傾げてソレを言った
「んー、その前にぃー胡桃ー? だっけぇー? お前はぁ龍斗の彼女ぉー?」
龍斗がすかさず
「そうだ!」
と言い、私はそれにすかさず
「いつから!?」
「今さっき!」
「それは泉だよ!」
「お前はどうなんだ!?」
「私は! 私は……?」
一瞬戸惑う
考えた事も無かった……
私は私だ
それ以上でも、以下でも無い
泉の心は知っている
【裏側】から見ていたから……
だが、泉は私の半身……
彼女は私の表面に【あの人】が上書きしたもう1つの人格
私は……
私の心は……
どうなのだろう……
無理に考えてもしようが無い
正直どんな感情なのか解らない
でも……
熱が……
熱が、残っている
龍斗に抱き締められた時の……
胸の奥の、熱が……
私は答えた
彼の眼を見た
「私は……」
いいのか……
「私も……」
言っても、いいのか?
「キライじゃ無いけど……」
私はただ、素直に、そう言った
ホッとした表情を龍斗は見せた
「なら良かった♪」
「そんな顔したって…… 許さないんだから…… ね………」
私は龍斗から目を背ける
直視は出来ない
頬の熱くなる感覚が直視を避けた
でも
忘れる事は出来ない
龍斗は修を【消した】……
でも…… でも……
私は、【私】に戻ったから覚えている
任務に支障が出た
だから
だから
私は
桜子を
桜子を…… この手で【消した】
同じ穴のムジナだ……
涙が流れる……
コレは、私の涙……?
それとも泉の……?
「まぁー、感傷的になるなよぉー…… 俺は解るぞぉー? 胡桃ぃー、お前はぁ桜子を【消した】んだなぁー?」
我に戻る
足が震える……
どこまで
どこまで……
どこまで加藤は知っている?!
「大丈夫だってぇー 【消した】んだからぁー 【壊して】ないからぁー♪」
どうゆう事?
何の違いがあると言うの!?