20話・改 加藤
龍斗に抱き締められた
その時だ
スッパァァァァン!!
風船を割ったような甲高い音が体育館中に響く
それは体育館脇、非常扉から聞こえる!?
ガ!!!!!
と音が鳴り……
そして……
ガラガラガラガラと
非常扉がゆっくり……
ゆっくりと……
開いた
私は龍斗の胸の中で、そちらに目を向けた
見知らぬ顔が、そこには在った
「おいおいぃー、龍斗ぉー…… ずいぶんとまぁーお盛んなことでぇー♪ それに随分と堅くぅー呪を掛けた非常扉だなぁー…… 大したもんだぁー♪」
不気味に間延びした口調
体格の良い大男が非常扉をパンパンと叩き、笑顔を見せて、そう言った
誰だ!?
そう体を強張らせ、龍斗から離れる
龍斗もまた、非常扉を見ていた
そして
「加藤! うるせーよ!」
そう半笑いで答える
か……
加藤!?
今、加藤と言った!!
彼は2週間前に【アノ件】で……
何が起きているのか即座には理解出来ない
そう、考えを張り巡らせていた最中だった
ふと目の前のを見ると、加藤が……
加藤の顔が、その大柄な体を【く】の字に曲げ、私を覗き込むようにそこに在った
「ひぃっっっ!?」
あまりの驚きに私は仰け反り、飛び退く
いつ、目の前に!?
気配も無かった!
私の動揺とは裏腹の笑顔で加藤が口を開く
「これが噂の泉かぁー?」
そう言い、曲げた体を戻し、腰に右手を掛けて龍斗に向き直った
「ああ、そうさ♪」
龍斗が答えた直後だ
「2つ在るぞぉー?」
加藤は言う
2つ? 2つとは何だ!?
またも続ける言葉は加藤だった
「俺のよーな【覚醒】じゃねぇなぁー…… まぁー俺はー、突然変異だかんなぁー…… この子はー混在してるぅーみたいなぁー?」
龍斗は訝しげな顔で加藤を見る
「どういう事だ?」
「だからぁー、この女には魂ぃー? かなぁー? 2つあるぞぉー?」
と加藤は答えた
は?
何を言っている!?
私は私だ……
二重人格とでも言いたいのか!?
そう、思った瞬間だった
加藤は腰に置いていた手を私の頭の上に移動し、ホコリを払うような、蜘蛛の巣を取るような仕草をしていた
その手は少し
光っているように見える
急な事に、私は後ろに大きく飛び退いた
が、
ズダアァァン!!!
そのまま尻もちをついた
足に力が入らない!?
足が震える!!
怖さじゃ無い……
コレは何!?
何が私の体で……
そう、思った瞬間
脳内にビジョンが駆け巡る……
見たことも無い風景
パパ……
ママ……
それに
ココは……
実験室……?
そこまで何かが見えた時、目頭が熱くなる!!
涙では無い!!
言うなれば……
目だけ熱湯を掛けられた様な熱さ!!
痛いとも、熱いとも言えない!!
言葉も出ない!!
何が起きている!?
私の体で……
私の眼が……
何が!?
両手を眼に当てる
押さえ付ける
痛い……
熱い!!!!!
グッ……
ガッ……
「グッッッ……ギイイイイイィィィィィヤアアアァァァァアアァァァァ!!!!!」
私は叫んだ
のたうち回った
それで痛みが収まるわけは無い
でも、
今の私には、ソレしか出来なかった
プツン
私の中で、音が聞こえた
私の中で、【ナニか】が、弾けた