34話 心、ココに
最期の時の為、私達は目を閉じていた
彼が
「お前達…… どうした?」
そう、言葉にするまでは……
私は瞼を開く
そこに映ったものは……
死んだ、光の無い瞳から涙を流し
私達に向けた手が、震えている…… 2人
修と桜子だった
在る!
在るのだ!
まだ、心が!
叫ばずにはいられなかった
「修!…… 桜子…… 桜子ぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!!!」
精一杯叫んだ
彼女に届くように
心から、叫んだ!
加藤も叫ぶ
「そうだ! 胡桃! 叫べ!! 今なら、今のお前の力なら届く!!!! ありったけのお前の気持ちを伝えろ!!!! お前はもう識っているだろぅ! お前自身の気持ちも…… 桜子の涙の意味も!!!」
桜子はビクリと震え、仰け反った
その時に、何かが床に落ちた
ソレは知っている
その、表紙は知っている
知りすぎている
桜子の貸してくれた本だ!
桜子が、屈んだ
本を拾い、そして、ソレを見つめて居た
また一つ
落ちた涙は、本が受け止めた
奴は2人を見た
「早くしろ…… 時間が勿体ない……」
そう言った
2人は動かない
ハァ……
そう、溜息を奴は吐く
「使えない娘は、やはり使えないな……」
そう言った
ゾクリと何かが走る感覚に襲われる
娘?
彼の娘?
そうか……
コレも、忘れさせられて居ただけ
私達が、こんなに早く仲良くなれたのは……
貴女が、私の小説の趣味を知っていたのは……
貴女は初めての友達……
貴女は初めての親友……
私達は……
最初から同じ家に一緒に住んでいた!!
消されて居ただけだ、奴に!
私の記憶のあの子は……
あの子は
桜子だ!!!!
溢れる涙が止まらない
「桜子…… 桜子…… また、童話読んで!! 話聞かせて!! 貴女じゃ無きゃダメなの!! ダメなの!! 桜子じゃ無きゃ!!!」
光の無い瞳で涙を流す桜子は、私を見た
口元が
動く
ゆっくりと
動く
「……本 ……返シニ…… 来テ…… クレタンダネ…… 泉…… 受ケ取ッタヨ…… ポスト…… カラ…… 確カニ…… 私ノ元ニ……」
涙が溢れる
居る
ソコに居る
桜子!!
「桜子!! 私は…… もっと貴女と居たい!! もっと色々なトコ行って、色々な話して、お茶して、買い物行って、一緒にご飯作って、一緒に彼氏待って…… そうだ! 龍斗と両思いになれたんだよ! 桜子は知ってると思うけど、ちゃんと…… ちゃんと紹介するから!! だから…… だから…… もっと桜子と一緒に居たいの! もっともっとずっと桜子と居たいの!!!!!!」
「泉…… 私ハ…… 私モ…… 貴女ト……」
「うんうん!! 一緒に居よ! これからも、この先も、ずっと! もっとずっと!!!」
「嬉シイ…… ワタシハ…… 私モ…… 私も、ずっと貴女と居たい!!!!!」
パキィィーーーーン!
割れた音が響く
その眼に、光りが戻る
帰って来た! 桜子!!!
すぐに桜子は修を見た!?
そして
スッッッパアァァァァーーーーン!
はい!?
思いっきり引っぱたいた!?
「修!!! 何ボサッとしてるの!!! 結婚してあげないよ!!!!????」
は????
アンタら、ドコまで話進んでるの!?
そんな事を思うのも束の間
修の眼の輝きが戻った!?
そして
「痛ってぇぇ…… クウゥゥ…… やれやれ…… 桜子…… 俺はお前と結婚する為だけに生まれたからな…… だから…… 戻ってきたぜ? お前の元に、な♪」
そう、叩かれた頬を擦りながら修は言った
呆れた私は加藤を見る
ヤレヤレと加藤はお手上げの手振り……
呆れた私は龍斗を見る
赤く染まった顔は少し表情を変え、そして少し目を開け、ニヤリと笑った




