29話 出陣
どうにか鎮火する事に成功した
私達は床にへたり込む
そして、3人で顔を見合わせると笑みが溢れた
加藤が立ち上がり、私と龍斗に手を差し伸べて口を開く
「さあてぇー! 今度こそぉー行こぉーかぁー!」
私と龍斗は加藤の手を取り、立ち上がる
そして加藤は言った
「家の場所はぁー ドコだぁ-?」
私は一瞬戸惑うが、正直に話した
「なるほどなぁー…… まぁー1キロ先といったトコだなぁー……」
そう言った加藤は眼を瞑り
そして開く
ソコには
光り輝く、双眼の…… 紅眼があった
ん!!
そう、力を込めた加藤の表情を見た事を覚えている
一瞬だった
ソコにはもう、私達は居なかった
そう、ソコには……
校舎には居なかった……
私は振り向く
ソコには3階建ての家がある
見慣れた家
ココは……
私は…… 私の家の前に居た
ここは、私の家!?
一瞬だ
何の違和感も感じない
そう、一瞬の出来事だった
何をしたのか
ソレは即座に理解出来た
早過ぎた
走った速さとは次元の違う動き
さっきも、今も……
ソノ場所に瞬間移動
ワープと言うのが正解なのだろうか……
ただソレをしたのだと…… 理解した
驚きよりも納得が早かった
あの時、彼らと闘おうとした時、私は眼で追えなかった
コレが理由か……
そう識っただけ
ただ、ソレだけ
そしてコレが呪の穴を通るという事か……
そして、もう1つ理解した事
それは
本当に今から対峙するのだ
彼らと……
私は
わずかばかりの心の迷いを整える
加藤の手から私と龍斗は手を外す
そして家の門を潜る
目の前には玄関
見上げる3階建ての家
1階と3階の電気が点いて居る……
テクテクと足を進めた
ふと、門を潜った時に感じた、小さな重さ
私は立ち止まる
そして右手を制服のポケットに入れた
硬く、握るとグニャリと曲がるソレ
ソコに在ったのは本
桜子が貸してくれた本だ
私は本を取り出し、少しページを捲る
パラパラと……
サラリと目を通すだけで、内容が脳裏に浮かぶ
面白く……
そして、感動し……
読むのが速い私は数回読み直して居た
だから解る
ページを捲る際に目についた言葉
物語の流れ
会話の内容までもが鮮明に浮かぶ
私は暗い空を見上げながら、両手でパタンと本を閉じた
面白かったなぁ……
さすが桜子のチョイス……
私にピタリと当てはまる面白さ
また読みたいなぁ
彼女が選んだ本を……
いつか
いつかまた、会えるよね?
その時には
また、貴女の選んだ本が読みたいよ……
闇に染まる雲一つ無い夜空
月の灯りだけが怪しく注ぐ
視線を落とす私
目の前には玄関
この先は戦場になる
私は、抜けた門
そちらの右後ろに振り返る
ソコにはポストの裏側が見える
そしてソコに、私は本を置いた
貴女の形見だ
汚すわけにはいかない
いつかまた
会えた時には返さなきゃ……
会う
貴女に
絶対……
この戦い……
負けてなるものか……




