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共生世界  作者: 舞平 旭
聖餐の儀
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聖餐の儀

 イスズは12歳になった。



 5月15日

 最近は夜になると熱が出るので困る。

 お父さんは、イスズも大人になるのだなあ、と逆によろこんでいて、私のつらさなんか分かってくれなかった。

 お父さんは宮司さまに「せいさんのぎ」をお願いをしたと言っていた。



 6月6日

 明日、ぎ式の日だ。

 何だか不安。

 コノハは4月にやったと言った。でもくわしい事は教えてくれなかった。誰にも言ってはいけない事になってるって言ってた。

 私は神道の授業は好きだったから、神社のことは割と知っている。

 お父さんもお母さんも心配ない、って言ってるし。

 明日、神社の中に入れる!

 楽しみだな。

 まだ夕方だけど、ぎしきは夜中にやるからもうねよう。お休み。



 6月7日

 今日はぎ式をやった。

 別にかくすほどのことはしなかった。何でかくすんだろう?

 でも、なんか大人になった気分だ。

 他人に話してはいけないと神官さんに言われたけど、日記ならいいよね。忘れないうちに書いておこう!


 はいでんの手前まで、お父さんとお母さんはいっしょに来てくれたけど、そこから神社の人達だけになった。私と同い年の子供は他に5人いた。親友のナキタもいた!神官さんにおこられないように、見えないように手をふった。


 全員集まると、巫女さんに池みたいな所に連れていかれて体を洗ってもらい、あわいだいだい色の衣を着させられた。下着を着ないからスースーした。

 そして、はいでんの奥の部屋に連れていかれた。中は広くて暗かった。10人ぐらいの神官さんがいて、何かとなえていた。


 私たちは祭だんの前に連れていかれると、一人づつ名前を呼ばれて小さなお肉の乗った大きなお皿を渡された。そして祭だんで色々やっている神官さんの合図で食べた。

 うげー、生肉だったよ。

 でも味はうすい塩味で、脂が乗ってまずくはなかった。多分牛だ。口の中が少し鉄くさかったけど、聖水を飲ませてもらい、直ぐになくなった。

 その後はおじぎして終わりだった。

 なんかあっけなかったな。

 この後学校はしばらく休みだ。ぎ式の日の後はみんな1、2ヶ月休みを取っている。

 やった!



 7月1日

 10日ぐらい前から右のかたが熱くていたい。

 回じゅつしさんはあと1週間もすればいたくくなくなるよと言ってくれ、いたみ止めをくれた。

 もう、最悪。休みなのに何も出来ないよ。



 7月7日

 かたのいたみが全くなくなった。かたに赤いはれができた。

 やった!

 とっても可愛い逆立ちした小さな木みたいなやつだ。

 お父さんもお母さんもとても喜んでくれた。回じゅつしさんは、明日から学校に行ってもいいと言ってくれた。

 ナキタたちは元気かな。

 普段は学校なんか行きたくないと思っていたのに、行けなくなるとさびしいものだった。

 これからはしっかりと勉強しよう。『口』が開いてしゅうぎかんに行けるといいな。



 7月8日

 久しぶりの学校。でもナキタはいなかった。

 先生に聞くと、


「芽に当たって亡くなった」


 そうだ。


 授業が終わるとナキタの家に行った。

 ナキタのお母さんは、私を見ると抱きしめて泣いていた。


 夜にお父さんとお母さんが、


「ナキタさんちは『くよう』に出したそうよ」


「そうか。りっぱだ。かなりつらかっただろうな。イスズは本当に上手くいって良かった」


 と言っていた。


 私はナキタのためにお祈りをした。

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