はじめての特訓
「師匠、これから何処へ向かうんですか?」
歩きながらアレンが尋ねた。
「今向かっているのは、冒険者の街ナイラントだ。そこで冒険者登録をしてもらう。」
「冒険者登録すると何かあるんですか?」
「ああ、冒険者登録をすると、国境を越える時の税金が免除されるんだ。それと、登録の際に試験があるから、その為の、訓練もしておく。」
「え!冒険者になる為に試験があるんですか?」
冒険者になる為に試験がある事を知らなかったアレンは驚いて、声が大きくなってしまった。
「この世界の冒険者は、冒険者組合が管理しているからな。最低限自分の身を守れない奴は冒険者になれないんだ。」
「なるほど。確かに、そうすれば犠牲が少なくて済みますしね。」
二人が歩きながらそんな話をしながら歩いていると、既に日が暮れていた。
「だいぶナイラントに近づいたようだし、今日はこの辺にしておくか。明日は試験の為の訓練をするからそのつもりでな。」
「わかりました!」
(はじめての訓練か緊張するな。)
アレンは明日の訓練に緊張しながらも期待も抱きながら、眠りについた。
「おい、坊主、起きろ。」
次の日の朝、アレンはグランに起こされた。
「ん……どうかしましたか?」
「訓練するぞ。」
その言葉を聞き、一気に眠気が覚めたアレンは、バッと飛び起きた。
「は、、はい!!」
そして、荷物を持って、少し開けた場所に移動すると、グランはアイテムバッグから、剣を取り出し、アレンに差し出した。
「とれ。」
(急に雰囲気が変わった……)
「は、はい。」
アレンが剣を受け取る。
「まず第一に、戦闘において最も重要なことはなんだと思う?」
(なんだ、力?技?あ、気持ちじゃないか?ほら、よく言うじゃん、気持ちで負けるなとか。)
アレンは思った通りに答える。
「気持ち……ですか?」
「いや、違う。これは俺の自論だが戦闘において最も重要なのは、効率だ。一対一でもそうだが、特に多対一の場合いかに効率良く敵をさばくかにかかってくる。」
「な、なるほど。」
「まずは、回避からだ。これができなきゃ、話にならんからな。行くぞ。」
そう言うと、いきなり斬りかかってきた。
「うお!っぶな!」
あまりに突然のことでアレンは思わず苦笑した。
「いきなりなのに、よく反応したじゃないか。だがまだ遅いな。次行くぞ。」
そして、グランは攻撃を続けた。
(はぁ、はぁ、何とか避けるだけなら慣れてきたぞ。)
「そろそろ避けるのも慣れてきたようだし、次だ。避けるだけならそれでいいが、反撃するには、回避をしつつ前に踏み込み、そのまま攻撃に移る。ちょっと、俺に斬りかかってみろ。」
「行きます!うぉぉーー!」
言われた通りアレンはグランに斬りかかった。
次の瞬間、クランの姿が視界から消え、気付いた時には既に喉元を剣が斬り裂く寸前だった。
(す、すごい……全く見えなかった。完全に死角に入られたな。)
その後、アレンは幾度となグランの攻撃を躱し、反撃に出ようと試みるも、失敗に終わる。
(何がダメなんだろう。師匠のようにはいかないや。)
「お前は、反撃に重きをおきすぎだ。だから、自然と大振りになってしまっている。」
「そうか。わかりました。」
(なるほど。そういうことか。)
アレンがニヤリとはにかんだ。
(ふん、何か掴んだようだな。)
(おそらく、反撃の為の剣は振る必要がないんだ。)
再びグランが斬りかかった次の瞬間……アレンが視界から消えた。
(来た剣に対して、回避しつつ重心を落として、一気に踏み切り、そこに剣を添える。)
そして、グランの首元にアレンの剣が。
「やった!できた!」
「ふん、やるじゃないか。その感覚をわすれんなよ。」
(やはり、この坊主は飲み込みが早いな。)
グランが笑顔を見せる。
「よし、今日はこれくらいにしておこう。」
気が付けば、日は既に暮れかかっていた。
「明日はいよいよナイラントで冒険者登録の試験だ。気引きしめろよ。」
「は……はい!」
そう威勢良く返事をしたアレンだったが、はじめての特訓に疲れたのかそのまま眠りについてしまったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
はじめて特訓を受けて疲れたようですね。次回、冒険者登録の試験を受けるアレンを書こうと思いますのでお楽しみに。
誤字、脱字等ありましたら、お教え下さい。
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