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転生者の弟子の転生者  作者: 桑野堅夫
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旅立ち

(ん……ここは……、確か弟子になるためのテストをしていて……は!そうだ!結果は……結果はどうなったんだ⁉︎)


 アレンは思わず飛び起き、辺りを見回すと、長い茶髪を二つに結んだクリンとした目の可愛らしい少女がアレンを心配そうに見ていた。


「アレン、大丈夫?」


「サ、、サシャ!サシャこそ大丈夫なの?」


「あたしは、大丈夫だよ。怪我も無いし、でも、ごめんね、足手まといになっちゃって。」


 サシャは目に涙を滲ませながら謝ってきた。

 それに対してアレンは、


「足手まといだなんて、そんな事ないよ。サシャがいたから僕は頑張れたんだ。だから、泣かないでよ。」


 と、優しい言葉をかけると、サシャはさらに泣きながら、アレンに抱きつき、


「うん……ありがとう。」


 と、言った。


「ちょ……おい、サシャ⁉︎」


 そんなやりとりをしていると、


「おう、起きたか。」


 そこに 聞き覚えのある声が聞こえそちらを向くと、グランがスープの入った鍋をかき回していた。


「体の方はどうだ?随分と無茶をしたじゃないか。」


「そういえば、どこも痛くない。治癒魔法をかけてくれたんですね。ありがとうございます。あの、弟子の件なんですが。」


    グウゥ〜〜〜


(しまった。さっきから漂ういい香りに思わず腹が鳴ってしまった。)


「まあ、落ち着け。腹減ってるだろ。これ食っとけ。」


 そう言ってグランはアイテムバッグから木皿を取り出し、鍋に入ったスープをよそい、差し出した。


「い、いいんですか?いただきます。」


 アレンはそれを啜る。


「うまい!うまいです!」


「そうか、それは良かった。まだあるからゆっくり食うといい。嬢ちゃんも食べな。起きてから、ずっと坊主の事気にかけて何も食べてなかったろ。」


「は……はい。ありがとうございます。」


そう言ってサシャもまたスープを啜った。


(そうだったのか。心配かけちゃったな。)


 と、密かに反省するアレンなのだった。



 食事が終わり、サシャの親戚がいる村へと歩きながら、再び話が始まった。

 まず切り出したのはグランだった。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はグラン、ま、通りすがりの冒険者だ。」


 それにアレンとサシャが続く。


「僕は、アレンです。トタ村で暮らしてました。」


「同じく、サシャです。」


 軽い自己紹介を終え、全員が姿勢を正す。


「よし、じゃあ本題に入るか。まずはやはりあの男のことだが、奴は魔王軍幹部のドイル、殺戮好きの狂人だ。」


「あいつ……絶対許さない。」


「気持ちはわかるが堪えろ。お前じゃすぐに殺されるのがオチだ。"今は"な……」


「それって……」


 アレンは思わずつぶやき、グラン自らがその言葉を述べるのを待つ。


「お前を強くしてやるって言ってるんだよ。」


「あ……ありがとうございます!」


 その会話を聞いていたサシャが話についていけず困惑している。


「ちょ、ちょっと待って。アレン、また無茶するつもり?」


「ごめん、サシャ。でも、このチャンスを逃したら僕は、また大切なモノを守れないと思うんだ。だから……」


「わかった。でも、あたしもついて行く!」


 その宣言にアレンが驚いた。


「それはダメだよ。サシャまで危険な間に合わすなんて、そんな事出来るわけないじゃないか。」


 アレンがすぐさま反対する。

 それに対してサシャが再び口を開いた。


「あ、、あたしだって魔法使えるもん!気は弱いかもだけど、強くなりたいの!アレンの助けになりたいの!」


 いつもは気の弱い サシャなのに、今回は意志が固かった。

 しかしこれを認めるわけにはいかない。


「サシャ、ごめん。こればっかりは認めるわけにはいかないんだ。でも、僕らが大きくなって、サシャを守れるようになったら、また会えるよ。そのときは、一緒に行こう。約束だ。」


「わかった。約束だよ?」


 サシャは最初から、自分の意見にアレンが賛同するとは思っていなかった。

 しかし、それでも口にしてしまうほど、本気だったのだ。

 そして、言質を取ることに成功した。

 今はそれでよかったのだ。




 しばらくして、村に着いた。

 サシャとはここで別れとなる。


「アレン、気をつけてね。それと、絶対に無茶はしないでね。」


「うん。」


 アレンは強く頷く。


「アレン!私も強くなるから!アレンに負けないぐらい。だから、約束忘れないでね。」


 そう言って、サシャはアレンを強く抱きしめた。


「うん、絶対忘れない。約束だ。」


 アレンもまた、抱き返した。


「坊主、そろそろ行くぞ。」


 グランがアレンを呼ぶ。


「はい。じゃあね。」


「うん、じゃあね。気をつけて、行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


 そう言葉を交わし、アレンたちは村をあとにした。

 しばらく行くと、グランがアレンにこう言った。


「あの嬢ちゃんは強くなるぞ。」


「はい。僕も負けないよう頑張ります。」


 こうして、アレンとグランの二人の旅が始まったのだった。

ようやく、二人を旅立たせることができました。次回もお楽しみに。

誤字、脱字等ありましたらお教えください。

感想お待ちしております。

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