ランクアップ
アレン達が街に到着すると、キラーウルフを抱えているためか、注目が集まり、あちこちでヒソヒソと囁かれている。
たまらず、急ぎ足で宿へと向かった。
宿に着くと、ユラがみんなを呼んだ。
ミラはキラーウルフを見るや否や口をあんぐりと開け、固まってしまった。
ハンナに至っては、腰を抜かしてしまっている。
少し遅れて、グランがやって来た。
「ほぉ、キラーウルフか。」
「はい。こいつがハンナさんを襲った魔獣です。」
そう言って、これまでの事を説明した。
「なるほどな。そうだアレン、お前、こいつを冒険者組合に持って行ってこい。そこそこの金になるだろう。それと、おそらくランクも上がる事だろう。」
説明を聞いて納得したグランが、そう言った。
「ランクですか?」
「ああ、キラーウルフの討伐は、、Aランク冒険者向けのクエストだ。それをCランクのお前が倒したんだ。Aランクになるかは微妙なところだが、確実にBランクにはなるだろう。」
「だ、大丈夫なんですか?こんな子供がキラーウルフなんか持って行って。」
「お前も一応は冒険者だ。何とかなるだろ。」
「そ、そうですかねぇ?」
アレンは、いまいち腑に落ちないが、とりあえず行ってみることにした。
冒険者組合に着くと、そこにいた全員の視線が、アレンに集まる。
(うわー、ここでもみんな見てるよ。帰って来たときといい、ここまで来る途中といい、やっぱり子供が魔獣を抱えてる光景なんて異様だよね。)
「はぁ、早いとこ済ませちゃおう。」
そう言って受付に行くと、受付嬢が嫌そうな顔を必死に取り繕い、ひきつった笑顔を見せた。
「どういったご用件で?」
「はい、キラーウルフを討伐したので、買取をお願いしたいのですが、それと、これでランクって、上がりますか?」
「少々お待ちください。」
そう言うと、奥の部屋に行ってしまった。
しばらくすると、石板を脇に抱えた筋骨隆々の老人を伴って出てきた。
「お前か、キラーウルフを倒したやつってのは。まだ餓鬼じゃないか。本当にお前が殺ったのか?」
(ここは尻込みしちゃだめだ、堂々としなきゃ。)
「はい。」
老人は、値踏みをするようにアレンを見る。
「フン、嘘はついていないようじゃな。よかろうランクを一つ上げてやる。そういや、自己紹介がまだじゃったな。わしはサモットの冒険者組合長ヨウムじゃ。」
「ありがとうございます。僕は、アレン・スタインです。よろしくお願いします。」
「そうじゃ、冒険者プレートを出してくれるかの。」
アレンが首から下げた冒険者プレートを組合長に渡した。
渡されたプレートを受け取ると、抱えていた石板にかざす。
すると、石板とプレートが輝き始めた。
光は数秒で小さくなっていった。
「よし、終わったぞ。これでお前はBランクだ。後これは、キラーウルフの買取金の金貨20枚だ。」
「ありがとうございました。」
礼を言ってお金を受け取り、その場を後にした。
宿に帰り、グランにこのことを報告すると、自分よりランクが上になったと皮肉を言ってきた。
笑いながらそれをかわし、キラーウルフの代金をグランに差し出した。
「ん?なんだ?」
「これ、キラーウルフのお金です。」
「それは、お前が戦って勝ち得た金だ。受け取れるわけないだろ。明日にはここを出るからその金で何か好きな物でも買って来るといい。明日には、この街を出るからな。」
「はい!いってきます!あ、でもこの街のことあんまり知らないんだよな……そうだ!ミラさんたちも誘ってみよ。」
こうして、ミラとユラを誘って、サモットの街へと繰り出すのだった。
アレンが、初めて報酬を手にしました。次回このお金で何を買うのでしょうか?お楽しみに。
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