呪い / アレン、魔法を教える
遅くなりました。すみません。
道中の会話から、ミラとユラは町の宿屋の娘で、薬草を採りに来たのは母親が魔獣に襲われ、怪我をしたためだということがわかった。
さらに、ユラは魔法を使えるとのことだ。
会話をしながら1時間ほど歩くと、街が見えて来た。
「うわぁー、ついたー。結構大きな街だなぁ。」
「よろしければ、うちに泊まりませんか?きちんとお礼もしたいですし。」
「そうか、なら甘えさせてうとするか。」
「はい、お願いします。」
こうして、グランとアレンはミラ達の宿に泊まることになった。
「お母さーん、ただいまー。」
「ただいま。」
二人が帰宅を知らせると、奥からカツン、カツンと、杖をついたような音が聞こえて来た。
「ミラ!ユラ!どこに行ってたの!心配したじゃない!」
現れたのは、足に包帯を巻いて松葉杖をついた女性だった。
その女性は二人に駆け寄ると、強く抱きしめた。
「ごめんなさい、お母さん。でも、これで怪我、治せるでしょ?」
そう言って、採取した薬草を差し出した。
「これは……あなた達、そこまで……ありがとう。」
母親のハンナはそう言って、薬草を受け取り、傷口に塗り込んだ。
しかし、ハンナの傷は治らなかった。
「え?なんで治らないの?この薬草は傷に効くんじゃなかった?」
予想外の出来事に三人は困惑した。
「ちょっと傷を見せてもらえますか?」
アレンが傷を見ると、その傷には魔法で呪いが付与されていることが判明した。
魔法を使える魔獣は、他の魔獣よりも強力であるため、低ランクの冒険者では歯が立たなく、ベテランの冒険者ですらチームを組んで討伐するほどだ。
「なるほどなるほど、これなら僕の魔法でいけそうですね。反呪、治癒。よし、これで大丈夫ですよ。」
「すごい、攻撃魔法だけでなく、回復魔法、さらに呪いまで解くなんて。私より歳下なのに……あなた本当に何者なの?もしかして、噂に聞く勇者様だったりする?」
「いえいえ、僕は、勇者なんて大それたもんじゃないですよ。それに、師匠は僕なんかよりずっと凄いんですよ?」
ミラの言葉に少し照れたようにアレンが答えた。
アレンがこのような反応を示した理由としては、褒められ慣れていないという事だろう。
グランは滅多に褒めない。
褒めて伸ばすのも悪いことではないが、この世界では、油断と過信に繋がる。
だが、グランにもアレンを褒めるときがある。
それが、初めて何かを成し得た時だった。
そのため、徐々に褒められることが少なくなってきたのだ。
「あのー、その事なんですけどちょっといいですか?もし、もし出来るのであれば、私に魔法を教えてくれませんか?」
そこに、今まで黙っていたユラが口を挟んだかと思えば、出た言葉は、グランに魔法を教えてくれないかとの事だった。
「うーん、そうだな、教えるといっても、2、3日長くても1週間程だからな。うーん、それならアレンに見てもらうといい。」
少し考えた末、グランが出した答えは、アレンに教わると良いとの事だった。
「よろしくお願いします。」
「え?僕、ですか?僕なんかで大丈夫なんですか?」
アレンが戸惑いの声を上げる。
「アレンも、一通り魔法は使えるようになったはずだ。それに、人に教える事で自分の身にも良い効果があるだろう。」
グランのその言葉で、アレンは明日からユラに魔法を教えることになったのだった。
次の日、朝からアレンとユラは街を出て、少しひらけた場所に来ていた。
「まず、魔法を使うに関して大切なのは、自分の中の魔力を感じることです。そして、その魔力を自分はどうしたいのかを強くイメージしてください。最後に、詠唱して、イメージを固めて魔法を放ちます。これが一連の流れですね。」
「なるほど、わかったわ。」
ユラは目を瞑り、自分の中にある魔力に意識を集中していく。
続いてイメージを膨らませていく。
そして……
「火よ、標的を焼き尽くす力となれ、火球!」
放たれた火球は、ゴルフボールほどの大きさで、空に消えていった。
「うーん、これじゃ、威力が弱いですね。もっと、攻撃的なイメージを膨らませて下さい。」
言われた通りにやってみるも、なかなかうまくいかず、この日の魔法練習は終了した。
弟子だったアレンが教える立場になりましたね。今のところ難しそうですが、果たしてユラは、うまく魔法を使いこなすことが出来るのでしょうか。
お楽しみに。
誤字脱字等ありましたら、教えて下さい。
感想お待ちしております。