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転生者の弟子の転生者  作者: 桑野堅夫
12/23

雨の日と魔獣

 朝から雨が降っている。

 二人は雨用のコートを身に纏い、ぬかるんだ道を歩いていた。


「やっぱり、雨の中の移動は一苦労ですね。」


「ああ、でも、もうすぐ着くから頑張るんだ。」


 そんな話をしていると、少し離れた所から、


「きゃぁーーー!!!」


「だ、誰かーー!!誰かいませんかー!!」


 と、二つの悲鳴が聞こえてきた。


「アレン!」


「はい!」


 悲鳴が聞こえ、最小限の会話で互いの意図を察し、その声のする方へと向かった。

 わずか数ヶ月でこれだけスムーズに意思疎通出来るのは、それだけ互いを信頼し合っているという事に他ならない。

 それを可能にしたのは、アレンの必死さだった。

 朝早くから自主練に励み、日中は厳しい稽古、夜には、新たに加わった魔法操作の鍛錬、それらを凄まじいまでの飲み込みの早さで着々とこなしていく。

 強くなりたい、その一心で。

 それに応えようとグランもまた、アレンに正面から向き合い、己の全てを教えようと決断できた。

 そんな師弟(ふたり)だからこその信頼関係だ。

 本当のグランを知る事ができたのも大きい。 あの一件以来、二人の関係はより強固なものになった。

 彼らは、共に過ごしてきた時間はそれほど長くはないが、その時間は、とても深く、濃いものなのであった。



 二人が悲鳴の元へとたどり着くとそこには、巨大な猪に似た鋭い牙を持った魔獣が、泣き崩れる三つ編みの少女と、それを抱きしめて守ろうとするショートヘアの姉らしき人物に、襲いかかろうとしていた。

 グランとアイコンタクトをとったアレンが、すかさず両者の間に入り込み、剣で魔獣の牙を受け止めた。


「二人とも、大丈夫ですか⁉︎」


 アレンの問いかけに呆気にとられる姉妹。

 それもそのはず、普通の人から見ればアレンは、ただの子供にしか見えないのだから。


「心配することはない。ああ見えても、あいつそこそこやるからな。」


「で、でも……」


 背後からの男の声に一瞬ビクッとした姉妹は、今、目の前で起こっている出来事をミラは、未だに信じられずにいた。

 自分と同じどころか、少し年下にも思える少年が、その小さな身体で、巨大な魔獣に全く力負けしていない。

 それどころか、ぐんっ、と、押し返し、魔獣の体勢を崩す。

 アレンは、魔獣の喉元に剣を突き刺した。

        ブヒュィーーーー

 苦しそうに叫び、もがく魔獣。


水槍(アクアランス)!」


 放った水魔法が、横っ腹に突き刺さり、魔獣が倒れた。


「す、すごい……ジャイアントボアを一瞬で……あなた達何者なんですか?」


 思わず感謝の言葉よりも疑問が先に出てしまった。


「俺たちは、ただの冒険者さ。それ以外の何者でもない。それより、お前達こそどうしてこんなところにいるんだ。」


「私達は、サモットから、薬草の採取に来たんです。それで、帰る途中にジャイアントボアに襲われて……危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


 姉妹は二人して、頭を深々と下げ感謝するのだった。


「それと、申し訳ないんですが、もし、サモットに向かうのでしたら、同行させていただけませんか?」


「別に構わんぞ。」


「本当ですか⁉︎ありがとうございます。私、ミラと申します。よろしくお願いします。こっちは、妹のユラです。」


「よろしくお願いします。」


「俺は、グラン。こっちはアレンだ。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


 こうして、四人はサモットへと向かうのだった。

誤字脱字等、ありましたら教えて下さい。

感想お待ちしております。

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