恋唄
初書きです!拙い文ですみません。暇でしたら、是非読んでやって下さい。
許す許さないというのは、エゴイズムだ。僕が何方を語ったからといって何が変わるでも無い。其れでもふっとその言葉を漏らしてしまうのは無知だからではなく、そう思ってしまうのが生き物なんだろう。
毎日を只々過ごしてきた僕が君に出逢ったのは少しの話だ。ぼんやり立っていた処、
「あれ、どうしたの。見たことない子だけど」
君はさらりとした長い髪をふわりとさせ、言った。其れ以来彼女の通う高校まで彼女を迎えに行くのが僕の日課になった。わかりやすく、一目惚れしたのだ。彼女とは本当に色々な事を話しながら歩いた。
「今日お母さんと喧嘩しちゃった」
「謝らないとダメだよ」
「今日誕生日なんだ、プレゼント貰ったよ」
「良かったね。おめでとう」
何でもない事が、ものすごく楽しくて輝いていた。君に告白だなんてそんな大それた事は思わないけど、心の底ではわかり合っているっていう安心感があった。
あのね、とある日彼女が頰に薄い朱を浮かべて言った。
「私、明日告白する」
春風みたいに笑ってそう言った。僕は急な告知に狼狽えた。馬鹿みたいに口を開けていた。
「...誰に...?」
「部活の先輩なの。もう退部しちゃうからいっておきたいの」
彼女の表情は、今迄僕が見たどれよりずっと綺麗だった。僕は急激に色を失う世界をやっぱり呆然と眺めていた。
自分の性格がかなり悪かった事を知った、翌日。彼女が学校から出てきた。...隣に背の高い爽やかな青年。
「あ、あれがさっき言ってた...」
「そうです。何時も待っててくれるんです」
青年を見上げてはらりと笑う彼女に、きゅっとむねが苦しくなる。青年が憎らしい。
「なぁ、朱美。いつデートできるかわからないから予定は後で送っとく。良いかな」
はっとした。僕は彼女の名前すら知らなかった。何も知らないじゃないか。どうしよう。この青年に負けたくない。
「ねぇ、やめときなよ。付き合うのなんて」
彼女は僕の頭をくるくるなでた。
僕は彼女と青年の邪魔をしようとして沢山の事を画策した。でも二人は何時も何時も笑いあってもっと仲良くなってしまう。僕は諦めきれず、ぐだぐだと彼女の横にとどまっていた。そんな日々に、其れは天啓と同じくらい唐突に起こった。
青年が、死んだ。
飲酒運転のトラックに巻き込まれ、そのまま彼女だけを残して僕の前に現れる事は無かった。彼女の憔悴しきった顔が辛かった。こんな事なら、青年がいてくれた方が良かった。彼女はもう笑わない。僕では笑わせられない。青年でないといけなかったのに。彼女を悲しませて何をしてるんだ...。重くて冷たい紺色の感情が湧く。どうしていいか分からず、身を攀じる。
「...許さないからな...」
青年がいるはずの空を見上げる。こんなに綺麗な星空、何で今さらそんな事するんだ。
でも、彼女は少しだけ微笑んだ。
...そうだよね、僕じゃだめなんだ。
許す許さないっていうのはどうしようもなく孤独だ。僕は彼女から離れよう。君に笑っててほしい。その役目はどうしたって僕には無理だ。だけど、これだけは本当なんだよ。僕は君に恋してた。
愛しい君よ 僕は猫
将来の夢は小説家です。気に入って下さったかた、在原 功という名前を見かけたら、開いてやって下さい。プロになれるよう、善処します。此れからも不定期で更新する予定です。宜しければ、またお願いします。