第25話 死闘⑤
腰から手榴弾をとり、安全ピンを引き抜き敵が来ている方へと投げ込む。
敵の機体に直接当たったのか、地面に落ちたのか、投げて数秒後に敵の機体が集まる真ん中で大きな爆発が起こる。
レーダー上では三機を戦闘不能状態にしているが、今の一樹にはそんなものは見えていない。
いかに効率よく敵を排除できるか、その一点にのみ精神を集中させているのだ。
オーディーンの飛行機能を応用し、足を踏ん張る瞬間に加速し通常では有り得ない速さでの走りを実現する。
「まずは一機!」
両足を地面に付け、逆噴射をすることによって敵の少し手前で急ブレーキをかける。
敵が目の前に来たタイミングで右上へと切り上げ、敵の機体を真っ二つにする。
近づいてきた他の機体を足で蹴り飛ばし、その後ろにいた敵機をも数体まとめて押し込む。
肩に斜めに吊り下げてあった軽機関銃を左手に持つ。
足で腹を抑えた状態で、ゼロ距離から軽機関銃を乱射。
後ろで身動きが取れない状態だった敵機を数体まとめて戦闘不能状態にする。
「──ッ!」
しかし、背後から近付いてきた敵への反応が遅れ、一樹の乗るオーディーンの背中目がけて刀が振り下ろされる。
刹那、激しい爆発音とともに刀が消えた。
その刀は振り下ろされることはなく、機体の腰に直撃した弾丸によって爆散したのだ。
『俺達のことを忘れてもらっちゃ困るぜ! 援護は任せておけ! あと、榊原さんがめっちゃ怒ってるぞ一樹』
広人の正確すぎる狙撃だ。
乱戦の中で確実な狙撃での援護はとてもありがたい。
ちらりと京子と二ノ宮の方を見る。
二ノ宮が敵機の振るった刀を弾き、ガラ空きになった上半身を京子が一歩踏み込んで、サブマシンガンの銃弾を首元まで順に叩き込んでゆく。
二人で一機ずつ確実に倒しながら進んでいる。
息のあったコンビネーションのため、あっちは心配ないだろう。
管制塔との通信を繋げ直す。
『あ、繋がった! ちょっと茅山くんどういう──』
「救援物資と一緒にいつもの箱を今から送る座標に落としてください」
『え、あ、はい。すぐに用意します』
通信を終えるとともに、刀を鞘に収め、軽機関銃を両手で持って未だ立っている機体の頭を狙って打ち続ける。
弾切れになるまで打ち続け、弾切れになった瞬間に素早くリロード。
そして再び連射音が響き、その度に一機ずつその場に倒れ込んでゆく。
しかし、一樹のメイン装備は刀。
元々多くの弾丸を持っている訳では無い。
さらにこれだけ激しく連射を続ければ、すぐに弾が尽きることなど容易に予想できる。
そのまま最後の弾丸を射出したところで、一樹は動きを止めて天を仰ぐ。
『ジャスト三十秒だ。さすがだな』
オーディーンの機体の四分の一はあろうかという大きさの黒いケースが空から落ちてきていた。
ケースを両手でキャッチし、かなり接近してきていた敵をケースで薙ぎ払う。
敵との距離がある程度離れたところで、ケースを開ける。
中に入っていたのは軽機関銃用の弾丸と、同じ大きさの金属質の板が二枚取り付けられた装置が二つ。
「よし、二回戦と行こうか」
二つの装置は一つに繋がるように設計されている。
一つに繋がったその装置を俺達はレールガンと呼んでいる。
「レールガンの発射許可を申請します」
『申請を受諾、発射許可を申請します……レールガンの発射許可でました』
レールガンの使用のために機体には細工をしてある。
手のひらにプラグがあり、レールガンに電力を直接供給できるようになっている。
もちろんレールガンを発射するだけの電力を、機体内で足りるはずもないのでレールガン本体にはバッテリーが搭載されている。
「レールガンへの電力供給を始める。全員援護を頼む」
『了解!』
近くにいた二ノ宮と京子が一樹の援護体制に入る。
『機体内の全電力供給を一時停止。
全電力を両手の供給プラグへと集中、レールガンへの電力供給を開始。
レールガン内供給済み電力六十パーセント』
予備電力を使用して外部カメラに接続し、外の様子を伺う。
広人と桐島さん達の狙撃のおかげか、二ノ宮と京子はなんとか敵を抑えることが出来ている。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
この作品は、見ての通りまだ完結していません。
この戦闘機兵オーディーンを書き始めてとても時間が経ってしまいました。
非常に残念ながら、このまま未完結で終わりとさせていただく方向で考えております。
しかし、続きを望む声が多くあるのであれば、読んでいただける読者様のためにも是非書かせていただきたいとも思っています。
どんな些細なことでもいいので、感想やコメントを残してくださると幸いです。




