第17話 人工知能兵②
海岸線からかなり離れた位置に敵の戦艦が見える。
恐らく戦闘機兵の補給や運搬を行うための船なのだろうが、同時に主砲で狙って来ている。
敵は既に上陸し、港を支配しかねない勢いだった。
「敵にもそれなりのレーダーが搭載されているだろうから、俺達の接近にも気付いているだろう。一気に終わらせるぞ」
『私と雪乃、桃咲さん、それに一樹くんで敵を撹乱しましょう』
奈々美さんの案に乗っかることにした。
俺の隊の狙撃手達はかなり優秀だ。
いくら戦況が混乱しようとも、確実に狙うだけの技術を持っている。
「広人、桐島さん、頼んだよ」
二ノ宮には擬似管制塔の役割を担ってもらう。
敵の増援などをいち早く伝えてもらうことで、被害の拡大を防ぐ目的がある。
「……作戦開始!」
奈々美さんが先行して建物の間から出ていく。
予想通り相手もこちらを動きを把握していたようで、こちらの一機に対して三機が囲むように待ち構えていた。
「ステレス機か……ッ! 全員各個撃破!」
『一樹君、すぐに桃咲さんの援護に行って! 彼女の機動力では、この三機の相手は少々厳しいと思うわ』
桃咲の全装甲は完全に威力重視の装備のため、通常装備での敵を複数相手にすることには適していない。
「分かった。十秒で向かう、それまでは自力で耐えろ」
『了……解……!』
倉庫の上からの初弾をトップスピードで躱し、そのまま飛行モードに入り飛ぶ。
腰から刀を抜き取り、飛んだ勢いのまま縦に一線。
「まずは一機」
続いてリロードをしていた機兵へと刀を投げる。
素早くその機兵へ向かって飛び、足で動かなくなった機兵を蹴り飛ばし刀を取り返す。
ここまでで五秒。
「これでラストだ」
あっという間に仲間を二機戦闘不能にされ、うろたえていた最後の一機に素早く近寄り横に斬りつける。
だがそれを敵機は同じく刀で受け止める。
パワー勝負でオリジナル機が量産機に負けることはないため、敵機は両手で刀を抑えた。
チェックメイト。
左手で腰の短機関銃を取り出し、至近距離で引き金を引く。
「桃咲、今行くぞ」
身体中に装甲をつけた桃咲の機体は、動く度にギシギシと重そうな金属音を鳴らす。
全装甲の分厚い装甲は、狙撃銃のような口径の大きな銃でなければ貫くことはできないため、桃咲は装甲に隙間の出来ないように丸くなっている。
「一人そっちに飛ばす。そいつはどうにかしろ」
『一人……なら』
言った通りに、桃咲の方に気を取られていた敵を一機背中から蹴りつける。
真っ直ぐ桃咲の元へと飛んで行った敵の機兵を、なにか恨みでもあるのかと疑ってしまうほどの力を込めた裏拳で迎え撃つ。
桃咲の機兵の腕が、敵機の上半身を無理矢理抉り取る。
『中央……突破……援護……頼む』
「よし、広人は桃咲の援護を、奈々美さんは桃咲について中央突破。水無さんと京子は桐島さんの援護で右回りで敵の横を取れ。作戦は以上だ」
『『『了解!』』』
作戦の指示と同時にブースターを点火。
刀に反射する太陽光が、その鋭利さを不気味に感じさせる。
敵機が一歩も動けない速さで二機を同時に斬り倒す。
『一樹くんどうする? このまま海まで押し返しちゃう?』
「あぁ、海上に出たら俺が対応する。逃げる敵ほど戦いやすいものは無い」
レーダー上で味方と敵の位置を常に把握する。
中央の奈々美さん達がやや先行し過ぎだ。
「京子、水無さん、一気に仕掛けるぞ」
『えっ? かずくんこっちなの〜?』
言っている意味が分からないが、とにかくこの戦況を一転させるには奇襲が一番だ。
戦場を撹乱させてやる。
オリジナル機の基本性能は、一般的な量産機の約三〜五倍。
目では追えても、機体の性能上追いつくことは不可能なのだ。
「……さぁ、止めてみろ」
黄金に光る装甲が残像として映り、藍色のマントが揺れる。
通った道には崩れ落ちる敵の機兵のみが残ってゆく。
『相変わらずのキチガイ性能だね〜』
「ほら、お前達も続け」
と言っても俺が右翼側の敵はほぼ全滅させてしまったのだが。




