第10話 エキシビションマッチ②
ジャンル別日刊ランキングで二位を取ることが出来ました!
これからもよろしくお願いします!
『く、くそがぁぁぁ!』
全装甲隊の一人の戦闘機兵が動きを止めた。
『次だ』
加瀬は既に次の目標へと動き出している。
こうなるとAクラスは……
『くっ! 倒さなくてもいい、あいつの動きを止めろ!』
まぁ、それが一番妥当な手段だろう。
『こうなったら二人で行くぞ!』
全装甲隊の残りの二人が、一斉に加瀬へと飛びかかる。
装甲がある分、他の職種よりも圧倒的に重量があるため、乗られると動けなくなる、のだが。
「ねぇねぇ、全装甲二機に乗られて大丈夫なの?」
「いや……」
大丈夫であるはずがない……少なくとも普通のパイロットと機体なら。
加瀬を含め、三機ともピクリともしないため、ついさっきまで盛り上がっていた観客も、思わず肩を落としてしまっている。
『よし、良くやったぞ! そのまま時間を稼いで』
『すまん、もう無理だ……』
ドサッという重厚音とともに、全装甲二機が同時に崩れ落ちる。
機体の前面には、大量の刀傷が付いていた。
『さぁ、続けようか。次は誰だ?』
『何なんだよ……何なんだよお前は!』
Aクラスのリーダーと思しき人物が、理性を失ったのか、スナイパーライフルをやけくそに乱射する。
そんな弾に加瀬が当たるはずもない。
『なんだ……興醒めだな……つまらんすぐに終わらせてやるよ』
「……は?」
俺の目でもかろうじて追えたぐらいだった。
あまりの速さに、何が起こったか分かっていない観客も多い。
とにかく加瀬は、尋常じゃあない速さで残りの三人を撃破した。
『あ……ゆ、優勝は、JクラスSEVENTEARSです!』
数秒の後のアナウンスに、観客がその事実を認識し、歓喜や失望を口にしながらそれぞれが校内戦を最高に楽しんでいる。
「さてと、俺達の出番だな……後輩には負けられないからなぁ」
『二十分の休憩の後に、エキシビジョンマッチを行います! エキシビジョンマッチの相手をするのは、昨年の優勝チームリーダー、茅山くん率いる日本国軍パイロットチームです!』
◇◆◇◆◇◆
「どうした広人? もしかして緊張してるのか?」
エキシビジョンマッチの準備を始めて十五分、ここまで広人は一切声を発していない。
「ば、ば、馬鹿言うなよ! こ、この俺様が、き、緊張なんて、する、わけ、ないだろ?」
「めっちゃ緊張してるね〜」
さらっと傷を抉る桐島と。
「あははははは! 君そんなキャラじゃあないでしょ!」
笑いをこらえることをせず、ガッツリと傷を抉る水無。
「二人ともその辺にしとかないと、飯島くんがいつも以上に使い物にならないじゃない」
「フォローに……なってない……です」
今日も通常運行の奈々美さんと、恐らくこの中で一番の常識人の桃咲。
この六人が今回のエキシビジョンマッチのメンバー。
自分の中でベストのメンバーを選んだつもりだが、上に立つ者の苦労がなんとなく分かった気がした。
情に流されてはならない。
しっかりと自分を持ち、勝てるメンバーを、生き残るためのメンバーを選ばなければならない。
「さぁ、行こうか!」
「「おぉ!」」
俺達の登場とともに、観客が再び元気を取り戻す。
加瀬達は既に会場の中心に設置された、丸いカプセルの前に立っている。
「君が加瀬くんか……お手柔らかに頼むよ」
「あなたが茅山先輩……よろしくお願いします」
「なーんだ思ったより礼儀正しい奴じゃん」
……聞こえてるぞ広人。
「……もし、もし俺が勝ったら、俺を隊に入れてください」
耳を疑った。
確かに加瀬の実力ならば隊に入れば、間違いなく茅山隊の総合力は上がるだろう。
俺は自分が思っているよりも、加瀬のことを評価しているのかもしれない。
……しかしだ。
「軍は自分の欲求を満たすための場所じゃあないぞ?」
「そんなことは分かっています。俺の実力ならば入れなくはないでしょう? パイロットは足りていないはずです」
確かに今、軍では圧倒的に戦闘機兵のパイロットが足りていない。
作戦の中核にも据えられるため、この現実は今の日本にとってかなりの一大事だ。
「おい! お前がどんだけ強いか知らないけどな、お前みたいなやつが隊を壊すんだよ!」
「やめろ広人……加瀬、そういうことはまずはお前達が勝ってからだ」
「……分かりました」
加瀬は渋々ながらも納得したようで、チームメンバーとともに、カプセル状のモジュールに入ってゆく。
「こりゃ負けられないな……!」
「えぇ……負けるつもりなど元々ないけれどね!」
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