表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/78

第3話 リスタート③

 二年生になって一週間が経った頃、突然俺達「日本国軍総合戦闘兵神奈川基地戦闘機兵隊K16部隊」通称北川隊のメンバー全員へ招集がかかった。

 詳しい要件は全く伝えられないまま、ただ基地に来るようにと連絡を受けたのだ。

 よって何も分からないまま俺達は神奈川基地へと来ている。


「また仕事かしら?」


「いや、それなら緊急用メールを使うはずだからな……」


「秘密にするのも大概にして欲しいよな!」


「軍にも色々あるんだろう」


 四人揃って神奈川基地へ訪れるのは、三月の中旬に遠征救援任務へ行った時以来だった。

 新潟基地での一件から北川隊に、戦闘系の任務が任されることは無くなった。

 その真意は理解している。

 誰が俺達を傷付けないようにしたのか、誰がその為に自分の地位を落としたのか。

 実力が正当に評価されていない訳では無い。

 自分で言うのもなんだが、軍には相当評価されていると思う。

 しかしこのままではその実力に見合った、何度の高い任務に就かされると判断したのだろう。


「お、あれ隊長じゃないか? おーい!」


 広人が大きく手を振ると、本部の入口前にいた隊長、北川(きたがわ) 涼平(りょうへい)さんが手を振り返してくる。


「もう全員揃っているようだね」


「えぇ、全員で来たので」


 俺達が着くなり、涼平さんの隣にいた軍人が俺達を本部の中へと案内した。

 入ってすぐ事務室のような部屋があり、軍に入った時に貰った写真とICチップの通行証を見せる。

 基地内の移動はすべて通行証を使わなければならない。

 複数人の場合は、入った所にいる管理人に通行証を確認してもらう必要があるのだ。


 少し中へ入った場所にエレベーターがある。

 八つあるうちの一つに全員が乗り込み三階へと向かう。

 七人が乗っても窮屈さを感じさせない、部屋と言われても全く疑問を抱かない広さ。

 本部三階にある部屋の一つ。

 主に会議に使用される部屋には、外に声が漏れないようにかなり分厚い扉が構えられている。


「さ、他はもう集まっているから君達も入ってくれ」


「他……?」


 涼平さんと案内役の軍人が重々しい扉を左右から押し開ける。

 流石手入れは行き届いているのか、見た目によらず開いた時の音はかなり軽いものだった。


「誰かいるのか?」


 窓から差し込む強い日差しが逆光となって、そこにいる誰か"達"の顔はよく見えない。


「大分遅かったね」


「待ちくたびれたよ〜」


「レティを待たせるのは紳士じゃないね」


「かずくーん!」


 全員の顔と名前が一致した。

 涼平さんが部屋の電気を付けたので、予想が見事に的中していたことが分かった。


「水無さんに桐島さん、二ノ宮に京子も、なんでここに……?」


 いや嘘だ。

 本当は自分でも分かっている。

 無意識のうちに繰り返したくないと願ってしまったのかもしれない。


「これが君達を呼んだ理由だよ」


「彼女達も北川隊に入るということですか?」


「少しだけ違うかな、詳しい話はこの方から聞いてくれ」


 涼平さんは案内役の人とアイコンタクトを交わす。

 大佐を表す腕章を付けた、緑色の軍服に身を包む大分体格のいい人。


「申し遅れた、私は日本国軍陸軍総合戦闘部隊大佐の金丸(かねまる) 統司(とうじ)だ。前任の榊原(さかきばら)さんに変わって神奈川基地戦闘機兵隊K16部隊を統括することになった」


 これからよろしく頼む、そう言って金丸さんはホワイトボードを出してきた。


「なぁなぁ、大佐って偉いのか?」


「まぁ歯向かえば広人の首が簡単に飛ぶくらいは偉いかな」


「まじか……」


 そこには俺達の顔写真と名前のついた紙が、マグネットで貼ってあった。

 金丸さんは更にホワイトボードへ書き加える。

 左側には「金丸、K16」右側には「榊原、K17」と。


「K17って……新しい部隊でも増やされたんでしょうか?」


「そうだ新しい部隊の名前は神奈川基地戦闘機兵隊K17部隊、隊長は君だ茅山 一樹くん」


「僕が……ですか?」


 金丸さん(いわ)く、オリジナル機のパイロットになった者が代々隊長を務めてきたらしい。

 そしてその隊のメンバーというのが、今回先に集まっていた四人となり、奈々美さん達三人にはどちらの隊へ行くかを決めてもらうために集まってもらった、とも言っていた。


「一樹くん……」


 奈々美さんがとても迷ったような、困ったような目で見てくる。

 涼平さんには言葉では表しきれないような恩がある。

 上からの命令で北川隊を離れなければならない俺とは違って、奈々美さん達には選ぶ権利があるのだ。

 北川隊か新しく結成された茅山隊か。


「遠慮はしなくていいんだぞ、お前達がいなくなった所で新しい人員が派遣されるだけだからな」


 そう言った涼平さんは、言葉とは裏腹に寂しそうに笑っていた。

 俺達がそうだったように、同じく涼平さんも隊での日々が楽しかったのだろう。


 結局奈々美さん達の件は保留扱いとなった。

 選択期日は次の日まで。

 その日までに決めなかった場合は、そのまま北川隊に残ることとなる。

 結論が出された段階で、新部隊「日本国軍総合戦闘兵神奈川基地戦闘機兵隊K17部隊」通称茅山隊の結成会議は終了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ