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第2話 リスタート②

『それでは全員位置について下さい。実力テスト……開始!』


 白いスタートラインに並んで立つ十機の訓練機が、掛け声と共にギシギシと機械音を立てながら一斉に動き出した。

 タイム設定が夜になっているため、周囲は見づらくなっており、機体の頭部の横に付いているライトでもあまり遠くまで見えない。

 今回は協力して動くことは禁止されており、他の人との通信ももちろんの事禁止されている。


「まずは進みながら遭遇した敵を倒していくか」


 高く伸びる木の枝に機体が触れないようにしながら進む。

 木の影から薄茶色のデコイのような機体が、突如顔を出した。


「これが敵か意外と簡単に見つかるものだな」


 左の腰に携えた(ソード)を引き抜き、走りながら敵の方へ剣先を向ける。

 しかし、俺のソードが届くか届かないかの距離まで迫った時、その敵は右手にアサルトライフルのようなものを構え、引き金を引いた。

 あまりにも突然の反撃だったが、咄嗟(とっさ)に横にあった太めの木を蹴って俺は空に舞う。

 アサルトライフルの弾道は明らかに俺の機体の残像を貫いていた。


「こいつら反撃までしてきやがるのか……!」


 実力を計るものとしては確かに戦闘をすることが手っ取り早いのも分かるが、聞かされていないのは流石にやり過ぎだと思うのだが。

 まさか和泉ちゃんが忘れてたとかじゃないよな……


「くっ……!」


 コンピュータで管理されているのか、一定の距離まで近づくと撃ってくるようだ。

 俺は一息吐き捨て、大木から飛び出す。

 ソードを右手に構え、一直線に突く。

 月夜に激しい打突音が響く。

 刃こぼれしかけている鉛色のソードが素早く空を切る。

 三段突き。

 死に剣とも呼ばれているこの技は、この機械の体だからこそ思い切って出来るのかもしれない。

 引いて突くという一見簡単そうに見えるこの動きの中で、いくつもの工夫が施されている。


「不意打ちがあったとはいえ一機とやっただけでこの様か……」


 装甲は悲鳴を上げ、ソードは刃こぼれし、もはやどちら側から斬り掛かればいいのか分からなくなっていた。

 剥がれかけていた装甲の一部を自ら割り、機体の俊敏性を少しでも上げる。


「これを発案したやつは相当いやらしいヤツらしいな。この状態で連戦か……望むところだ!」


 明らかに一機ではない駆動音。

 それは歩いているというよりかは、キリキリと統一された動きをしている。

 恐らくさっきの機体のように止まったまま動けない機体もあれば、下半身にキャタピラの様なものを備え動ける機体もあるのだろう。

 強く地面を蹴り出し、こちらから攻撃を仕掛ける。

 敵は三機。

 一斉掃射によるその攻撃を低い姿勢で飛ぶように躱す。

 素早く後ろへ回り込み、背中へ蹴りを入れる。

 バランスを崩した機体は倒れ、極端に大きいキャタピラのため立てなくなっている。

 立つためにじたばたしているその機体からアサルトライフルを奪い、残り二機の方へと撃ち込む。

 致命傷とは行かないが、装甲が少ないテスト用の機体なので、ダメージから動きが鈍くなっている。


「さぁこれで終いだ」


 二機の最後の力を振り絞った乱射撃に対し、同じ数の弾丸を当ててすべて撃ち落とす。


「言っただろう止まったように見えるってな!」


 二機の頭を掴みお互いにぶつけると、数秒後に停止した。


 その後は特に苦戦することなく森を抜け、実力テストを完遂させた。

 最終的に森を抜けてこられたのは、一斉にスタートした十機のうちたった三機だった。

 俺と奈々美さんと水無さんの三人だ。


「お疲れ様水無さん。流石と言えばいいのかな?」


「ありがとう。けど危なかったよまさかあそこまで攻撃をしてくるなんてね。私は森を抜けるだけでやっとだったよ」


「ははは、俺もだよ。奈々美さんが規格外すぎるんだよ、撃破数九だなんて」


「その分タイムは遅かったけれどね」


 俺達のスコアは全員S評価だった。

 評価上から順にS、A、B、C、Dとあるので、つまり一番上の評価だ。

 他にも広人や桃咲、桐島さん達もS評価を貰う事が出来た。

 軍で隊を任されているのだから、S評価くらい貰えなければ話にならない。


 実力テストも終わり、俺達は教室へと向かっていた。


「いやまさかあんな所から敵が出てくるとは思わなかったな〜」


「あらゆる可能性を視野に入れとけって言ってるだろ広人」


「流石に落とし穴にはまってるなんて思わないでしょ!」


「ふふふ、あなたらしいわね」


「あ……あの人……」


 中学の時よりも広めの廊下を、反対方向から歩いてくるのは教頭と──


「校長か……」


 恐らく俺以外も何となく気付いているのだろう。

 遠山という苗字はそこまで珍しくもないのかもしれないが、それでもその(まと)っているオーラにはどことなく似ているところがある。


「校長おはようございます」


「えぇ、おはよう」


 俺に続いて広人達も校長に挨拶をしていく。

 一番後ろにいた奈々美さんが挨拶をした時、あまりはっきりとは聞こえなかったが校長は僅かに耳元で(ささや)いていた。


「恥さらしがよく私に話しかけられたわね」

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