第21話 親善試合②
「という訳で親善試合をやることになりました」
「同じ中学ってだけで親善試合やれるなんて、茅山くんも中学の頃はかなりの有名人だったのでしょうか?」
クラス長がメガネをかちゃりと上げ直して、問い詰めるように迫ってくる。
「いや、元クラスメイトで少し話すくらいの仲だったから......」
「ふーん......」
納得してないよ。絶対に納得してないよ......。
「経緯なんてなんでもいいよ! Cクラスとやれるなんてワクワクするぜ!」
「そうね! 私もやる気が溢れ出してきた!」
広人と春奈が変なテンションで盛り上がっている。
「全く......騒ぐのはいいけれど、Cクラスの実力は相当なものよ。分かってるのかしら」
「ははは......まぁ2人とも戦闘になれば結構頼りなるし、大丈夫だよ」
みんなの前にいる時こそお気楽脳天気な広人も、戦闘になれば正確無比の狙撃手に、元気いっぱい体育会系娘はみんなを守る盾持ち剣士に豹変するのだ。
「おーい! 茅山くーん!」
少し遠くの方から手を振りながら叫ぶ女の子を先頭に、6人ほどが歩いてきた。
「遅かったね水無さん」
「いやぁまたうちの問題児が急に消えてね〜」
水無さんは桐島さんの頭にぐりぐりとげんこつを押し付けている。
「ゆっきー痛いよ〜」
少し涙目の桐島さんが呼ぶ「ゆっきー」とは恐らく、絶対、水無 雪乃のことを指すのだろう。
「ふふっ逆に尊敬するレベルの失踪率ですね」
「本当に困ったもんだよ。首輪でも付ければ大人しくなるのかな......」
その後俺達はメンバーの紹介を済ませ、水無さんのチームと俺達のチームで少しばかり話した。
「似てると思ったらやっぱりななみんか〜」
「桐島さんは相変わらずのようね」
「うん、ななみんもね〜」
桐島さんと奈々美さんが同じ中学で、そこそこ仲が良かったのは少しばかり驚いた。基本的に他の人と距離を置き、壁をつくる奈々美さんに友人がいるなんて......。
「一樹くん今失礼なこと考えてないかしら......?」
「いえ、決してそのような事はありません」
もはやサイコパスだよ奈々美さん......!
「ふふふふふ。佐伯さんあなたとは気が合いそうです」
「ふふふふふ。沖津くん私もそう思うよ」
あのメガネ2人は放っておこう。俺には荷が重い。
「うひゃぁー! でっかいな!」
「登ってみるかい?」
広人と東条くんはまるで小人と巨人だ。サイズが違いすぎて広人の小ささが目立っている。
「今日もいい天気だね〜」
「......う、うん......そう、だね」
「眠たくなるね〜」
「あ......そう......だね?」
この2人のゆっくりとしたテンポの会話は、普段広人のアップテンポな会話の休憩になりそうだ。
どんな形であれお互いに親睦を深め合っておけば、今回に限らずまた一緒に訓練をしてくれるかもしれないので、こういう機会は大切にしていかなければいけない......と思う。
「......さて! そろそろ親善試合を始めよっか! 私達Cクラスの『FAIRYNIGHTS』とあなた達Jクラスの......そういえばそっちのチーム名ってなんだっけ?」
「チーム名なんて無いぞ......?」
チーム名を決めなければならなかったこと自体初耳なのだが、もちろん皆ででそんなことを話したこともない。
「まぁいっか! やろう!」
俺達はトレーニングルームへ行き、練習試合の設定をして、それぞれバーチャル世界にログインしていった。
「こっちは全員入ったぞ」
『よし、じゃあルールは校内戦ルールね! カウントスタート!』
モニターに10から順にカウントがスタートした。それと同時に水無とのオープンチャンネルの回線も切れた。
3......!
「基本連携を大事にして、遠距離攻撃部隊は早めの援護を頼む!」
「了解! 一樹は全体指揮頼むぞ!」
2......!
「裕樹を核としてプランAでいくよ!」
「やっちゃうぞ〜」
1......!
「「絶対勝つぞ!」」
試合開始......!
「桃咲、春奈はメインストリートを奇襲を警戒しながら直進、奈々美さんと俺がその20m以上後ろを出来るだけ隠れながら付いていく。広人は左のビルの屋上に身を潜めて確実な1発を頼む。クラス長は迂回してきて前衛の援護射撃を。それぞれ状況に応じて臨機応変に!」
「一樹くんに指揮を任せて正解だったわね」
「まだこれからだよ」
「そうだったわね」
メインストリートを進む奈々美さんは今日はまだ冷静なようだ。
「一樹! 前方に敵影、盾役が1人よ。恐らく周辺のビルに何人か隠れてると思う!」
「了解、春奈達はそのまま突っ込んで!」
そうだ、これはデモ機じゃない。今ここは戦場だ。気合を入れなければ......!




