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第12話 仮想訓練

 

 結局俺達はそのまま学校へ帰ってきた。


「降りた人から順に実習ルームへ移動しろよ〜」


 すっかり忘れていたが、今日はこれから訓練があるのだ。

 みんな正直疲れきっているが、基地での事があった後でそんな弱音は言っていられない。

 能力が無ければ自分の身でさえ守ることが出来なくなる。


 今日の訓練では実際の戦闘機兵と全く同じ操縦席に座り、モニターに映る映像の中で行う。

 馬鹿にしている奴もいたが、実際に中に入ってみると、その完成度に驚いてしまう。


「キーロック解除、パスワード入力……完了……戦闘機兵『訓練機』起動!」


『……Start code input confirmation』


 起動すると同時にモニターに電源が入り、明るくなった画面に英語の文が表示され、機械音で読み上げられる。


「……これは凄いな」


 180°フルスクリーンのモニターには市街地の様な風景が映し出されている。

 その画面の綺麗さと滑らかな動きに本当にそこにいるかのように錯覚してしまう。


『それでは訓練を開始します。まずは戦闘機兵の動きに慣れてもらうために、2人1組でお互いに出来ていない箇所を指摘しあってください……』


 2人1組となると基本的にペアでやることになる。

 特に決まっている訳でもないが、暗黙の了解と言うやつだろう。

 それを証拠にモニターの中の映像には俺の操る機体の他にもう1つ、奈々美さんの機体しか映っていない。


『……とりあえず手足を上げ下げする動きと歩くところまでやってみましょう』


 和泉先生の指示で俺達は最初の戦闘機兵訓練を開始した。

 一通りの基礎訓練を終えると次の指示が出る。


『……それでは最後に実際に戦闘へ移りましょう!2対2のペアタッグマッチ、ランダムに選ばれた相手ペアを殲滅してください!』


 早速実践をするとは思わなかったが、3年間で最前線で戦える人材を育成するとなれば、急ぐのも当然なのだろうか。


「俺達の相手は……」


 画面右上に出ていた対戦相手の名前を見る。

 これは偶然なのだろうか。


「……広人とクラス長か」


『知り合いだからって手加減はいらないぞ!よろしくなお二人さん……!』


 広人がオープンチャンネルでこちらに話しかけてきた。

 そして大胆にも広人とクラス長は俺たち2人の前に出て来る。

 もしかしたら元々近くに出現させられていたのだろうか、道幅の広い道路で向き合う形になってしまった。


 もちろんの事ながら俺は手加減などするつもりもないのだが、まだ力の調節が出来ないので、手加減など到底無理だ。


「奈々美さん……いくよ!」


 俺と奈々美さんは広人達の方へ走っていく。

 装備はビームソードのみ。

 どちらにしても接近戦以外の戦闘方法はまだ練習していないので他に武器があっても、ビームソードを選ぶだろう。


 俺は広人の機体の方へソードを振るうが、広人もソードを出し、受け止める。

 ここまでは予定通りだ。

 この後は後ろから奈々美さんが……!


『僕を忘れないでくれ……よ!』


 後ろから切ろうとしていた奈々美さんに、横からクラス長が体当たりをした。


「……っくそ!」


 俺はビームソードを振り払い後ろへ跳ぶ。


「奈々美さん大丈夫?」


『えぇ……ダメージは大きくないわ』


 俺の右前方のビルから奈々美さんが這い出てきた。


 さて……ここからどうしたものか。


『一樹くん、先にクラス長の方をヤルわよ』


 そう言って奈々美さんは道路を出てビルの影に隠れるように右の方へ走っていった。

 特にこの先の事は決めていなかったので、俺はとにかく奈々美さんに動きを合わせる為に、左へと走り出した。


 広人もクラス長も未だに道路に固まって動かない。


 様子を伺っていた俺は隙を見てビルの合間から飛び出し、広人へと再び切りつける。

 同じく広人がそれを受け止めた。

 少し前と違うのは奈々美さんの援護がないという事で、1人で突撃した形となり、横からクラス長がソードを構えている。


 しまった……!


 機体の横腹にビームソードが刺さり、逆側まで貫通する。

 俺の操っていた戦闘機兵は動きが止まり、モニターが暗くなった。


『足止めありがとう……!』


 ビルの屋上から跳んで降りてきた、奈々美さんのソードが広人の機体の頭から垂直に奥まで入る。

 奈々美さんはソードのスイッチを一度切り、再展開させると俺の横にいるクラス長を真っ二つにした。


『はい! そこまで! 茅山くんと遠山さんの勝ちだけど……その戦い方だと茅山くん死んでるわよ?』


……和泉先生のとても正しい指摘が痛い。


「お疲れさん……凄かったね〜」


 操縦席から外に出ると、手を振っている春奈とその後ろに隠れている桃咲がいた。


 やっぱり桃咲はなかなか心を開いてくれないな。


「……特に遠山さん! さっきの動き、見とれちゃったよ!」


 春奈は少し興奮気味に奈々美さんの手を握っている。


「……え……えぇ……ありがとう?」


「……あ! ごめんなさい……私は桜井 春奈。よろしくね!」


 少し困ったような表情を浮かべた奈々美さんを見て、春奈は簡単な自己紹介をして、にこりと微笑んだ。


「くっそ〜! 一樹が囮だったとは思わなかったぞ……!」


 猿のようにキーキーと騒ぎながら広人が俺達の元へやって来た。


「……あはは、俺も自分が囮になるとは思わなかったよ」


 初めての戦闘機兵の操縦にしてはとても上手くいったと思う。

 相手も初心者だったということが割と大きいのかもしれないが、それでも自分が思ったようには動けていた。

 その動きが正しかったかはまた別の話だ。


 そうして俺達はそれから1ヶ月もの間みっちりと授業と訓練の日々を過ごしていた。

 クラスの中では、奈々美さん、広人、クラス長、春奈、桃咲、それに俺を加えた6人でいることが増えていき、気付けば今は放課は6人でいることが普通になっている。


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