異形と人形
◯ 登場人物
・主人公
女性体の人形。伯爵家の娘に似せて作られた。伯爵が愛する我儘娘の為に作った。双子の姉妹とされている。
・婚約者
人よりも大きく、二本足で歩く黒いライオンの様な見た目で、額から角の生えた異形。人ではない種族。
初めて彼女を一目見た時、なんて綺麗な人だろうと思った。
二度目にあった時、こんな綺麗な人を、家の力を使って縛り付けてしまった事に、途方も無い後悔を感じた。
ただの人である彼女が、異形である僕を受け入れられる筈はないのに。
初めて彼を見た時、私は何も感じなかった。
二度目にあった時、ただのモノである私と婚約者となった彼に少し興味を持った。
しばらく共に過ごすと、彼の手が普通の人より暖かい事に気付いた。
私の手は熱を持たない。
自分が人ではないということを、忘れかけていた自分に愕然とした。
彼のそばにいると、私は人形でなくなる。
初めて感じるこれは…。
モノでも恋をするのか、と客観的に考えなければ落ち着いていられなかった。
彼が求めていたのは私では無かった。
ない筈の心の臓が、きゅっとしぼられるような感覚。
無邪気に笑い、泣き、怒る、人間の彼女。
私は、人形は、涙は出ない、怒りという程強い感情を持つことができない。笑えない。
私は、人間じゃない。
彼女が眠ったままになって、何日たったのか、何週間たったのか、もう何年もたっているのか?
彼女がいないだけで、この世界の色が褪せて見える。
彼女の声の中に柔らかく混ぜられた感情を感じたり、いつも変わらない表情の中から、ふとした仕草から、感情を読み取るのも楽しかった。
共に居られることが、何よりも嬉しかった。
けれど彼女は眠りについてしまった。
僕を置いて。
だが生憎、僕は異形の者だ。
寿命は人の何倍もあるし、いつまでだって君を待つことができる。
待っている。
僕を見て、名前を呼んで、その柔らかな感情を向けてくれる君を。
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ぼんやりと思いついたものです。
もう少し膨らませると思います。
これだと依存みたいですね。