第六話 初めてのお抹茶
次の日の朝、あたしは早起きして早速茶道のお稽古をすることになった。緊張するなあ……。
おばあちゃんが茶道の先生として教える時に使うらしい和室に連れて行かれた。
「本当は和室に入る時や畳の歩き方なんかにも作法があるのよ。でもそれは後で教えるわ。まずは、菜乃葉にお茶を飲んでもらいたいの。菜乃葉は、お茶って好き?」
「えっと……お茶って言ってもいろんな種類があるけど……」
「そうね。緑茶でも麦茶でも紅茶でもウーロン茶でもいいわ。一般的にお茶と呼ばれるものなら何でもいいわ」
「麦茶は夏場によく飲むよ。紅茶も好き。緑茶はちょっと苦手かなぁ……、苦くて」
「そう。わかったわ。じゃあ、少し辛いかもしれないけどそこに正座して。私がお茶を点てるから、その間に菜乃葉はこれを食べててね」
あたしが座ると、おばあちゃんはあたしに和菓子を差し出した。お饅頭かな。中にあんこが入っていてすごく美味しい。それに、おばあちゃんはすごく綺麗な手つきで、見てるとすごく心が落ち着く……。お茶を点てている様子なんて生で初めて見たけれど、あたしでもすごく綺麗だという事が分かった。しばらくすると、どうぞ、と言っておばあちゃんがお茶を差し出してきた。濃い緑色に、泡が立っていてとても綺麗だった。
「ありがとう。でもあたし、飲み方の作法とか全然わかんないんだけど……」
「とりあえずは、普通に飲んでもらって構わないわ。その代り、あとでみっちり教えるけどね」
「わかった、いただきます」
そう言ってお茶をごくりと飲んだ。次の瞬間、ゲホゲホと噎せてしまった。
「うっ……。何これ、超苦い! お菓子はあんなに甘かったのに~!」
あたしが噎せていると、おばあちゃんは笑った。
「わ、笑わないでよ!」
「うふふ、最初は誰でもそうなるの。特に子供ならね。苦いでしょう? でもすぐ慣れるわ。さ、お稽古を始めましょう。まずは基本中の基本からよ」
そう言っておばあちゃんは茶道の基本を教えてくれた。和室への入り方、畳の歩き方などだ。
「畳の歩き方や和室での作法なんかはお稽古以外での場面でも役立つわ」
和室には座った姿勢で入る、畳は一畳六歩で歩く、縁は踏まないとか、確かに普段の生活でも役に立ちそうな事ばかりだ。
「あら、もうお昼近くじゃない。お昼を食べたら割り稽古から始めるからね」
そう言われて和室を出た。