Confession
モモ!その瞬間大会の予定など頭から吹き飛び、すぐさま会場裏へと向かった。
「瀬佐!モモは無事だろうな!」
「ああ、もちろん無事さ。この子はモモちゃんっていうんだね。可愛い名前だね」
と言い、隣の縛られて身動きができないモモを髪を触る。
「やめろ!お前の目的は俺だろ!早く離せ!」
「離せと言われて離す馬鹿がどこにいるんだい?前にもこんなこと言ったなあ。まあいいや君のチカラで取り返してみろよ!」
「言われなくても、そのつもりだ!」
踏み出し、その頭に竹刀を叩き込んでやろうと振りかぶった・・・が、瀬佐がこちらに獲物を向けてきた。その手にあったのはカッターナイフではなく真剣、日本刀だ。その日本刀がもう目の前に迫っている。
「あっぶねぇ!」
必死の反射神経で避ける。
「ゆうちゃん!」
モモの悲鳴のような声で気がつく。触ってみるとわかる。俺の頬がべっとりとした真っ赤な血で濡れていることを。痛みや相手からの殺意に足がすくんでしまう。
「うちのお爺様の屋敷にあった物を持ってきたんだどう?」
「・・・・・・」
「あーあ。ビビっちゃったかあ。やっぱり子どもだなあ。どうしようかな、あっそうだ!」
と言い、すでに涙目になっているモモの近くに寄り、日本刀を首に押し付けながら言った。
「ゆうちゃん?君がビビっちゃったせいでモモちゃんが死んじゃうよ?」
「くそっ!モモ!モモ!」
叫びながらも足が動かない。
「ああ、残念!こんな脅してもなにもできないなんてね。じゃあ最後にお別れの言挨拶でもどうぞ」
モモは眼が潤んでるにもかかわらず、決して泣かず友貴を見て言った。
「・・・・・・ゆうちゃん。大好き、小さい頃からずっと大好き!ゆうちゃんの彼女になれなかったのは悔しいけど。私の分まで頑張って」
「モモ・・・・・・」
「はっ!反吐がでる。でも別れの挨拶もできたことだし、さようなら!」
首元に刀が振り下ろされる。
このまま見ているままでいいのか。またなにもできなくていいのか。そんな訳ないだろ。走れ!走れ!モモを助けるんだ!
「ウォォォ!」
知らずに声が出ていた。そしてモモを押しのけ、瀬佐の刀を自分が代わりに受けた。
ザシュッ!
とても嫌な音がした。自分の肉が断たれた音。胸をやられたようだ。だがそれすらも意識せず、竹刀を振りかぶり、瀬佐の頭を狙って。瀬佐は流石の反射神経で刀をあて、俺の竹刀を切断しようとした。その時俺の能力が目を覚ました。導かれるように竹刀から左手を離し、新たに造りだした右の竹刀と同じ構造の竹刀を持ち、瀬佐の喉を狙った。右手の竹刀はきれいに切断されたが、見事に刀をすり抜けた左手の竹刀が瀬佐の喉元に直撃した。
「ゴホッ!ゴホッ!て・・・めぇ」
瀬佐が刀を振りかぶった時、頭上から銃弾が降り、瀬佐の両肩を打ち抜いた。空から創が降ってきたのだ。瀬佐は断末魔のような声を上げ、その場に倒れた。
「大変申し訳ない。能力の発動を感知した時の場所があまりにも遠かったもので。でもありがとうございますおかげで、瀬佐を始末できそうです」
と言いながら瀬佐の両膝を打ち抜く。再度声を上げる瀬佐。
「お疲れ様でした。ここの処理は私に」
「・・・わかった。あといいか?」
「はい?」
「敬語やめてくんねーかな。歳近そうだし」
すると少し嬉しそうな表情をし、
「りょーかい。じゃあな、ひとまずこの場から離れな」
「わかった。モモいこう」
「うん」
二人が離れたのを確認してから瀬佐に尋ねた。
「どこのだ?」
「???」
質問の意味がわかっていないようだ。銃口を瀬佐の額にあてて言った。
「ならいい。じゃあな瀬佐」
銃声が聞こえた。声は・・・聞こえなかった。
そんなことも知らず、友貴と桃は無言で歩いていた。
なにか話さないと・・・
と思い、口を開いた。
「「あのさ」」
声が重なる。
「じゃレディーファーストで」
「ありがと。あのね・・・さっき言ったことは・・・その・・・」
「いいよ」
「えっ?」
「俺もお前が好きだから!」
「えっ?」
「何度も言わせんなよ。俺もお前・・・モモのことが好きだって言ってんだよ」
その言葉を聞いた途端、モモがその場でついに耐えられなかったかのように泣き出してしまった。
「さっきほんと怖かったんだよ。でもよかった。夢みたい」
「ごめんな」
そっと頭を撫でる。何分いや何十分そうしてたかわからない。しかしモモが泣き止むまでずっと・・・ずっと頭を撫で続けた。
これで1章終わりです。
こんな感じで短くやっていこうと思います。
次章は『紅焔』です。
よろしくおねがいしますm(*_ _)m