表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

 妃選びの儀式の日、主役のぼくはそこにはいなかった。マサミたちに内緒で、ぼくはこの世界のもっと大切な人のところへ会いに行っていたのだ。

 マサミは世界一の美女ということになっている。しかし、その定義を月の民は受け付けなかった。マサミが世界一の美女に選ばれたのは、外面的な美しさだけではなく、運動面、健康面も考慮してのことだった。だから、後世に残すのに、最もふさわしい人類はマサミであったかもしれないが、本当に世界一美しかったのは、別の少女だった。

 それを月の民は知っていた。

 だから、月の民は、本当に世界一美しかった少女を眠らせて、妃選びの儀式の日まで、保存していたのだった。


 妃選びの儀式の日。マサミたちは、いじめられっこの末っ子を残して、お洒落していた。ドレスを着て、飾りをつけ、髪を整えていた。いじめられっこの末っ子だけは、今日はお留守番。妃選びの儀式にも出してもらえない。

 可哀相な末っ子のマサミ。

 でも、末っ子がいじめられていたのは、妃選びの儀式に出席できなかったのは、本当は別の理由。末っ子がいちばん栄養の摂取均衡が優れていて、いちばん美しかったから。

 この家のマサミの末っ子は、妃に選ばれるかもしれないほどの凄い美少女だったから。

 だから、末っ子のマサミは、家に残された。妃選びの儀式に出席できずに。

 泣く泣く末っ子のマサミの前に、魔法使いが現れた。

「可哀相な可哀相な女の子。みんなにいじめられて、見捨てられて。代わりに、男の子のいる宮殿に連れて行ってあげるから」

 泣いていた末っ子のマサミは驚いた。いったい、どこから現れたのでしょう。魔法使いなんて者がこの世に存在するわけはないのですが。

 なぜなら、今は<大淘汰>の後なのですから。マサミ以外の人類は絶滅したはず。

「ついて来て。わたしたちが目指すのは、宮殿の裏の森です」

「でも、わたし、こんなに醜い服を着ていて。そこら中、破れているし、大きさも合ってないし、汚れているし」

「大丈夫。あなたのどのお姉さんよりも美しく着飾らせてあげるね」

 魔法使いが魔法を使うと、末っ子の服はするりと脱げてしまった。全裸になった末っ子。

 すると、見る見る繊維が肌を伝ってきて、末っ子を世界で一番綺麗な衣装に着飾らせてしまった。

 透けるように美しい純白のドレス。いや、実際に、胴部の中心部は透けている。おっぱいの形がわかり、乳首の色が見えた。陰毛の色がわかり、腰のくびれが透けてわかる。髪は、袖を三つ編みに編み、薄紫の髪がたなびいた。薄灰紫の瞳の美少女だ。

 文字通り、魔法で、末っ子は世界一の美少女に変身したのだ。

「あなたに名前をあげる」

「名前? でも、私の名前はマサミ」

「ううん。これからはシンデレラと名のりなさい」

 こうして、幸運の末っ子、シンデレラは、男の子のいる宮殿の裏の森へ、かぼちゃの馬車に乗せられて、走っていったのだった。

「魔法使いのお姉さん、お姉さんの名前は? あなたは、黒い髪で、とても長い髪で、私より美しそう」

「私は月の民、カグヤよ」

「カグヤ」

「うん」

「どうして、マサミ以外の女の人が生きているの?」

「それは、美しさのため。男の子のため。眠れる少女のため」

「いったい、それはどういうことですか」

 漆黒の闇のような黒いドレスを着た長髪の女は、いった。

「私たちはこれから、眠れる森の美女に会いに行くの。目覚めの時が来たの」

 眠れる森!

 シンデレラは驚いた。

「マサミ以外の女の人が生きのびているの?」

「そう。本当に世界一美しかった女の子が生き残っているのよ。でも、彼女はあまりにも病弱すぎる。だから、月の民の私たちが守っていたの」

「月の民って何?」

「月から来た女の名です。みんな、名をカグヤといいます。美しさでは、あなたたちに負けるけど、能力では、とても、あなたたちでは適わないのよ」

「ええ。あなたは、私より、強くて賢そうです」

「ずっと秘密にしていたの。眠れる森の美女と、その世話役である月の民のことを」

「今日、妃が決まるのではないのですか?」

「そう。今日、これから、決まるの。クローンタイプ0とクローンタイプ1のどちらが妃に選ばれるかが。それは、男の子の判断に任せられます」

「クローンタイプ1とは、私たちマサミのことですね。では、クローンタイプ0とは」

「クローンタイプ0とは、眠れる森の美女のことです。ちなみに、月の民の私たちは、クローンタイプ2」


 ぼくは鏡でその光景を見ていた。

「ぼくが妃に選ぶのは、ぼくが気に入った子でいいんだよね」

「そうです、ヒロトさま」

「そうすると、偶然、運良くぼくのそばにいた子になる可能性が高いね」

「そうです、ヒロトさま」

「それはつまり、きみじゃないか」

「そうでしょうか、ヒロトさま。私はただの世話係のマサミにすぎません。月の民があなたをどこに導くのか、まったくわからないことです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ