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 赤ん坊の頃の記憶がある。ぼくは赤い胎内で羊水の中に浮かんでいた。それが、偉大なる聖母の子宮の中だったことをぼくはまだ知らない。後で見た母の顔はそれはすごく美しかった。

「ヒロト」

 というくり返し聞く名前が自分の名前であることをぼくはだんだんと理解していった。ぼくは、羊水の中で早くも言語を学習していた。それは、ぼくが遺伝的につくられた高度な知性をもつためであった。ぼくの遺伝子の中には、日本語の文法を司る遺伝子が存在するのだと、ぼくの胎教に来る教師たちによって、教えられていた。ぼくは、自分の名前がヒロトなのだと知った。そして、やはり、何度もくり返し聞くマサミという名前が、その教師たち全員に共通した名前なのだと理解した。

 ぼくの生まれた世界では、女の名前はみんな、マサミというのだ。

 ぼくは、胎教の間に、日本語と主な歴史、人物伝、算数、生物学、化学、物理学、経済学を覚えた。胎教の間に、講義は、大学院水準にまで達した。ぼくは、胎児の間にそれらをすべて覚えられる超天才児であったし、また、そのように遺伝的、教育的につくられていた。

 あの驚くべき呼吸の衝撃のあった出産を経験して以後、ぼくは、母の名前もマサミというのだということを知り、めまいを覚えた。偉大なる母と、その他の女たちの名前が同じであるというのは、ちょっと簡単には容認できないできごとだった。ぼくは、ぼくに血と肉を分けてくれた母を敬愛していたし、胎教時代に母の語ることばはみな的確であるとぼくには思えていた。

 それは、母が、ぼくを産むために選ばれた最も優れたマサミであるためであったかもしれないが、ぼくには、母は他のマサミの中で、最も美しい人であると思っていた。

 そう、あの、三人の美少女との出会いがあるまでは。


 出産されたぼくは、すぐに目が見えるようになった。そして、ぼくは見た。みんな、同じ顔をした美女たちの群れを。

 ぼくが生まれる前、人類に<大淘汰>というできごとがあった。それは、全人類を世界一の美女だけにしてしまおうという狂信的計画のことであった。良いことなのか、悪いことなのかはわからず、それは実行された。世界を支配していた男たちにとって、世界一の美女を残して全人類を絶滅させることほど心地よい遊びはなかった。大勢の民衆がなぶり殺されたのだという。それはあまりにも凄惨なできごとだったという。粛清権をもつ者が世界一になれなかった美女たちを裸にして、犯し、邪魔をするものたちを虐殺した。非常に極悪なできごとだったと歴史書には記されている。

 人妻が、未婚の女が、少女が、犯されて殺された。男は皆殺しだった。

 世界一の美女以外、世界を構成するのに邪魔であるというのがその理由だった。人類は増えすぎたし、強くなりすぎていた。どうせ人類を減らすなら、最小限に減らした方が良い。なら、世界一の美女以外、皆殺しだというのである。

 <大淘汰>によって、粛清権をもっていた男たちも、ちゃんと最後には死んでしまった。射精しすぎると、種がなくなるらしい。種切れになった男は、男根が立たなくなり、女をもう犯せないのだと思うと、おとなしく死んでいった。

 ただ一人、世界一の美女だけは残された。そして、大量にクローン人間をつくりだし、人類の文明を維持した。

 だから、ぼくが生まれた時、ぼく以外の男は、他には存在しなかったはずなのである。

 ぼくは、世界一の美女たちに囲まれたただ一人の男の子だった。

 ぼくが勃起するまで、全女がおとなしくしていた。

 ぼくは、学術と芸術のスパルタ教育を受けながら、世界にたった一人の男として育てられた。

 つまり、ぼくは、女だけになってしまった世界で、女が存在することを熱望してつくりあげた世界一優秀な美男子だった。

 そうだ。<大淘汰>によって生まれてきた女たちは、法律を改竄してでも、男がほしかったのである。

 世界全部の女をぼくが犯してよいのだという。むしろ、無理矢理にでも犯させるという雰囲気が女たちの間にはあった。彼女たちはみな、同じ顔をした目がくらむほどの美女ばかりなのだ。


 そして、ぼくの初めての相手を選ぶ妃選びの儀式が始まった。ぼくが精通し、勃起するようになったからである。マサミたちは、普段は服を着ているのが常だけれど、ぼくにだけ見えるように、ちらっとおっぱいや性器を露出させることがよくあったから、ぼくの煩悩はもんもんとして、誰が妃になっても良い、女ならば誰でも犯せるであろうと、そういう思いでいっぱいであった。


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