婚約破棄をしなかった馬鹿王子の没落人生
うん。お父さんは王子だったのだ。お母さんは侯爵令嬢で聖女だ。
「はあ?」
突然、父が告白を始めた。
「お母さん亡くなってから、更におかしくなった?」
「ヒデえな。リリー、まあ、話を聞け。減る物でもないだろう」
「増えもしないわよ!」
「ゴホン!」
・・・この王国の貴族の婚約者は自分で社交界探すのがならいだが。
父の祖国は違う。
幼い頃からガッチリ決まっている。
だけどな。相性というものがある。
相性が悪いときは。
家同士で婚約解消の話会いをする。どうしても親が譲らなければ婚約破棄を若者でやるのだよ。
「でな。お父さんは婚約破棄をしなかったのだ」
「だから何?洗濯しなければいけないのよ」
いや、聞け。母さんは侯爵令嬢で聖女だった。
聖女は王族と婚姻するのがならいだ。
年齢が近いというだけで婚約だ。
そしてな。初めて会った時は笑顔が可愛い子だと思ったよ。
「へえ、やっぱりのろけ?・・・」
「違う。喧嘩ばかりしていたのだよ」
「はあ?」
☆☆☆
「ゼムの馬鹿!」
「馬鹿と言う方が馬鹿」
「なら、馬鹿と言う方が馬鹿と言う方が馬鹿!」
使用人達は苦笑いしながら見ていたよ。
学園生になっても変わらなかったな。
「ゼムリップ殿下、気が進まないですが、貴方は王子なのですから、殿下と呼び尊敬しなければなりませんわ」
「王族として騎士道を学んだ。マリアローズは女性だからまるで宝石を扱うように接し敬意を払わなければならない」
「お互いに気が進まないなら気が合うな。気が進まないキスでもする?」
「馬鹿ですね」
「はい、馬鹿です」
ああ、楽しかったよ。ここまで言っても大丈夫だ。
というのがお互いに分かっている。ギリギリの線で止めていたよ。
楽しかったな。
だけどな。学園生の2年の時に・・・
聖女様が現れた。異世界からだ。
ああ、黒髪で黒目、エキゾチックで可愛らしい方だった。
ジュンコ様と言ったかな。
しかも、力が強い。マリアが一日10人の重傷者、軽度に限れば30人か?
なのに対して軽く重傷者100人治すと判明した。
「すごい・・・これは最高の聖女だ!」
と神官達は大喜びだった。
だから、父上から命じられたよ。
「ゼムよ・・・マリアローズ嬢と婚約を破棄し。ジュンコ殿と婚約せよ。向こうも乗り気だ」
「はあ?なんで!破棄?どこかの男子の養子を王家で迎えてジュンコ殿と結婚させればいいじゃないか?」
「するとジュンコに義理の養親ができる。王家だけで囲い込みたい」
「マリアはどう思っている?」
「マリアローズ嬢の同意はまだだ。ためらっている。多額の賠償金を払うと説得中だ」
「そうか・・」
「だが、マリアローズ嬢はジュンコ殿を虐めているぞ。これは婚約破棄の好機だ」
マリアローズはまるで嫉妬しているかのようにジュンコ殿を虐め始めた。
「皆様、ジュンコ様は聖女ではありません!排除するべきですわ!」
「うわ。女の嫉妬は醜いな」
「ジュンコ様が聖女でいいじゃない?」
誰も聞かない。侯爵令嬢なのにいつも一人だ。
「マリア」
「で、殿下・・・話を聞いて下さい」
「ああ、聞くぞ!」
「ジュンコの力は女神様の力ではございません!・・・」
話を聞いた。異世界の神の力だと言うのだ。聖女なので後ろにいる神が薄らと見えたそうだ。黒のモヤがかかっている・・・邪神の色だ。
しかし、いくら聖女でも学園生の話を賢者達は聞かない。
何度も婚約破棄をする機会があったが行わずに。
卒業を待たずに俺とマリアローズは王国を去った。
マリア暗殺の噂があったからな。
その時から馬鹿王子と呼ばれたよ。ジュンコと結婚すれば栄光の座につけるのにとな。
その後の王国の様子は・・・噂で聞く通りだ。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・私は普通の村娘リリー、今日初めて父さんと亡き母さんのなれそめを聞いた。
「・・・何か壮大な話ね。母さんがいないから確かめる術がないわ。私には関係のない話ね」
「そうでもないぞ。今、魔女ジュンコ討伐が始まっているだろう」
魔女ジュンコ、莫大な力があるが、それは女神様由来の力ではなかった。
憑神?犬神、いろいろな言われ方をされているが、邪神に払う対価が必要だ。
人を治せば対価としてジュンコの家族の生命力が削れる。家族がいなかったら近くの者。
ジュンコは夫を18人変えたとか。
まるで麻薬のように王国をむしばみ。
ジュンコの力がなければ王国執行部は生きることもできなくなった。
「ええ、連合軍が組まれているわね・・・私には関係ないわ」
「だから、アレだよ。ソドム王国の残党を集めて旧王国の一部に国を作る計画があるのだ」
「へえ、そうなの?」
「その国の初代国王は私だ。そして、リリーは王女様になるのだ」
「馬鹿ね。父親だから一応、話を聞かなければいけないわ。時間の無駄だわ。そんなことは良いから洗濯物出しなさい」
「はい・・・」
☆☆☆数ヶ月後
「ヒィ、なんで?お父さんの話、本当だったの?」
「ああ、本当だぜ」
・・・嘘だと思っていた。
私は、旧ソドム王国の王都中心の100余の村の国の王女になった。
旧王城はそのままだ。城だけは立派な小国。
「お父さん。なんで受けたの?こんな小国はすぐにつぶれるわ・・・お父さん?それは・・・」
「ローズマリーの遺骨だ。生まれ故郷に埋めたくて、俺は国王の話を受けた」
「それだけ?埋葬するために・・」
「ああ、それだけだ。お前にとっては母さんでも俺の女だ」
「お前の代になったら好きにしろ。列国に国を売るもよし。この国を持参金にして王子と結婚するのも良い・・・」
「お父さん。お母さんを本当に愛していたのね・・」
「当たり前だ」
・・・物語の馬鹿王子は婚約破棄をして没落をするのが役割だ。
しかし、婚約破棄をしなくてもかつての栄光にはほど遠いのね。
年代記によると、この小国は二代目の女王まで存続したと云う。
合併の条件は、女王の埋葬場所だ。彼女は父母と同じ場所で眠ることを願ったと遺言にある。
最後までお読み頂き有難うございました。




