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花嫁の誓い ~2000円で買った絵の花嫁は、誓いを破った俺の腹をゆっくりと抉り出す~

作者: 影野 紡
掲載日:2026/04/10

俺は借金取りから逃げ、あてもなく街を彷徨っていた。

小道の片隅で、何かに取り憑かれたかのように絵を描く老人がいる。

キャンバスには、真っ赤な色打ち掛けに角隠しをつけた花嫁が描かれていた。


その絵に、俺は釘付けになった。

真っ赤な唇、透き通るような肌──まるで生きているかのようだ。

目はじっと俺を見据え、何かを言いたげだった。


「爺さん、その絵、売り物かい?」

「2000円」

手のひらを差し出す老人。


――2000円か。今の俺にはこれしかない。

何かに引き寄せられるように、俺はその絵を買った。


キャンバスを抱えて宿へ戻り、部屋の壁に立てかけた。

しかし、俺の居場所を探し当てた借金取りがやってきた。


「このやろう!金返しやがれ!」


殴られるまま耐えていると、どこからともなく、絵の花嫁が立っていた。

そして、借金取りに金を渡している。


「なんだ、あるじゃねえか。

また入り用になったらお願いしますよ。」


その瞬間、キャンバスには花嫁はいなかった。


「あんた……本当にあの絵の……」

「ええ、あなた困っているのね。私が願いを叶えてあげるわ。」


「その代わり、私以外の女には手を出さないで」

「本当に俺の願いを叶えてくれるんだな。わかった、他の女には手を出さない。」


そう誓ったものの、花嫁は夜になるとキャンバスに戻ってしまう。

俺も男だ。生身の女が欲しくなり、つい他の女に手を出してしまった。


翌朝、女はもういなかった。

キャンバスを見つめると、花嫁の角隠しは外れ、角がむき出しになっていた。

口は裂け、目は三角に吊り上がり、白い手には血が滴っていた。


部屋を見渡すと、昨夜の女は無残な姿で床に横たわっていた。

恐怖で体が動かない。

次の瞬間、腹部に鋭い痛みが走った。

長く伸びた爪が皮膚を突き破り、内臓を抉る。

呻き声は出ない。ただ、視界の端に、血に染まった笑みが揺れていた。


そして気づく。

花嫁は微笑みながら俺をじっと見ていた。

ーー楽しんでいるかのように


「グワっ!」


見ると、床に倒れていた女が、俺の喉に噛み付いていた。

花嫁が言う──いや、鬼が囁いた。

「誓いを破った男は、女の餌になるのよ。

死ぬまで、苦しむがいい」


腹を抉っていた手が、ゆっくりと引き抜かれる。

だが、俺はまだ死ねない。


次の瞬間、女が俺の腕に噛み付いた。


「……た……す……け……」


破った誓いの代償は、まだ終わっていない──。














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