四話 ミランダの場合④
誰もが見惚れてしまうような、そんな美しい微笑みを浮かべたローズマリー様。
その笑みに思わずうっとりとしてしまいながらも、この状況に違和感を覚えていた。
私は恐る恐る、小さな声でローズマリー様に尋ねる。
「あの……他の参加者の皆様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
すると、ローズマリー様は一瞬目を見開いてから、すぐに楽しそうにふふ、と笑い声を漏らした。
「他の参加者も何も……招待状は貴女にしか送っていなくてよ?」
「えっ……!?」
「あら、わたくしと二人きりのお茶会はご不満かしら」
「い、いえ! ただ、驚いてしまって……! 私なんかがローズマリー様と二人だけでお話しできるなんて、夢にも思っていなかったので……」
私が焦りながらそう告げると、ローズマリー様は眉間に皺を寄せながら口を開く。
「あら、その『私なんか』という卑下はよろしくないわ。私は他でもない貴女と話がしたくて招待したのよ」
「ひ、ひぇ……」
「自信を持ちなさい。貴女は清く正しい、素晴らしい淑女よ」
ローズマリーの力強い言葉。
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
本当に、なんて素敵な方なのかしら。
ローズマリー様はゆっくりと椅子から立ち上がって、それから美しいカーテシーを披露してくださった。
「改めまして……わたくしはエインズワース公爵家のローズマリーですわ。本日はわたくしの部屋まで足を運んでいただき、ありがとうございます」
「わ、私はオルコット伯爵家のミランダと申します! このような素晴らしいお茶会にご招待いただき、心より感謝申し上げます!」
____どうしましょう、優雅さが違いすぎるわ!
美しく余裕たっぷりなローズマリー様に比べて、私の慌てっぷりといったら……。
恥ずかしくて、顔から火がでそう……。
そんな私の心境を知ってか知らずか、ローズマリー様はくすりと笑ってから、「さぁ、座ってちょうだい」と着席を促してくださった。
____この部屋には、侍女は連れてきていない。
というより、招待状に書いてあったのだ。
『侍女の同伴はご遠慮ください』と。
普通なら警戒するところなんだろうけれど……私はローズマリー様に憧れていたから、侍女も連れずに一人でここまで来た。
そして、ローズマリー様も侍女を部屋に入れることをしない。
つまり、この空間は私とローズマリー様だけ、正真正銘の二人きりなのだ。
私はゆっくりと高そうな椅子に腰掛けてから、姿勢を正した。
ローズマリー様がゆっくりと語りかける。
「……それで、ミランダ。貴女は私に話したいことがあるんじゃないかしら?」
「…………どうして、わかるのですか?」
「あら、私も二週間前の卒業パーティーに参加していたのよ? だから、貴女を招待したの」
……つまり、私の目的は最初からローズマリー様に筒抜けだったというわけだ。
私は驚きながらも、ぎゅっと拳を膝の上で握りしめてから……口を開いた。
「……お話しさせてください。私と、ヴィクター様のこれまでのことを」
____その瞬間、ローズマリー様の纏う雰囲気が、バラの棘のように鋭くなったような気がした。




