三話 ミランダの場合③
「やっぱり、何度みても素敵なお屋敷だわ……!」
____招待状が届いてから一週間後。
私は、エインズワース公爵家の前で呆然と立ち尽くしていた。
ローズマリー様に招待をいただいてから、オルコット伯爵家みんなでドレスやアクセサリーなんかの準備をしてきたけれど……。
私のアクセサリーの輝きなんてまるで玩具に思えるくらい、エインズワース公爵家は輝いている。
まず、門の大きさから全然違うわ。
それに、学園よりも豪華で素敵な噴水がお庭に建てられていて……。
やっぱり、我が家とはスケールが違いすぎる。
……けれど、気になるのはお庭にローズマリー様のお姿が見えないこと。
そして、とてもお茶会が始まるとは思えない静けさ。
私が不安を感じ始めた瞬間、エインズワース家の侍女と思われる方が私の前まで早足で近付いてきた。
「オルコット伯爵家のミランダ様でございますね。ようこそいらっしゃいました。それでは、ローズマリー様のもとへご案内いたします」
「は、はい! よろしくお願いいたします」
緊張しすぎてカチコチになりながら、なんとか返事をする。
そんな私に女性は優しく笑いながら、お屋敷の中へ案内してくれた。
____お茶会なのに、お庭じゃないの!?
なんて考えがようやく浮かんだのは、広いロビーに足を踏み入れてからのことで……。
私はもう、エインズワース公爵家に圧倒され続けていた。
お庭に来たことはあっても、お屋敷の中へ入ったのは初めてのことだからである。
私は女性に案内されるまま、長い階段を上がって、廊下を歩いて……。
お洒落な扉の前で立ち止まったかと思うと、「お嬢様はこちらにいらっしゃいます」と告げられる。
そして、侍女と思しき女性は去ってしまった。
____もしかして、私がこの扉を開けるの……!?
動揺と緊張が隠せなくて、変な汗が出てきた。
手が震えて、手足の先端が冷たくなるのがわかる。
それでも私は深く息を吐いてから、ドアを三回ノックした。
「入っていいわよ」
透き通った、芯のある声が部屋の中から響いて聞こえた。
私はドキドキうるさい心臓を手で抑えながら、「失礼いたします」と言って扉を開けた。
その瞬間、ローズマリーの花の香りがぶわっと全身を包み込む。
シャンデリアがきらきらと輝いて、眩しいくらいだった。
部屋の真ん中にあるのは、クラシカルなティースタンドを乗せた大きなテーブル。
そのテーブルの前には……それはそれは美しい、ローズマリーによく似た色のドレスを着たご令嬢___ローズマリー・ネヴァ・エインズワース公爵令嬢が座っていた。
そして……ローズマリー様は優雅な動作で目を細めながら、私へ囁くようにこう告げたのである。
「ようこそ、わたくしの秘密のお茶会へ」




