アラサー処女恋愛す
三十一歳の山田香織は、コロナ禍で出会いの機会がほとんど失われ、職場もリモート寄りで私生活は孤立しがちだった。社交的な同僚・美咲の頼みで嫌々出席した結婚式二次会の喧騒から逃れて廊下に出ると、同じく居場所を失った佐藤健人と偶然出会う。初対面ながら互いの疲れを素直に分かち合い、連絡先を交換。以降、LINEでのささやかなやり取りを重ね、本や日常の話題を通じて親近感が芽生え、香織は思い切ってカフェで会う約束を取り付ける。コロナで恋愛から遠ざかってしまった自分――処女で恋愛経験がほとんどないという思いを抱えつつ、彼女の胸には不安と小さな期待が入り混じる。ほんのささやかな出会いが、長く静かだった日常に波紋を広げ始める――