第7話:黒の咆哮(鬼装ver)
第7話:黒の咆哮(鬼装ver)
村の空が陰る。
太陽の光すら届かぬほど、黒い霧が灯りの背後に広がっていた。
静かだった山村に、突如として怒りの気配が満ちていく。
灯りの足元から立ち昇るのは、黒く濃密な霧。
それは、ただの霧ではない。
――かつて“人に愛された鬼たち”の魂が、眠りから目覚めた姿だった。
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墓碑に眠る魂
戦いの前日、灯りはひとり、山奥にある鬼たちの墓碑を訪れていた。
父・宵の墓碑を前に、彼女は手を合わせ、静かに語りかける。
> 「ごめんね……私、あなたのこと、ほとんど覚えていないの」
「でもね――私は、もう迷わないよ」
その瞬間、墓碑の下から霧が滲み出す。
やがて黒い霧の中から“影”が現れた。
それは言葉を持たぬが、確かに灯りの心と共鳴していた。
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鬼装 ―魂の鎧―
村人たちが後退し、恐怖に顔を歪める中。
灯りの右目が金色に輝き、猫のような瞳孔が現れる。
その背後で、黒い霧がぐるぐると渦を巻く。
> 「父さん……母さん……そして、ここに眠る皆……」
霧が彼女の身体にまとわりつく。
魂の声が、静かに囁く。
> 「忘れられし我らの力……今こそ、娘に宿らん……」
霧が集束し、漆黒と金で彩られた鎧となる。
角が額に現れ、鋭い爪が指先を染め、背には影の翼。
――それは、鬼装《宵ノ鎧》。
灯りの中に、過去の悲劇と未来の希望が重なり、具現化した力。
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黒の咆哮
その姿を見た村人たちは息を呑んだ。
「鬼だ……」
「いや、違う……あれは、人でも鬼でもない」
灯りが口を開く。
> 「私は、誰の味方でもない」
「ただ、“悪”を許せないだけ」
「……これは、皆の怒り――そして願い」
その瞬間、黒い翼が羽ばたき、地を震わせる咆哮が響いた。
魂の力をまとった灯りは、村の“理不尽”に立ち向かう。
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鬼の娘として
剣を構える烏丸が、灯りを見据える。
だがその目にあるのは、恐れではない。
――それは、かつて彼が斬った“鬼”と、同じ目だった。