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第2、5話:鬼殺し(終幕)
第2話:鬼殺し(終幕)
――宵の首が、澪の手に抱かれていた。
まだ、温かい。
まだ、あの優しい瞳が閉じたまま、眠っているだけのようで。
「……宵……お願い、戻って……」
震える手で、澪はその頬に触れた。
そして――
涙で濡れた唇を、宵の唇へと重ねる。
血と涙が混ざり合う、狂おしいほどの口付け。
まるであの頃のように。
互いを求め合った夜のように。
その瞬間、宵の血が、澪の中へと流れ込んだ。
ただの接吻ではない。
これは、儀式。
愛と執念が結ぶ、禁じられた転写。
澪の身体に、宵の“鬼としての魂”が宿りはじめる。
彼の命の欠片が、ゆっくりと澪を満たしていく。
そして――
腹に宿る、**娘・灯**にも、それは伝わった。
胎動が、一瞬激しく波打つ。
――母を通して、父の血が、魂が、灯りへと継がれた。
澪の目が、金色に光った。
それは宵と同じ、猫のような瞳孔。
「……私が、守る……この命が尽きようとも……」
母は鬼となる。
父の魂を継ぎ、娘のために、全てと闘う鬼に。
――そして、悲劇の夜は、終わった。