第32話 我が名は、カゲトラ
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第32話 我が名は、カゲトラ
眩い閃光が空を切り裂き、黒き闇を払いのけた。
崩れ落ちたかに見えた影虎の身体が、ゆっくりと立ち上がる。
その姿は、以前とはまるで違っていた。
漆黒と金の鎧――七つの記憶武装すべてが一つに統合されている。
その背にたなびくマントは、記憶の奔流そのもののように揺れていた。
髪は銀白に変わり、瞳には万象を映し出す蒼き輝き。
だがその表情は、確かに“彼”だった。
「やっと……思い出した」
彼は、自らの胸に手をあてた。
「俺の名前は――カゲトラ」
それはただの通称ではない。
彼が生まれ、歩んできた記憶のすべてとともにある、“本当の名前”だった。
《無き者》の最上位体《喰記王》が、低く唸る。
「記憶を、取り戻しただと……?
お前たちは、忘却の果てに沈む存在だったはず……!」
「それが俺たちの強さだ」
カゲトラは静かに言った。
「記憶は重い。痛みも喪失も、裏切りも、全部が心を削っていく。
でも――それが俺という存在だ。全部が、俺の力だ」
その言葉と同時に、七つの武装が輝きを放つ。
斬撃、盾、炎、影、風、光、そして記録。
すべてが彼の中にある。すべてが彼の意思によって制御されていた。
「喰記王――お前は過去を喰らい、未来を奪う存在だ。
だが俺は、未来を“記す者”だ」
次の瞬間、カゲトラの背後に現れたのは、無数の“記憶の羽根”。
一枚一枚に、過去に出会った人々の記憶が刻まれている。
それらが彼の背を押し、剣を振るわせる。
「さあ、記録を始めよう」
カゲトラは言った。
「お前を倒し、この物語に終止符を打つために――!」




