第22話 雷鳴(らいめい)の選択
第22話 雷鳴の選択
蒼き雷が、空と地を引き裂くように走った。
影虎の体は自然と動き、双剣を構えた青年と対峙する。
雷の記憶が、影虎の中で騒ぎ始めていた。
まるで“彼”が語りかけてくるように――。
『届かなかった。俺は……守れなかった……』
――カイの記憶。
それはただ強さを誇るだけの剣ではなかった。
守れなかった者たちの後悔、赦されぬ選択の記憶だった。
青年の剣が、光を放つ。
雷と雷がぶつかり合う。
刃は交差し、言葉は火花とともに散った。
「君にその記憶は重すぎる!」
「それでも、俺が背負うんだ……! 仲間だったんだろ、カイは!」
斬り結びながら、影虎は叫ぶ。
心が引き裂かれそうになるたび、足が前に出た。
青年の目が揺れる。
かつて、彼もカイと共に戦った者だったのかもしれない。
だが、止める理由があるということは――彼もまた、記憶に傷つけられた一人だった。
剣戟の中で、影虎は一瞬、隙を突いた。
雷の力を右手に集中させ、一閃――。
青年の剣を弾き飛ばす。
「……やれ。もし、それでも見るというのなら」
崩れ落ちる青年の声は、諦めではなく、どこか安堵していた。
影虎は双剣を手に取る。
雷が走る。記憶が胸に流れ込む。
――彼は、最期まで戦い、仲間の命を背負って散った。
誰にも見送られず、だが誇り高く。
その想いが、刃に宿る。
「ありがとう、カイ。お前の意志……俺が繋ぐ」
雷雲が晴れ、天に蒼が戻る。
静寂の中で、影虎はそっと双剣を腰に収めた。