表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『優しき鬼灯(ほおずき)』  作者: 赤虎鉄馬
19/39

第15話:記録の墓所《ムネモシュネ》へ


『影虎の記憶武装』


第15話:記録の墓所ムネモシュネ


 異形の空間“記録の間”から出た影虎たちは、グレイに導かれ、薄暗い回廊を進んでいた。


> 「記録の墓所ムネモシュネは、“語られなかった記憶”が流れ着く場所。

 地図にも記されておらず、記憶の中にも存在しない。

 だが、七つの記憶武装を手にした今なら、そこへ至ることができる」




 灯りが手にした《灰鎖》が、鈍く鳴動していた。まるで、封印された何かが“呼応”しているように。



---


地図にない道


 旅のルートを描いていたイリスが、ホログラム上に浮かぶ空間を指差す。


> 「この座標、通常の空間構造と一致しません。

 時空の裂け目……または、失われた記録の“抜け殻”。」




> 「たぶん、それだ」とミコトが呟く。




> 「《ムネモシュネ》は、“語られなかった記録”であり、“思い出されなかった記憶”の最果て。

 意志なき物語たちが、そこに眠ってるの」





---


記録の墓所ムネモシュネ


 旅の果て。

 影虎たちが辿り着いたのは、天空と海が反転したような、上下の区別も曖昧な無音の空間だった。


 そこには、廃墟のような巨大な図書館が広がっていた。

 だが、どの書架にも“本”はなく、あるのは空の背表紙と、埃に覆われた“記録名だけ”。


> 『願いを語らなかった少女』 『誰にも知られず死んだ戦士』 『名前のなかった星の話』




 そのどれもが、“物語にならなかった者たち”の断片。



---


第八の武装の気配


 奥へ進むほどに、七つの記憶武装が震え始めた。


> 「呼んでる……ここにある。“まだ語られていない記憶”が、俺たちを待ってる」




 影虎が呟いた瞬間、白く光る円環が空中に出現し、彼らの前に“記憶の核”が姿を現した。


 それは、他の記憶武装とは異なる純白の構造。

 剣でも杖でも鏡でもなく、“開かれた本のような形”をしている。



---


第八の記憶武装《白書しらしょ


> 記憶武装《白書》――これは、“語る者の記憶”




 灯りが触れようとした瞬間、その本は彼女の指先をすり抜け、影虎の胸元に飛び込む。


> 「……うわッ!」




 影虎の意識が、急激に“他者の記憶”へ引きずり込まれる――



---


回想:名もなき語り手


 暗闇の中、影虎は一人の女性の姿を見る。


 白い服。凛とした背筋。声を発しない口元。

 その存在は、どこかで見たような“既視感”を帯びていた。


> (……誰だ……?)




 女性は静かに本を差し出し、唇を動かす。

 声はない。だが、確かにこう言っていた。


> 「あなたに、この記憶を託すわ。名を持たぬまま、誰かに語られることなく、私は消えた。

  でも、それでもいい。“語る者”が現れるなら」





---


影虎の覚醒


 意識が現実に戻る。

 影虎の腕には、新たな記憶武装《白書》が装着されていた。


> 「……この記憶は、“物語を語り継ぐ者”の記憶だ。

 誰かの真実じゃない。“語ることそのもの”の力」




 イリスが分析する。


> 「《白書》は、周囲の記憶を一時的に再構成し、書き換える能力を持っています。

 それは、“語りの力”そのもの……記録を操る、物語の上位概念」





---


新たな影:語りを拒む存在《無言サイレント


 突如として空間が軋み、漆黒の霧が発生する。

 図書館の書架が次々と崩れ、その中から現れたのは――


> 「――物語など、語るな」




 声なき声。

 黒衣の存在《無言サイレント》は、影虎の《白書》に強く反応していた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ