第8話:白刃の記憶
第8話:白刃の記憶
灯りの前に立ちはだかる男、烏丸。
人間でありながら、“鬼殺し”として恐れられた存在。
宵を討ったのも、かつてこの男だった。
だが今、彼の目は迷っていた。
灯りの中に、**過去に刃を振るった鬼と同じ“何か”**を見たからだ。
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鬼の記憶、灯る
灯りの中で、声が聞こえた。
> (……聞こえるか、灯り。これは、我らが交わした記憶)
父・宵の声。
母が語った優しい面影とは異なる、戦士としての記憶が流れ込んでくる。
燃え上がる村、焼け焦げた木々、そして――烏丸の剣が振り下ろされる瞬間。
その刹那の痛みと怒り、愛する者を守れなかった無念が、灯りに流れ込む。
金色の瞳が濃く光り、鬼装が共鳴する。
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剣と爪、交差
「立ち退け、娘」
烏丸の声には、怒りも怯えもなかった。ただ、冷ややかな覚悟だけがあった。
> 「この剣は、鬼を斬るためにある。たとえ、半端な血でも――な」
灯りの手が動く。鋭く伸びた爪、鬼の力が唸りを上げる。
> 「“私”を斬るというのなら――試してみてよ、鬼殺し」
二人の影が交差し、火花が舞う。
人と鬼。
過去と現在。
その狭間で、記憶の戦いが始まった。
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剣の真実
交差する刃と爪の中、灯りは問いを放つ。
> 「なぜ……父を殺したの?」
「鬼だから? それだけ?」
烏丸の剣が止まる。
そしてぽつりと――彼は語った。
> 「あの日、村の者は“鬼の子を孕んだ女”を焚き殺そうとしていた」
「俺は……あの女だけは救いたかった」
灯りの心が揺れる。
> 「じゃあ、なぜ父を……!」
「鬼が生きていれば、また村人は女を狙った。だから、俺が斬った」
「……それが、“人の正義”だった」
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父の角、叫ぶ
灯りの額に浮かぶ角が、深紅に染まる。
怒りと悲しみ、そして赦せない矛盾が、身体を巡る。
> 「そんなの、間違ってる……!」
黒き翼が広がる。
父の魂、そして鬼たちの願いが、再び灯りに集う。
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鬼の娘、立つ
「私は、鬼でも人でもない」
「私は、“灯り”。この命で、何を守るか決めるのは……私自身よ!」
その叫びと共に、鬼装がさらに進化する。
背中から紅黒の尾が伸び、両の角が揃い、彼女の姿は**完全なる“鬼の戦姫”**と化す。