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語り部の老婆
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■ 短編小説
タイトル:『優しき鬼灯』
ジャンル: 和風幻想×心理ホラー×人間ドラマ
あらすじ:
古びた屋敷に、ひとりぽつねんと座る老婆がいた。
蝋燭の炎がかすかに照らす部屋、積み上がった古書と埃の中で、老婆は静かに語り出す。
「昔ね、“優しい鬼”がいたのですよ……」
語られるのは、小さな山里に住む不思議な存在――人間に近く、けれど確かに異形である“鬼”と、彼をかくまった少女の物語。
人に恐れられ、忌み嫌われながらも、誰よりも人を愛した鬼。
その鬼が最後に願ったのは、少女の“忘却”だった。
老婆の言葉は静かに進み、聞き手に疑問を残す。
――老婆は一体誰なのか。
――鬼は、本当に実在したのか。
――なぜ彼女は、今もその話を語り継ぐのか。
やがて語りが終わる頃、蝋燭がふっと消える。
最後に見えた老婆の瞳には、かすかな紅い光が宿っていた――。