Chapter 2 グリーンくんとヘドロンくんは侵略者
⋯!?
手足が樹木に変化していき、周囲が密林のように生い茂る樹木で覆われてゆく。
あれ?
緑少年、檻っぽいやつの中に居て大丈夫なのか?
「あ。⋯ちょっとミスったな」
緑少年(仮)が仲間らしき少年に頭をポリポリとかきながらそう報告している。
勿論お仲間さんも密林の餌食になっている。
結構おっちょこちょいなんだな。
「!お前、あっさり俺に呪われたくせに無礼なこと考えてるだろ!」
⋯こいつも思考読めるんかい!
「てかあんた誰ですか?」
私が問うと緑少年は答えかけたが仲間っぽい人に止められ、
「名乗るほどの名はない」
と返した。
「ふーん。じゃあ今日から君はグリーンくんね」
「や、やめろ!そんなセンスのない名前⋯!わかった!言うから!それだけはやめてくれ⋯!」
そんなに嫌か?
ていうか日本語感覚あるんだ。
グリーンくんは仲間にも呆れた顔で見られている。この地域の人間(だと信じたい)の中でもプライドがだいぶ高いらしい。
「だからやめろって言ってるだろ⋯!俺はジャーデ・エクシェンティモ。で、こっちは同僚のヘイレナドン」
「ちょ、お前何勝手に個人情報バラしてるんだよ!」
ヘドなんとかくんにこづかれるジャーデ。お可哀想に⋯。
「えーっと、ヘドロンくん?」
「侮辱すんなや!!ヘ・イ・レ・ナ・ド・ン・チャフォットだよ!」
お仲間らしき人はヘイレナドンというらしい。
ごめんよ。廃棄物扱いして。聞き取れなかっただけなんだよ。
「俺らは忙しいんだ。原生生物ごときと会話する暇なんぞないんだよ。⋯あぁ!?俺、こいつと会話した!?」
「待って。何も理解できてないんですが」
あーもうっ!
余計に訳解んなくなったよこの陽キャめ!
誰か説明しろや!!
「フェルマノート!音源どこよ!」
「どこだよ!!」
私がそう叫ぶと、目前にはあのピンク神⋯が怒っている映像が映し出されていた。
ジャーデたちもびっくりしてその様子を見ている。
光源は⋯私のスマホぉ!?
「まったく~。手間かけさせないでよねっ!」
「いや待てどうやってスマホ改造した!?」
このためだけに私のスマホは使用不可能になったのか⋯!?
「乗り移ってるだけだぉ~」
「⋯直るの?」
「直りはするけどこの世界でスマホは使えないよー。電波ないし」
私とフェルマノートがそんな雑談をしている隙にジャーデとヘイレナドンは潜潜話をしていた。
「⋯聞いたかヘイレナドン。この超ハイテク投影機は原生生物の間では「すまほ」と呼ばれているらしい」
「ああ。これは上層部に伝えないとな」
そしてジャーデは改めて私達の方に向き直り、
「というわけで、暫くしたらお前を討伐しに来る!さらばだ!」
と宣言してヘイレナドンとともに去っていった。
「あいつらなんだったの?」
「はぁ~!?」
待て待て待て。
そうなるとだいぶ話が変わるじゃん。
「世界最強って⋯侵略されてる側の世界の中の最強ってこと?」
「勿論侵略してる側の世界のほうが強いよね?」
「じゃあ私より強い人がこの世界にいっぱい来てるってこと?」
「最強とニ番目に最強の差は?」
終わったぁ~!!
私のハッピー世界征服ライフぅ~!!
一瞬で消え去ったぞー!
「うーん⋯ねえフェルマノート、あいつらと私だったらどっちが強いの?」
「まじか⋯早々に私の人生終わったわ⋯」
思ったより早かったわ。
私のセカンドライフちゃん。
思い返せばいろんなことが⋯。
短期間に起きてるね。
いやー、来世はもうちょっとイベントフルじゃないといいな~。
あいつら来るまでに私のお墓作っとくか。
「⋯正直どうでもいい」
私がウケ狙い半分でそう伝えると意外にもフェルマノートは乗って来ず。
「羽水。そうやってあたしが救った人たちが見捨てたせいで、この星の今の現状があるんだよ」
何処からともなく現れた映像ちゃんが神妙な面持ちでそう語りかけてきた。
私はあたりを見回す。
荒廃した風景。
生き物なんて何処にも見当たらない。
人口がだいぶ減っている、とフェルマノートはさっき言ってたけど、本当は、生きているのは私だけなのかもしれない。
本当に、ここを救えるのは私だけなのかもしれない。
思わず右目から一筋の涙が流れた。
なんて軽率だったんだ、私は⋯。
「冗談ばっか言ってごめん、フェルマノート⋯。私が、やるしかないんだ」
決めた、と私は呟き、俯いていた顔を上げ、真っ直ぐな瞳でフェルマノートを見つめる。
いつか貴方がそうしてくれたときのように。
「力を貸して、フェルマノート。この世界の再興のために」
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