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世界最強の冒険者は動かない!  作者: あくあまふぃん
本編1 最強なのかもしれないけど私はそうは思わない
2/6

Chapter 1 生まれて(から)初めて(起こったのは)呪われた(ことだ)!

 私は至って普通だった。

 そう、普通。

 普通のオードブル。

 運動神経も成績も外見も内面も何もかもがね。

 そして只今、全くもって普通ではない経験をしています。

 一言でいうと、事故りました。⋯私は悪くないよ?

 普通の自転車を普通のスピードで漕いでいた私は信号無視で飛び出してきたピンク色の車にはねられた。運転手にこにこしてた。許すまじ。


 そして今私はこの何も無い空間にいる。何故か自分の姿も視認できない。ただ、虚無の中を漆黒のペンキで塗りたくったような、そんな感じなのだ。

 勿論生命体なんていないよ?

 多分私もう現世さよならしてるし。


「はろーっ!」

 そんな空気感を破る明るい声が突如として響き、私は身構えた。私はごく普通の陰キャなのだ。

 音源と思われる()()はすーっと近づいてきた。

 ⋯足、ないんですか?

「ないよーん」

 軽っ!!⋯っていうか心読まれた⋯?


 改めてその軽ーい()()をまじまじと見つめる。

 派手なピンク色の髪をハーフアップにし、明らかに常識の範疇を超えている輝きを放つヘアピンで前髪を留めており、朝の青空のような爽やかな青色のフリルドレスに身を包んでいる。

 そして足はない。

 陽キャ⋯っ!

 ⋯あれ?

 ピンク⋯?

 こいつもしやあの憎たらしい車の所有者?

「流石に違うよぉーっ!てか神様と人間を一緒にすんなー!信仰心どこやった信仰心!!」

 ピンクの神様(そいつ)は顔を真赤にしてプンスカ怒り出した。

 案外可愛いかもしれない。

「うっさいなー!今度蒸し焼きにして食べてやるからねっ!⋯えーとね、なんでここに君を連れ去ったかというとね、ま、転生だねー」

 !!

 ”普通”脱却の大チャンスだ!

「この程度で喜んでちゃだめだぞ~?なんとなんと!諸事情で生まれた瞬間から世界最強にしてあげるからね!」

 えええーっ!!!!

 チート能力というやつですね!?

 ありがたや⋯!

 普通脱却確定だ⋯!

 ⋯世界最強なんだったらあれ⋯世界征服なんかもできちゃうの!?

 ひゃっほー!!

 人生(?)最高ッッッ!!


「んじゃ、早速転生しちゃおっか~」

 そいつがそう言った途端私の周囲がぐるぐると螺旋を描くピンク色の光に包まれた。足元には五芒星の魔法陣も出現している(足自体は見えないが)。

 体の感覚が末端から徐々になくなっていく。

 感覚の消失がクライマックスに達そうとしたとき、螺旋状の光がカッと強く輝いた。

「神術・生命転移!」

 遠く聞こえるそいつの声にハッとして私は叫んだ。

「あんたは、誰⋯!」

 喉の感覚が途中から消えて最後まで話せなかった。

 ―生命神フェルマノートだよっ!

 フェルマノートの快活な声が聞こえなくなった次の瞬間に、私は意識を失った。




         (おきて、おきて!)

 ん⋯っ?

          (転生終わったよっ!)

 この声は⋯フェルマノート⋯?

「近くに、いるの⋯?」

 そう言って、私はハッとした。

 身体がある!!

 そしていつの間にか赤と緑のワンピースを身につけている。

 クリスマスカラー⋯!

 補色⋯!

 なんのカモフラージュもできない⋯!

 いや、季節によっては⋯?

 絶対これフェルマノートのチョイスだろ。


 ガサガサ。

 葉っぱをかき分ける音がする。

 人間⋯!

「ふっ、ついにこの日が来たか」

 眼の前にいたのはフェルマノート⋯ではなく緑色の髪を雑にまとめ上げた少年だった。

 ほら見つかったじゃん!!

「お前を倒せばこの世界は征服したも同然⋯!いや、そんな簡単にクリアしちゃったらつまんないし、一寸(ちょっと)だけ遊ばせとくか」

 そう言って彼は私に手を翳した。

 は⋯?

 何を言っているのかさっぱりわからない。

 フェルマノート?

  ()

 沈黙すな!!

「呪術・動体樹化」

 彼がそういった途端、彼の手のひらから禍々しい緑色をした波紋が広がり、私を包み始めた。

 どんどん末端の感覚が失われていく。

 あがいても消失は止まらない。その気配すらない。

 えっ?えっ?

 なにこれ?

 逃げられないし⋯!

 世界最強なんじゃなかったの!?

 こいつ絶対格上だよね!?


「対象確定。作動せよ」

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