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番外編 ー赤と企みー

「くそっ…!」


 自室の机を拳で思い切り叩く。憎しみのこもったその衝撃で、拳が熱を持ち始める。

 最近はすべてが思い通りにならない。

 婚約していた王女は死んでしまい、この世からいなくなるものと思っていた目障りな弟は魔王討伐を果たして帰ってきた。

 しかもあいつは、今までとは違う目つきをするようになった。あの生気のない顔をして俺に怯え引きこもる弟はどこかへ消えてしまい、代わりに俺への対抗心を裏に隠した落ち着きのある目をする男が現れたのだ。


「いったい何があいつを変えた…!?」


 討伐に行く前はあきらかに死に行く者の様相をしていたのだ。それが、あんなに人が変わったようになるなんて。

 机の上には、魔法討伐に関する報告書が散らかっている。中には引き裂かれた書類もある。


(やはり覚醒のせいなのか…?)


 破れた書類の上に書かれている文字を見つめて考える。


 あいつは四歳で魔法を覚醒させた俺とは違い、いつまでたっても覚醒の兆候すら見せずに十七年間を過ごしてきた。王宮内の誰もが、もうあいつの覚醒に期待していなかった。

 それだというのに、歴代の名だたる賢王が覚醒させてきたという光魔法に覚醒したのだ。最初に報告を受けたときは何かの冗談としか思えなかった。

 しかし、残念ながらこの状況は事実なのだ。このままでは、得ることが確定していた王の座が危うい。 再び世論を、第一王子である俺が王に相応しい、というものに戻さなくてはならない。そのために一番手っ取り早いのは——。


 もう一人の英雄をこちら側につけることだ。


(今日は邪魔が入ったが、まだ時間はある)


 英雄となった令嬢は、あいつとの婚約の答えを出していない。

 あの令嬢が弟と婚約してしまえば、完全に世論は弟を王にする方向へ向いてしまう。

 だからその前に、何とかして令嬢を取り込む必要がある。


「…使い捨てられる駒も準備しておかないとな」


 いろいろな策を頭にめぐらした後に、ふっ、と笑みをこぼす。明るい未来を想像しながら引き出しから紙を取り出し、まるで躍らせるようにペンを走らせた。

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