告白と幸せと友人と
「アリシア…!!! よかった、目を覚まして…!!」
「お、お嬢様~!!」
目を開くと、そこは侯爵邸の私の部屋で、目の前にはルイとアンがいた。
「あの後、君は急に意識を失ったんだよ。…レオは、ずっとかかっていた呪いが解けて身体に負荷が生じたからだ、とか言っていたけど、やっぱり心配で…!」
「…きです」
「え?」
「好きです。ルイ殿下。あなたのことを、ずっとずっと前から…」
ずっと、自分の心の中に押し込められ、表に出すことが許されなかった思い。その間も膨らみ続けた思いが、胸のあたりからこみ上げ、溢れる。
「——お慕いしています」
右には赤面するルイ。左には口を抑えて震えるアン。
永遠にも、一瞬にも感じられた間の後、ルイが口を開いた。
「まさか、先に言われてしまうとはね。——僕も好きだ、アリシア」
「…!?」
「僕と、婚約してください」
「はい!! もちろんです」
強くルイに抱きしめられる。彼の温もりが心地よい。
(この幸せな時間がずっと続けばいいのに…)
(?)「くっくっくっ、あー、甘い甘い。空気が甘すぎる。こんなんだから扉の前で入るのを躊躇している奴が大勢いるぞ」
(っ!?!?!?!?!?)
…。
……。
まさか………
「ま、魔王っ!?!?!?」
「えっ、魔王だって!?」
私の発言に驚いたルイが、私の背中に回していた腕をほどく。
しかし、そのぬくもりが失われるのを惜しんでいる場合ではなかった。
私の目の前には、______あの魔王がいた。
「なんで!? リリーさんと一緒に成仏していったんじゃ…!?」
「いやー…、我にもよく分からないが、神の計らいってやつだ。リリーともたくさん話し合ったんだが、責任もってお前を最後まで見届けてこいと言われた」
「えー…? どういうことなのよ…」
「ほんとにな。我だって、リリーと一緒に生まれ変わりたかったというのに」
「こっちだって、こんな魂に一生付きまとわれるなんて願い下げよっ!」
「ああ? 我が必要ないと…? お前ひとりでは、また突っ走った行動をするだけだろう。我が戻ってきたことに感謝せい」
部屋にギャーギャーと口論が響く。
「第二王子殿下…? アリシアはひとりでどうしたんですか…?」
部屋の前で待機していたソフィアが、そろそろと中に入ってきて尋ねる。ちなみに中のやり取りを偶然目にしてしまった彼女の耳は少し赤くなっている。
そんなソフィアの問いかけに、これまでニヤニヤと中の様子を楽しんでいたレオが答える。
「ふふ、おそらく因縁の相手と言い争っているようですね」
「レオ、君も来ていたのか」
「ええ、やっと妹の件が片付いて。……まったく、こちらの国の次期王妃も面白い方ですが、私の国の王女のお転婆にも困ったものですよ。死の偽装と隣国への亡命を兄に手伝わせるんですから。まあ、好きな人に一途になって思い切った行動をするところは、あなたにも似ているかもしれませんね」
自分にだけ聞こえるような小声でレオの口から発せられたその内容に、ルイは唖然として硬直する。その真偽を問いただそうか迷っていると、
「因縁の相手…? 誰かいるようには見えないのですが…」
ぱちぱちと目を瞬かせたりこすったりするソフィアが隣から尋ねる。
その発言に思考から現実に引き戻されたルイは、ちらりと婚約者となった令嬢の溌剌とした様子を見て力が抜け、落ち着きを取り戻した様子でにこやかに返答する。
「ああ、…レオの言う通りなら、心配しなくても、彼はアリシアにとって気のおけない友人みたいなものだろう」
ルイとレオが笑顔を見せる一方で、オスカーとソフィアは頭に疑問符を浮かべた。
「…まあ、たぶんアリシアは大丈夫なんだな! なら良しだ!! あー、それにしてもめでたい!! やはり俺の恋愛マスターとしての勘は間違っていなかったな!!」
ふふんと鼻を鳴らすオスカーを、じとりとした目で見つめるソフィアが腕で小突く。
「…恋愛マスターですって…? …兄様、まーた変なことをしてアリシアに迷惑をかけてたんじゃないでしょうね……?」
「おーっと…そういえば、侯爵夫人ってどこにいるんだー? 俺たちが侯爵邸に来てから姿が見えないぞー?」
冷や汗をかきだしたオスカーが、ソフィアの視線から逃れるようにきょろきょろと首を回す。
その視界に入らない低い場所から、突然声がかかった。
「おかあさまは、少しのあいだ遠くに行くって、おとうさまが言ってました!」
「ひょえ! あ、君たちはアリシアの弟と妹の…」
「ジョンです!」
「ミアです! …おねえさまの大きな声がしたから来たのですが、大丈夫そうですか?」
小さな訪問者に、ルイが膝をついて答える。
「うん。アリシアはとても元気だよ」
全員がベッドの上で騒ぐ一人の令嬢を見つめる。
ほほえましく見つめる者、疑問符を浮かべながら見つめる者。__その心の内はさまざまであるが、ただ、その令嬢が”何か”と生き生きと話している、ということは皆に伝わっていた。
「お前、自分が王妃になること分かってるのか? そんなんでずる賢い貴族共を相手にできると思ってるのか?」
「っ、で、できるわよっ! やってみせるわ! あなたの助けを借りずにね!」
「ほーう、それは見ものだな。せいぜい励むがよい」
「はあ? できるって信じてないわね~っ!?」
***
むかしむかし、とある王国に、皆から慕われる王と王妃がいました。
王はその頭脳と生まれ持った光魔法で民を導き、王妃はときに剣を握って民を守りつつ王を支えました。
しかし、王妃にはこんな噂がありました。
ときどき一人になると、誰もいない場所に向かって話していると。そしてその後にはいつも、民を導くための妙案をもってくるのだと。
そんな噂もありながら、民は王妃を慕っていました。しかし、国中の誰も、王妃様への愛情に関しては、王に並び立つ者はいませんでした。
仲睦まじい王と王妃は、国を平和に治めつづけたといわれています。
おわりです!
(誤字や文章表現は今後も修正する可能性がありますが…)
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!




