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幼馴染と街(前編)

「おい、アリシア! 街に行くぞ!!」

「…はい?」


 書庫で本を読んでいた私に、オスカーが突然そう告げた。

 ちなみに今読んでいるのは、例の古びたルルシスの本である。


 本格的に読み始めて分かったことなのだが、この本には古語が多く使われているため、辞書を引きながら解読する必要があった。つまり、もともと遅い私の本を読むペースが、さらに遅くなっており、内容を理解するのになかなかに時間がかかっている。 __時間がかかる理由は、私が集中できていないせいもあるのだが…。

 舞踏会の日に庭園でルイが言いかけていた言葉が気にかかるのだ。結局、あの日ルイは事件の後処理に向かったため話す時間が作れなかった。今度でいいかと思っていたら、最近の彼は忙しいらしく一向に会える様子がない。

 そんなふうに私がのろのろと本を解読していたところを、急にオスカーが訪ねてきたのである。


「お! あいつが来たのか」


 魔王はお気に入りのオスカーが来て嬉しそうにしている。


「なんで急に街…?」

「お前、第二王子の誕生日知らないんだろ! 一週間後らしいぞ」

「えっ! そうなの!?」

「ああ、俺もこの間は騎士団で聞いて初めて知ったんだがな。ほら、第二王子はこれまで人前にあまり出てこなかっただろ? これまで誕生日の催しも特にしてなかったし。まあ、これは本人が拒絶していたかららしいが。だけど今年は魔王討伐の英雄になったからな。陛下が盛大に誕生日パーティーを開こうと打診したのを、第二王子が断って、王宮の廊下で口論していたらしい。直後にトボトボ廊下を歩く陛下も目撃されている」

「へ、へえ」


 息子との口論に負けて、しょんぼりした哀愁漂う国王の姿が脳内に映し出された。


「それでだ。きっとこのままいけばパーティーは開かれないだろう。だが、お前は魔王討伐を共に戦った仲だろう? 何もプレゼントしないってわけにはいかないよな?」

「そうね。何か贈り物をしたいわ」


 心のこもった贈り物をすれば、ルイとの仲も進展するかもしれない。


「だからプレゼントを選びに行くぞ。今からだ!」

「えっ、今から!? オスカー、あなた、騎士団の仕事は?」

「大丈夫、大丈夫。上司にはうまく言っておいてくれって同僚に頼んで…」

「オスカーなぜここにいる?」


 突然、般若のような顔をした第二騎士団の団長がオスカーの背後から現れた。


「っひ!? 団長…!?!?」

「お前には後で特別訓練を追加してやろう。さあ、行くぞ。…失礼した、オベール嬢。そうだ、先日はありがとうございました」

「い、いいえ。オスカーをよろしくお願いいたします…」

「ア、アリシア~っ…! 外でソフィアが待っているはずだから、二人で行ってこい…!!」


 お前の幸運を祈る、と親指を立てたオスカーは、泣く泣く騎士団長にずるずると引っ張られていった。


「アリシア、待っていたわ。……あれ、兄様は?」

「あ~…、仕事を抜け出そうとしてたのを団長に見つかって…」

「え? 兄様ったら、私には仕事が休みだって嘘をついていたのねっ!? まったく…。まあいいわ、騒がしいのがいなくなったってことで、二人で行きましょう」


 にこっ、と笑うソフィアはとても可愛らしいが、言っていることは少々辛辣である。


「おい、こいつがソフィアとかいう奴か?」


 馬車に乗り込もうとしていると、魔王が問いかけてきた。そういえば、舞踏会では魔王はソフィアを見ていなかったのか。

 しかし、ソフィアの前だから、と無視を決めこむ。ちなみに魔王はふてくされた。

 

 馬車が発進してしばらくすると、にぎやかな街が見えてきた。王宮に向かうときに通ってはいるが、馬車を降りて立ち寄るのは久しぶりだ。

 馬車に揺られながら、私たちは話を続けた。


「それで? 殿下へのプレゼントを何にするかは考えてあるの?」

「いや…さっきまで殿下の誕生日も知らなかったし、まだ何も考えられてなくて」

「じゃあ、いろいろ歩いて見て回るのがよさそうね」


 御者に言って、街の中心部で伯爵家の護衛と一緒に降ろしてもらった。

 ここには、貴族向けから平民向けまで、様々なショップがひしめき合っている。


「服…は選ぶのが難しいかしらね…。あっ、アクセサリーなんてどう?」


 ソフィアは宝石店があるのを見て言う。ショーウィンドウには、男性向けのブローチやペンダント、指輪などが展示されている。


「うーん…、ルイ殿下はあまり装飾品をお付けにならないようだし…」

「そうなのね。あ、ハンカチなんてどうかしら?」


 いたずらっぽく笑うソフィアが指す貴族向けの服飾店には、美しい刺繍が施されたシルクのハンカチが並べられているのが見える。


「えっ、まさかソフィア…?」


 実は最近、女性から男性へハンカチを贈れば、相手と結ばれる、というおまじないの噂が若い女性たちの間で広がっているのだ。

 ちなみに、もうルイには試している。噂を知った私は、あわよくば自分の気持ちが伝わらないかと思い、日頃の礼としてハンカチを贈った。しかし、ルイは全く反応を示さなかったのだ。どうやら彼は、世間の噂には疎いようである。

 __問題は、ソフィアもオスカーと同じく私がルイを好きなことに気づいていたのか、ということ…。


(オスカーは、呪いのせいで殿下が好きなことを肯定しない私の反応を見て、自分の勘がはずれた! って騒いでいたけど、結果的に協力者的な立ち位置になっているし…。もしかしたらソフィアも…)


「冗談よ、冗談。貴方と殿下は、恋人っていうより戦友だものね!」

「あはは…」


 少し期待したが、ソフィアはただ私をからかっただけらしい。


「くっくっくっ。こいつは赤髪と違って“鈍い”奴ってことだな。で、こいつは誰なんだ? そろそろ教えろ」


 ソフィアに対して失礼なことを言う魔王は、なかなか返答しない私の周りをぐるぐると回ってくる。定期的に視界に入ってくる忙しない姿が鬱陶しい。

 しょうがないので、店を探すのに夢中になるソフィアの隙を見て、魔王にささやく。


「ソフィアはオスカーの妹。私の幼馴染!」

「…おさななじみ」


 魔王は、突然ぴたっと回転を止めた。とりあえず視界に鬱陶しく動く物体がなくなったので、よしとする。

 さて、ソフィアにばかり任せないで自分もいいプレゼントがないか探そう、と向かいの通りを見ると、貴族御用達の文具店があるのを見つけた。


「あ、ちょっとあそこに寄ってもいい?」

またしても長く更新の間が空いてしまいました…。

久しぶりにサイトを開いたら、400pvとか書かれていて驚きました。(10人くらい読んでくださるといいなーくらいの気持ちで投稿していたので…)

少しでもこの作品に興味をもってくださった皆様、ありがとうございます。


未熟者ですので、話に矛盾点などあるかもしれませんが、見つけたら都度修正していきたいと思います…。

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