第3章 惨響
第2章よりは短めです。
では、お読みください。
村のケモノ達はパニック状態になっていた。
だめだ...このままでは昔の時と同じようになってしまう!
どうすれば...
ブローク「うろたえるな!!!」
その時、ブロークが大きな声を響かせる。
ブローク「タイミングは悪い...が!我々は先ほど立ち向かう決意をしただろう!!」
その言葉に、村のケモノ達は落ち着き始める。
俺もリルも、その言葉を聞いて冷静になる。
ブローク「ならば!今できることを考えて行動するのだ!大切なものを守るために!!」
村のケモノ達は、勇気をもらったかのように活気が出てきていた。
そうだ。まだあの時と同じ目に合うと決まったわけじゃない。
ブローク「よし、お前らは準備をしておけ!!まずは説得を試みるとしよう!!争いになった場合は、共に生き残って見せようじゃないか!!」
村のケモノ達はまた歓声を上げ、すぐに動き始めた。
さて、俺たちは...
リル「バクター...」
その時、リルは俺の手を握った。
リルはまだ震えているようだった。
バクター「...怖いのか?」
リル「うん...」
リルはこうみえて俺よりもあの時のトラウマを抱え込んでいるらしい。
俺はリルの手を握り返した。
バクター「大丈夫だ。少なくとも、修業をしてきた俺たちがいる。あの時のようにはならない」
リル「...そうだね。それに...やっぱりこうやって握ってると、少し落ち着くよ。もう大丈夫」
俺たちがそう話していると、ブロークがこっちに向かってきた。
ブローク「まずは説得できるかどうかだが...これまでもお前たちはあのような奴らと説得できたことがあったのか?」
バクター「いや、悪いが何度やっても上手くいった試しがない。でも、やらないよりはマシだ」
ブローク「まあ、争いたくはないしな。ならば急ごう。奴らが攻めてくる前に」
俺たちは村を囲っているケモノ達の前に出る。
「お?どうやら先に死んでくれる者たちが来たみたいだぞ!」
「こりゃあいい!村の連中に見せしめにしてやろうぜ!」
囲っているケモノ達は、俺たちをバカにしているようだった。
どうやら、奴らと俺たちの考えが違うことも分かっているらしい。
ブローク「村を囲っているお前たちに問う!!この村をどうするつもりだ!」
ブロークは、この村を囲う理由を聞いていた。
「そりゃあ、お前らを殺すつもりだ!聞くまでもねぇだろ!」
囲っているケモノ達は嘲笑っていた。
ブローク「だが、我々は争う気などない!!なぜ殺しに来ようとする!」
「殺すっていうのは快感なんだよ!!俺らは常に刺激を求めてるんだ!!」
殺すことに快感だと?本当におかしい奴らだ。ふざけてる。
ブローク「貴様ら...殺されてるケモノ達の気持ちが分からんのか!!」
「分かるかよ!それが普通だろ!」
やはりだめか。争いは避けられないな...なら...
バクター「お前らはなぜこの村を狙っている!なぜここに村があると分かる!なぜここにケモノ達がいることが分かるんだ!」
「へ!お前らは知らないだろうな!依頼が入ってるんだよ!この村を殲滅しろとな!」
なに...依頼だと...!
リル「依頼...あの時も...どこかの依頼によって...」
バクター「その依頼はどこから来たんだ!!」
「この村の遠い遠いでけぇ町からだぜ!普通じゃない奴らを排除したいらしいからな!」
町...荒れていない町なのか...?どういうことだ...それも聞かなければ...
「もうつまらない話は終わりだぁ!!やっちまうぞぉ!!」
くっ...もう時間稼ぎは無理か!やっぱりあまり対話できない!!
ブローク「我々のケモノ達よ!!説得はだめだった!!戦闘態勢を取れ!!」
ブロークは村のケモノ達に呼びかけ、背負っていた大剣を取り出し、構えた。
リル「バクター!僕たちも行くよー!」
バクター「ああ!守り抜くぞ!!」
俺たちもそれぞれ構え、数えきれないほどのケモノ達に向かって突撃した。
俺は稲妻で敵のケモノ達をできるだけ抑え、稲妻を切り抜けてきた奴を硬化させた手と足で倒していった。
リルは火球を出し、敵のケモノ達に向かって放ち続け、近くの奴を金棒で殴っていた。
一応俺たちは多対二の状況になったことは何度かあり、その戦い方をある程度身に着けていた。
だが、やはり心配なのがブローク、そして村のケモノ達だ。
俺たちだけではこの数えきれないケモノ達を抑えるのは無理がある。
そう思い、俺はブロークの方を振り向いた。
ブローク「どりゃあ!!」
ブロークは雄たけびを上げ、いつの間にか大きくなった大剣を振り回し、敵のケモノ達を倒していた。
おそらく物を大きくする能力だろうか。かなり重そうだが、それでブロークは中々素早く動いていた。
凄い力だ。あまり戦闘経験はないはずなのに、良くやっている。
村のケモノ達はどうだ。村を囲っていた木の壁はもう壊れていたが...
「はぁ!」
「そりゃ!」
...どうやら、ある程度能力で対処しているらしい。
思いの外、村のケモノ達は強いみたいだ。しかし...
バクター「数が多い...!減る気がしないぞ!」
リル「全然キリがないよ!これ!」
敵のケモノ達の猛攻は終わる気がしなく、どんどん俺たちの疲労が溜まっていく。
もちろん敵のケモノ達も協力してるわけではないため、敵のケモノ同士で殺しあってるところもある。
が、それでこれだ。一体どこからこんな数湧いているんだ...!
「ふはははは!皆殺しに飢えてるんだよ!殺したくて仕方ないんだよ!」
「この村の連中を殺すために、かなり多くの町のケモノ達が来てたからなぁ!」
このケモノ達も、依頼した町から来たっていうのか...!
それから俺たちは、しばらく敵のケモノ達と戦い続けた。倒し、殺して、抑え続けた。
バクター「....守り切らない...と....!」
リル「はぁ...はぁ...!」
俺たちの疲労がどんどん溜まっていく。少しづつ傷を負っていく。
村の方を振り向く余裕がなくなってくる。
「こいつら...全然強いじゃねぇか!!」
「へ!でも倒すのは俺だ!俺がお前らの中で一番強いはずだからな!」
「おい!何勝手に一番名乗ってやがる!俺が一番だろ!」
「ああ!?なんだてめぇ!」
...たまに敵同士の殺し合いも起きているようだ。
今のうちに俺はまた村の方を振り向いた。
バクター「...!!!」
そこに、村のケモノの数匹が血を出して倒れているのが見えた。
バクター「ああああ...!」
守り切れてない...嘘だ...そんな...。
俺はすぐに村の方へ走った。
リル「バクター!?」
バクター「リル!悪いが頼む!!」
そして村の中に行った。
そこには、部位を破損しながらも戦うブロークと村のケモノ達。
そして安否が確認できない倒れているケモノ達。
厳しい状況だった。
バクター「なんで...こんな」
また...昔のようになってしまうのか...俺は結局...何も...
ブローク「バクター!くっ...しっかりしろ!!この状況を見て何も守れなかったとかいうんじゃないぞ!!」
バクター「は...!」
俺はその言葉に冷静を取り戻す。
ブローク「一匹でも多く守り通せ!!一匹でも多く!!!」
バクター「ああ、わかってる!!」
わかってた...はずだ...!全部は...守り切れないことなんて...!
それでも...村のトラウマがちょっと出てきているんだろう。
俺は再び敵のケモノ達へ突撃する。
そして戦っているリルと合流する。
リル「バクター!何があったの!?」
バクター「ああ...すでに村のケモノ達の数匹がやられてて、ブロークと何匹かのケモノ達が腕や足がなくなっていた...」
リル「そんな...!」
バクター「リルだってわかっていたはずだ!村の全ては守り切れないことぐらい...!」
リル「うう...そうだよ!わかってたよ!でも...」
バクター「嘆いていてもこの猛攻は終わらない!できるだけ守り切るんだ!!」
リル「あああもう!」
そう、嘆いていても仕方ない。今は戦うしかないんだ。
だが正直、体力が限界を迎え始めている。
バクター「流石に...きついぞ...!」
リル「もう...疲れたよ...でも」
それと同時に、ケモノ達の猛攻は徐々に衰えていた。
確実に少なくなっている。敵同士の争いも増え続けたおかげだろうか。
バクター「もうすぐ猛攻は終わる可能性がある!一気に畳みかけるぞ!リル!」
リル「りょうかい...!」
俺たちは残った体力を使い、敵のケモノ達を倒し続けた。
いつの間にか、もう敵のケモノ達は攻めて来なく...いや、残っていなかった。
俺たちはその場で倒れた。
バクター「はぁ...はぁ...終わった...のか?」
リル「もう...はぁ...ケモノは...来ていない...みたい」
どうやら、なんとか攻めてくるケモノ達を退けたらしい。
バクター「村の方へ...戻ろう」
リル「うん...」
そうして俺たちは起き上がり、ゆっくり村の方へ戻っていた。
村の中を見てみると、負傷しているケモノ達。犠牲になったケモノ達。この状況を見て泣きわめいたり、吐いたりするケモノ達。
そして...地面に大剣を刺してその場に座り込んだブロークの姿があった。
バクター「ブローク...」
ブローク「...バクター...リル...」
リル「ごめん...あまり...守れなかったよ...」
リルは村の姿を見渡し、泣きながら言葉を吐いた。
ブローク「いや...犠牲はいるが...守れたものもある...それに...お前たちがいなきゃ...村はとっくに滅んでるさ」
バクター「...それでも、守れなかったものもある。もっと早くこの村についていれば...まだ守れたはずなのに」
ブローク「...それは、俺も同じようなものだ...お前たちがかつて住んでいた村に...気づいていれば...守れたはずだ」
バクター「...」
お互い様...てことか...。
ブローク「今は...休むんだ...休んで...」
???「あら?まだ全然ケモノ達がいる。やはりもうちょっと強いケモノ達を集めなきゃダメね」
突然の知らない声に、俺たちは聞こえる方に振り向く。
そこには、幻獣の種族っぽい、紫色の体毛に黄色の瞳をしたケモノがいた。
???「あの数のケモノ達が出向いて、この程度なの...」
この程度...だと?
バクター「お前は...誰だ」
???「ん?ああ、私のこと?私はカーネスト町の副町長、ビイナというものよ」
カーネスト町...?どういう町...いや...それよりも...
バクター「お前の町が...この村の殲滅を...依頼したのか...?」
ビイナ「そう。間違いないわ。この村は私たちの考え方とはまるで違いすぎる。戦える力もないと思って、殲滅を依頼したらしいんだけど」
ブローク「...そんな理由で...殲滅を依頼...だと?」
バクター「そもそも...どうやってここが...」
ビイナ「どうやって?......そういう能力があるケモノがいるのよ」
そういう能力...どんな...。
ビイナ「しかし、あの数のケモノ達が出向いてこの程度なら、その主な原因は...あなたたち3匹のケモノ達?」
リル「...ふざけるなよ...お前たちのせいで...どれだけ僕たちの大切なものを...失ってきたと思ってるんだよ!!」
ビイナ「知らない。そんなの。考えの違うケモノ達の大切なものなんて気にしないわ」
ブローク「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」
ブロークが大剣を抜き、ビイナに向かって突撃する。
ビイナ「あら、片腕をなくしてる割にはかなりの力持ちね」
ブロークがビイナに向かって大剣を大きくして振る。
だがビイナは一瞬黄色に光り、大剣を振った時にはブロークの背後にいた。
ブローク「なっ...!」
ビイナ「こいつがこれなら、他の二匹も使えそう」
ビイナはブロークの体に何かを刺した。
ブローク「ぐぁ...ぁ...」
その瞬間、ブロークは倒れこんだ。
バクター「ブローク!」
なんだ...?奴が黄色に光った瞬間、ブロークの背後に移動した...?
それに...何を刺した...?
リル「よくも...!!」
リルも火球を出し金棒を持って突撃する。
バクター「まて!リル!」
俺がそう言った時にはもう遅く、ビイナはまた黄色に光り、リルの背後に瞬間移動する。
リル「あ...やばい」
ビイナはリルにも何かを刺した。
リル「バク...タ...ァ...」
そしてリルも倒れた。
ビイナ「さて、残り1匹」
ビイナが俺に近づいてくる。
バクター「ブロークやリルに...何を刺した?」
ビイナ「ああ、深睡針ってやつ。これを刺すと、すぐに眠りに落ちる優れもの。次はあなたの番」
バクター「くっ...」
今のを見るに、どの攻撃を当てようにも当たらない...どうすることもできない...!
「喰らえ!!」
その時、村の生き残っているケモノ達が能力を使い、水弾や物などをビイナに飛ばした。
だがビイナは黄色に光り、能力を使った一匹のケモノの背後にいた。
ビイナ「...後の残っているケモノ達は弱いわ。うざいから先に殺してやろうかしら」
バクター「なに!?待て!!!!」
俺はビイナに向かって突撃した。だが、何かを切り裂く音とともに、ビイナは黄色に光り消えた。
バクター「あ...」
目に映ったのは、切り裂かれたケモノの頭と体。
そして次々に切り裂かれる音が鳴り響く。
バクター「おい...」
その音がなっている方向を振り向けば、切り裂かれた頭と体がまた映る。
その音は少し経った後、止まった。
バクター「...」
なんだ...これ......。
そして、ビイナがまた黄色に光り、俺の背後に来る。
ビイナ「次は、カーネスト町で会えるかもね」
深睡針を刺された。
バクター「うぁ...ぁ...」
なんで......こうなる...ん...だ......。
俺の意識は、眠りに落ちた。
第3章を読んでくださりありがとうございます。
うーん難しい!全然文字数が安定しないです。
毎回キリ良くつけようと思うと安定しないんですよね...。