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ACROS THE AMBER WILL  作者: neun
1章 昇る月が告げるのは
13/14

1-13 戦いの果てに 

毎日投稿とか、毎週投稿とか、ちゃんと休まず更新できる作家さんを心から尊敬しますね、はい。

一応、毎週金曜日投稿を目指してます。

よろしくお願いします。

 ヴァシリは目の前のTCGを忌々しく睨みつけた。

 彼には開戦当初から幾多のジメリア兵を屠りユーラルシアを支えてきた"エース"として"狼犬"として誇りと矜持があった。だがそれが、今塵となって崩れ消えていく。決して侮っていたわけではない、ただ見誤ったのだ。


 戦闘領域に到達したヴァシリは、いつも通り先行したスノーホワイトと交戦する赤いTCGと後方からそれを援護するサイクロプスタイプのTCGを観察した。特に注目したのはサイクロプスタイプであり、瞬時に記憶から敵機体の大まかな性能を割り出すと、その挙動と正確な狙撃からパイロットの練度を見極めた。

 機体は古いが、パイロットの腕はいい。だが、所々で甘さが見られる。エース級を援護するための数合わせの中堅。放っておけば仲間にとって脅威ではあるが、対処は難しくない。

 そう分析したヴァシリは何処かに隠れている死神の出現場所を加味し、サイクロプスタイプを自分が優先して処理するべきだと判断した。

 第二次侵攻開始からアーバンティアで頭角を現し、ユーラルシアへと被害を出し始めたジメリアの二人のエース。その片割れに対してスノーホワイトにハンツマン二機という十分すぎる戦力を当てれば、たとえそこに死神(ナイトオウル)が加わったとして、サイクロプスタイプを潰して戻れば十分間に合うと。


 だがそうはならなかった。


 早急に片付けられるはずのサイクロプスに時間を取られ、翻弄され、ヴァシリが何かおかしいと気付いた時には全てが手遅れだった。


 赤鬼(ヴァミリオン)の脅威度は想定を遥かに超えたいた。気付けばイオナが撃墜され、ボリスは死に体に、元々継戦能力の低いスノーホワイトは限界を迎えていた。ヴァシリが援護に戻ろうにも、サイクロプスタイプを放置することは出来ず、動けない。消耗した赤鬼だけなら、ボリスが殿を務め、スノーホワイトを逃がすことが出来ただろう。しかし、ある種の想定通りに死神が合流したことにより、その道も閉ざされていた。


 敵の情報を詳細に調べ上げ、幾多の経験を含め堅実に作戦を遂行するヴァシリの戦術は、『L-System』という規格外の切り札と、()()()甘い動きでヴァシリを釣り、マーク合流まで釘付けにするというナツメの策により崩れ去った。


 サイクロプスⅡ改がハンツマンを嘲笑うように、のらりくらりと攻撃を躱す。良いように消耗させられ、もうハンドキャノンの残弾もない。しかし、追撃を止めることも出来ない。

 全てを悟ったヴァシリはかつてない強烈な無力感に襲われた。


 [、、、大尉、こちらスノーホワイト、申し訳ありません、引き際を見誤りました。撤退してください]


 ヴァシリへとヴァレリアから通信が入った。

 何かを諦め、決断した声だった。


 [まて、何をするつもりだ]

 [背部ジェネレーターを暴走させ自爆します。ここでやられるなら、死神と赤鬼はせめて]

 [まて、早まるな]

 [大尉、いえ、ヴァシリおじさん。あとは、お願いします]

 [ヴァレリア!!]


 彼女からの返事はない。


 馬鹿を言うな、、、!また何も出来ず、友どころか、今度はその娘を失うのか。また、俺は守れないのか。

 ふざけるな、何が英雄だ、何が狼犬だ!


 ただ、焦燥感だけが増していく。


 [待て!応答しろ!ヴァレリア!ヴァレリア!]

『[いや〜大変そうだね〜]』


 あまりの不甲斐なさに絶望するヴァシリの耳に、場違いなほど軽快な男の声が聞こえた。モニターに映ったサイクロプスタイプを睨見つける。相手はすぐに分かった。


 [貴様ぁ!]

『[安心しなよ、自爆はさせないから。こっちも仲間の命がかかってるし。まあ、その後は知らないけど]』


 ヤケクソに、けれど正確に放たれたハンドキャノンを、嘲笑うかのように軽快に回避したサイクロプスⅡ改が、そのまま上空へ飛び上がった。そして、そのまま空中で超砲身のレールガンを構えて静止する。

 空中での姿勢制御に加えて遠距離からの精密射撃。それは言うまでもなく高度な技量が必用とされる。咄嗟の行動で、思いつきで出来るものではない。当たるわけがない。だが、ヴァシリは役に立たない経験則を捨てた。奴なら外さない、そう判断した瞬間、ヴァシリはハンドキャノンを捨て、腰のハンドアックスに手をかけた。リミッターを外しペダルを踏み込んだ。


 ハンドアックスを構えたハンツマンが各部の推進器を全開に飛び上がる。

 それはヴァシリに出来る最後の足掻きだった。


 [させん!]

『[はい、残念、おつかれさん]』


 機体に届かなくてもいい、ハンツマンが迷いなくハンドアックスを振り抜いた。切断された砲身が重力に従い落下する。


 [まにあわ、なかった、か、、、]


 苦渋に満ちたヴァシリの機体が推進力を失い落下していく。

 既に撃ち出された弾丸はスノーホワイトを確かに貫いていた。



 □■□



 胸部装甲を深く切り裂かれたハンツマンがハンドアックスを構え、スノーホワイトを庇うように前に出た。そこには既に死を悟り、故に、一歩も通さないと言う執念が感じられた。


 スノーホワイトが膝を付き静止する。背面が変形し露出した真っ赤なジェネレーターの周囲の空気が熱気によって揺らめいていた。


「オーバーヒートによる放熱?」

『いや、このタイミングで、はいどうぞと、ただ隙を晒すとは思えない。何かするつもりだ』

「なら、さっさとトドメをさす」

『同じ意見だ』


 ヴァミリオンと共にナイトオウルが左腕部に折りたたんでいたブレードを展開し走り出すと同時に、スノーホワイトのジェネレーターがバチバチと帯電し始め、その色が赤から白へと変わって行く。


『ジェネレーターを暴走させ、自爆するつもりか!』

 [姫さまの邪魔はさせん!]


 先陣を切ったヴァミリオンの前にハンツマンが立ち塞がった。振り下ろしたブレードとハンドアックスがぶつかり甲高い音とともに火花を散らす。


「どけぇ!」

 [ぐぉおお!]


 ヴァミリオンが一歩一歩と踏み出し押し返すごとに、ブレードがハンドアックスの刃に食い込んでいく。不意にリンファの視界がぼやけ歪み始めた。胸が焼けるように熱くなり、閉じた口の中に鉄の味が広がる。一瞬で押し戻され、リンファは口内のモノを無理やり飲み込み、歯を食いしばった。そして、拮抗する二機の横を通過したナイトオウルへとチラリと視線を移した瞬間、その右脚部が異音を鳴らし変形するのが見えた。


「っ!マーク!」

『こんな時に!』


 そのままバランスを崩し前方へ倒れていくナイトオウルの目前で、スノーホワイトが白く輝いた。

 タイムオーバーだ。

 じっとりと嫌な汗が肌着を張り付かせる。


 [皆によろしくお願いします]


 そして、遂に暴走し臨界に達する()()()ジェネレーターは見事に爆散した。鍔迫り合いを放棄し、ハンツマンを蹴り飛ばし後方へと飛ぶ。爆風が砂煙をまき散らしリンファの視界を奪った。


「マーク!マークっ!」


 朦朧とする意識をなんとか保ち、視界が晴れていく中で、なんとか立ち上がろうとする黒い機体が見えた。


 マークも自分も無事、自爆は失敗した?


『狙撃は成功、、、したよね?え、大丈夫?』


『ナツメか、ああ、なんとか、、、』

「、、、はっ、はは、遅い」


 どうやらナツメがジェネレーターを撃ち抜いたらしい。爆発はしたが、おかげで助かった。少し安心して再び意識を飛ばしかける。


 自爆未遂の白い機体(スノーホワイト)もまだ動けるらしい。エネルギー源を失い、まともに動くことも出来ないだろう、スノーホワイトが機体のあちこちから火花と軋みを上げながら立ち上がるのが見えた。

 自慢のスカートは曲がり折れている箇所もあった。

 各部から火が上がり、のっぺらぼうのようにツルンとした真っ白な顔はヒビが入り割れた箇所からは内部のセンサー類が見えた。


 もう、やつは動けない。


[、、、なら、なら!せめてっ!]


 リンファが気を抜いた次の瞬間、スノーホワイトの生き残った各部の推進器が点火され、機体が凄まじい勢いで眼前のナイトオウルへと突っ込んでいく。


「マーク!」

 [いかせん!]


 ブレードを構え走り出したヴァミリオンの前へ無手のハンツマンが立ちふさがった。


「いい加減に!どけぇええ!」


 リンファの怒声と共にブレードがその胸の裂け目へと吸い込まれた。赤い鮮血が噴き出し、血に濡れたブレードが深々と突き刺さる。ズタボロの機体はヴァミリオンを掴み寄りかかるように遂にその動きを止めた。 


「くっ、うごかない!邪魔を、するな!はなれろ!」


 リンファはそれを振りほどこうと必死で機体を動かすも、ハンツマンもそこに刺さったブレードすらピクリとも動かない。


「くっそ!マーク!」

『駄目だ、システムが、、ら機体が、、動か、、、』


 ナイトオウルへと組み付いたスノーホワイトが、遂に機体を引きずるように進み始めた。その先には大地がパックリと口を開け待ち構えている。


「マークっ!マーっ!、ぐっ、ゲホッ!」


 リンファが叫び、吐血する。


 抗うことも出来ず薄れゆく意識の中で、機体を引きずる鈍い音は消え、もつれ合う黒と白のTCGは深い谷底へと消えていった。



 □□■



「ナイトオウルからの信号消失しました」

「っ!急いでください」


 一台のホバートラックが砂煙を巻き上げ荒野を爆走する。その向う先には数機のTCGの残骸と、直立したまま動かないヴァミリオンの姿があった。


 スノーホワイトがナイトオウルを道連れにした。やはり送り出すべきでは無かったのではないかと、酷い後悔に襲われ、けれど、今はそれどころではないと頭を振って無理やり気持ちを切り替える。


 本来ならば戦闘領域に支援用のホバートラックで進入するのは自殺行為でしか無いが、凛ちゃんからの通信は途絶えおり、機体の様子からも自力で撤退できる状況でもないだろう。このまま放置するわけにはいかない。


 ヴァミリオンとの距離が数十メートルを切り、その側へと停車させるように指示を出す。ホバートラックが速度を緩めると、完全に停車する前にアカネは上部ハッチから車外へと出るとそのまま飛び降り、ざわつく部下たちを尻目に受け身を取るとそのまま機体へと駆け寄った。


 ボロボロのヴァミリオンを見上げる。

 幾多もの銃弾を受け損傷し傷ついた薄く華奢な装甲。赤い塗料が剥げ露出した銀の地肌が戦闘の激しさを物語っていた。足元のハッチを強引に開きハンドルを回すと、コクピット脇からワイヤーに足を引っ掛ける器具がついた簡易的な昇降機がゆっくりと下がってくる。


 ワイヤー先の器具に足をかけ、コクピット脇まで昇る途中、機体の横に転がるハンツマンが見えた。その胸から生えた鈍く輝くブレードの刃は所々が欠けていて赤黒い血がべっとりとこびりついている。死してなお自分の使命を成し遂げたその機体は、二機のTCGが渓谷へと消えるのを見送った後、ゆっくりと崩れ落ちた。


「この戦いに正義も、ましてや正解なんてないですよ、、、」


 巻き上げられたワイヤーが止まった。

 機体へと視線を戻し、コクピットハッチを強制開放し、上下に開いたハッチの上に降り立った。ゆっくりとその中へ顔を向けると、彼女は俯き静かに座っていた。その姿が、廃人になってしまった仲間たちと被り思わず顔が歪む。


「、、、凛ちゃん」


 静かに中に入り、彼女の首筋や手首に触れ状態を確認する。『L-System』がダウンした時点で、心身ともに限界だったはず。けれど彼女は戦い続けたのだ。

 スーツと機体の接続を解除し、彼女に刺さったプラグを抜いていく。


 機体を動かしゆっくりと彼女を降ろすと、下で待機していた衛生兵が担架に乗せトラックへと運んでいく。狭く硬い救護用ベッドに寝かされ、静かに眠る彼女になんて声をかければいいのか分からない。


「班長!陸戦艇が動き出しました!早くここから逃げないと狙われます!」


 どうやら、そんな事を考える暇さえ無いらしい。


「ヴァミリオンは私が動かします。皆は急ぎ撤退を」

「えっ!?そんな無茶な!途中で動かなくなるかもしれないんですよ!」

「いえ、まだ動きます、動かせます」


 困惑する部下を残しトラックを降りるとヴァミリオンのコクピットに飛び込んだ。先に撤退していくホバートラックを見送りながら、有線式のヘッドセットをかぶるとチャンネルを合わせる。


「ナツメさん!聞こえますか?」

『あれっ、アカネちゃん?』

「詳しい話は後で、急いで撤収します」

『了解、こっちもお客さんがちょうど帰っていったところだし、すぐ合流する。あ、ごめんレールガン壊しちゃった』

「無事ならそれで、、、良いですよ」


 艦砲射撃から逃げるように、戦場から背を向け走り出す。機体はやはり相当ガタが来ているようで、機動力は大幅に下がっていた。最初に陣を張っていた着地地点で、待ってくれていた四台のホバートラックと共に渓谷地帯を抜ける。


 当初の作戦通り、決められていた撤退ルートを使い、一日目の休息地として設定されていた仮設拠点に到着する。森の中に作られた、ただの開けた空き地に見えるが、元々、別の作戦で作られた場所であり、行きのヘリから投下されたパーツコンテナが中央に置かれている。


 ヴァミリオンが停止すると整備兵が駆け寄り点検が始まった。機体から降りる途中で、来た道の方からTCGの機動音が近づいてくるのが聞こえ、一瞬の緊張感のうち、それが聞き覚えのあるホバーの音だと分かる整備兵達は何事もなかったように作業を再開した。


 ヴァミリオンから少し離れた場所に停止したサイクロプスⅡ改からナツメさんが手を振りながら降りてくるのが見えた。機体各所に被弾が見られるものの致命的なダメージも見られない。歴戦の敵エースを相手にしていたとほ思えないほどだ。


「おつかれ、マークは?」


 ゆっくりと首を振る。


「そうか、まあ、彼なら、、、いや」


 分かっていたのだろうなんとも軽い返事だった。仲間を失ったにも関わらず、彼の様子はいつもとさほど変わらない


「凛ちゃんも、重症であると考えてもらえれば、、、意識もまだ戻っていません」

「あー、あれ、使ったんでしょ」


 思わずビクッと反応し動揺する私にナツメさんはふっと笑った。彼の無感情な黒く真っ直ぐな目が私を責めているようにも思えて、嫌な汗をかく。


「別にいいんじゃない、実際助かったしね」


 何と返せばいいのか分からないでいると、通信兵が焦ったように駆けて来て彼へと紙の束を差し出した。


「伝令です」


 彼は一瞬きょとんとした顔をして、何かに気づいたように紙の束を受け取った。


「責任者は繰り上がりで僕ってわけね、、、」


 そう言うと彼は肩をすくめ、紙の束へと視線を移した。読み進めて行くにつれ彼の表情が曇っていく。


「基地からですか?」

「そうそう」


 彼はそれだけ言うと伝令を持ってきた兵と共に通信用車両へと入って行った。何か良くない事が起こっている。それだけは確かなようだった。


 日が沈み空が暗くなった頃、出来る限りの機体の整備と点検が終わり休んでいた隊の全員が招集された。


 とうに集まった兵達の前で、集めた当人は紅茶をすすりながら、ぐるぐると同じ場所を回ってはため息を吐いていた。その様子に事情を知らないものは不思議そうな顔を見合わせる。そして、彼はおもむろに足を止め此方へと振り返りるとゆっくりと口を開いた。


「、、、さて、少し悪い話と、だいぶ悪い話どっちから聞きたい?」


 いつも通りの軽い口調なはずなのに、そこにおちゃらけた雰囲気はない。そこにいる全員が嫌な気配を感じ取っていた。


「どっちも、悪いんですね、、、」

「いい知らせは品切れ」

「じゃあ、少しのほうからでお願いします」


 嫌なことはどちらから聞いても変わらない。

 その時はそう思っていた。


「おっけー。少しの方だけど、、、端的に言えばノクトバーン基地は、どうやら想定以上に押されてるらしい。最悪落ちる可能性も視野に入れるべき、だそうだ」


 落ちる可能性がある。その言葉の衝撃に全員が困惑しその状況に恐怖した。アルダイル基地が死に体の現在、最後の砦であるノクトバーン基地が落ちれば、ジメリア軍はアーバンティア地方から撤退することになるだろう。そうなれば、その二つよりも前に位置する第二十二基地の末路は決まっている。


「しかも、集結していた全敵部隊が投入されているわけでも無いらしい。集結していた四割で押されてるってさ。全く何やってんだが、、、」


「そ、そんな!じゃあ、残りの敵戦力が投入されれば!ノクトバーンは!俺達はどうすれば!」

「あの陸戦艇は結局合流せず撤退したんだろ?どっちにしろ落ちるなら俺達は!マークさんは!」


 困惑と動揺が大きくなりパニックにも近い状態が広がっていく。誰も冷静ではいられなかった。残っている敵部隊がどれほどの戦力なのか、相手の作戦は。それが分かっていたとしても、私達に出来ることはない。絶望的な雰囲気が全員を包む。


 声を出さずに衝撃を受けていた私は、ふとこれがまだ"少し悪い話"である事を思い出す。


「それで、少し、なんですね、、、」

「まあ、盛り上がってるとこ悪いけど、落ちないと思うしね」

「え?」


 何でも無いことのように呟かれたその言葉にその場が一斉に静まり返り、木々のざわめきだけが響いていた。


「じゃあ、だいぶ悪い方は、、、」


 彼はティーカップをテーブルに置くと、少し目を閉じ、一拍置いて話し始める。


「アルダイル基地と、第二十二基地が攻撃を受けている。残った敵の戦力によってね。

 ユーラルシアが前線に集結させていた戦力は、ノクトバーン攻略の為のものじゃない、アーバンティアを攻略する為だったてわけさ」


 淡々と告げられたその言葉の意味を理解した時、私は膝から地面に崩れ落ちた。全員の心はこの瞬間間違いなく折れていた。そんな私達を見ていた彼はゴホンとわざとらしく咳払いする。


 再び集まる視線。

 彼は姿勢を正し、ゆっくりと口を開く。


「さて諸君、絶望に浸っているのもいいけれど、僕らに出来ることをやらないかい?ノクトバーンもアルダイルも、なんならアーバンティアだってどうでもいい。だって、僕らが帰る場所はたった一つだろ?」


 彼は一人、実に愉快そうに、不敵に笑っていた。


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