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ことの始まり
『ごめんなさい! ごめんなさい‼︎』
心の中では謝りつつ、佐久夜は、自分の周りを浮遊している系統に表示されているアイテム欄から選択をした、【扇子】を取り出した。
この扇子を使って、佐久夜は試しに自分の頭を叩いてみたことがある。頭を叩いたときは痛くなかったため、叩かれた相手も同様だとは思うのだが……。
佐久夜は〈憑依者〉の魂が口から出てくるように、遠慮がちに頭を叩いた。〈憑依者〉が倒れたと同時に自分の周囲を飛んでいる系統の表示が『おめでとう』と花火が打ち上げられた画像と共に表示されていることに安心して、佐久夜はその場に座りこんでしまう。
『まだまだ、油断は禁物だよ』
系統の中から自分を叱咤するような声が聞こえ、佐久夜は両手で扇子を握りしめる。
どうして、下級神の中でも下っ端から数えた方が早い自分がこんな大変な仕事をする羽目になったのかと天を見上げ、上司を恨みたくなってしまった。
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