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急に強くなる?編

長編で作っていく予定です。

かなり壮大な物語です。楽しんでくれたら幸いです。

 第一話



まるでシナリオのような大地震が世界を揺るがしたのは、すでに100年前のこと。その震源地から放たれた未知のエネルギーは人々に奇跡的な力を与え、一夜にして世界は「超人」に溢れた。それは、1,000キロもの握力を持ち、100メートルを3秒で駆け抜け、銃弾さえも躱す反射神経を持つ人々の出現だったのだ。


 その力は、日々の訓練と共に成長し、人々はそれを「一生」「二生」「三生」といったステージで表現するようになった。しかし、その成長は個々の超人の素質によって異なり、それぞれの限界も存在することが明らかになった。


 授業のチャイムが鳴り響き、大学の教室から学生たちがぞろぞろと出てくる中、特に急ぎ足で教室を出ていく一人の女性がいた。


「さつき、どうしたんだ?そんなに焦って。」ルーカスは、その女性に声をかけた。名前は皐月さつき、20歳の黒髪美人。その美しさは一見すると印象的で、黒い瞳は深淵を覗くような輝きを放つ。彼女の肌は雪のように白く、細身で均整の取れた身体は、身長160cmという端正なプロポーションを維持している。美しいストレートの黒髪は、彼女の美貌を一層引き立て、周囲を魅了する。ルーカスと皐月は席が隣で、時折会話を交わす程度の関係だった。


 皐月は一瞬ルーカスを見つめ、素早く答えた。「あ、ルーカス。今日はちょっと用事があってね。もう10分しかないから急がなきゃ。じゃ、またね!」その言葉と共に彼女は走って視界から消えていった。


 ルーカスは彼女が消えていく後姿を見送りながら、「大事な用事って何だろう…」と思ったが、それ以上深く考えることはなく、自分のアパートへと向かった。


 皐月が急いで向かった先は、地下闇闘技場。彼女の大事な日、それはここで開催される超人たちが集う死闘の日だった。闘技場には超人たちが集まり、命を懸けたバトルが繰り広げられていた。


「参加者、名前を記入してください。」


 順番が来た皐月は、受付の男性から名簿を受け取り、彼女の名前をずらりと記入した。受付を済ませると、試合開始までの間、参加者たちは各々準備に取り組む。闘技場に集まる超人たちは、見た目もさることながら、そのオーラにも圧倒される者が多い。


 一方、その地下闘技場からかなり離れた場所、古びたアパートの一室で、ルーカスはベッドに横たわり、スマホをいじりながら時を過ごしていた。何も知らずに、ただ無意識にスクリーンをスワイプするルーカス。とりあえずつけておいたテレビの放送の音声「今日は、超人誕生の歴史にせまります!... 我々現在、1,000人に一人の割合で突然覚醒して超人的な力を得ることになってからもうすぐで100年を迎えます。… いまだになぜこのようなことが起きたのか科学的に証明することが出来ておりません。…そこで今日の特別ゲスト、皆さんのよーくご存知の、世界政府機関ホワイトの副総裁のクリスティア様です~!…一言コメントをお願いいたします。」金髪で美貌の女性がマイクをもって喋った「皆様の安全を第一に考え、今後も犯罪率を0%にしますのでご安心ください。」ルーカスは、何気なく画面を見ることなく聞いていた。「ホワイトさんも頑張てるね~。ま、平和になるなら本当助かるよ」と独り言をつぶやいた。突然、彼の中に何かを感じたようだ。


「この気は…スカウトか?」


 その感覚に少し驚くルーカス。超人たちには特有な気が常にでており、超人であればお互い少し離れたところでもその気の大きさや特徴を容易く感じ取れるのだ。


 ルーカスもまた、超人だったのの」


 その瞬間、ルーカスの視界が変わった。彼はある能力を使い、自分の場所を地下闘技場と入れ替えた。周囲は一瞬で変わり、彼の視界には闘技場が広がっていた。


「念のため、隠しとくか」といいながらルーカスの体全体が透明になっていった。まるで透明化のスキルを使ったようだ。



「さて、どうなってるんだろうな…」とルーカスはぼんやりと考えつつ、闘技場の様子を確認した。すると、ちょうどアナウンサーの声が鳴り響いた。


「皆さま、いよいよ決勝戦の始まりです!」


 ルーカスは自分が来たタイミングで決勝戦だというのに、何とも運が良かったと思った。自分は暇すぎてなにか少しは刺激が欲しかったのだろう。「うーん、決勝戦か。どんな戦いになるんだろう?」と心の中で呟くと、アナウンサーの声が再び鳴り響いた。


「そして今、我々の目の前に立っているのは、無敗の龍之介様!そして、彼女は、苦戦を知らずすべての相手を一分以内に圧倒してきた。美しさと力を兼ね備えた女性、さつきだ~!」ルーカスの驚きは隠せなかった。「なんで皐月がここに!?」と驚愕の声を上げた。


 戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、皐月は敵の男に向かって突進した。彼の手には巨大な斧が握られていた。だが、皐月は一歩もためらうことなく、その危険な範囲へと突入した。彼女が男の間合いに入った途端、力強く地を蹴って空へ舞い上がり、同時に体を一回転させた。その勢いを利用し、回し蹴りを男の頬へ繰り出す。だが、男はまるで鉄の壁のように無傷で立ち続けた。


「ほう、若造がこれだけの力を持っているとは。興味深いね」男の嘲笑が響いた。


 皐月は直ちに距離を取り、再び戦闘の態勢に入った。「なんて硬さなの…それなら、これでどうだ?」と声を上げ、皐月は足元に気を集中させた。その瞬間、両足には透明な膜が纏わりついた。


「あの光…気の具現じゃないか!」「なんで、こんな小娘が気の具現なんか使えるんだ!?」周囲からは驚愕の声が飛び交っていた。


 男もまた皐月の足元を見つめながら、興奮に満ちた声をあげた。「これは面白い!気の具現を使うとは、これぞ真の戦いだね」


 気の具現。それは大人になってから初めて覚える、超人的な力を発揮する技だった。それがなぜ少女である皐月が使えるのか。その驚きは大人たちには計り知れなかった。


 そして、次の瞬間、皐月の姿は男の背後に移動していた。一瞬の出来事で、彼女の足元に纏わりついた気の具現は男の頸に一撃を与えた。男の体はその衝撃に耐えきれず、地面に倒れ込んだ。


「これならどうだ?筋力を一時的に10倍に引き上げることができる!」皐月が宣言した。


 その発言から数十秒後、「う、痛い…」と男が悔しそうに声を上げた。「お嬢ちゃん、それなりの一撃だったね。だが、それでは俺を倒すにはまだ足りないよ」と男は立ち上がり、笑い声をあげた。


 皐月の顔色は薄暗くなった。彼女が放った一撃は全力だった。筋力を一時的に10倍に高める「ブースト」は体力を著しく消耗する。しかし、その効果はわずか5秒しか続かない。彼女にはもう一度だけブーストを使うチャンスがあるが、再び同じ結果になることは確定的だ。


 彼女は心の中で思考を巡らせた。「どうすればいいのか、ここで諦めるわけにはいかない…再びチャンスを探すしかないのか?」皐月の深刻な思考が中断される。男の巨大な斧が彼女の首元にまで達していた。瞬時の決断で彼女は身を低くし、髪の一部が斧によって切り落とされる。まさに危機一髪だった。


 皐月は素早く後方に後退したが、男は再び彼女を追い詰めるために攻撃を繰り出した。大きな斧を振り回し、一瞬でも気を抜いたら即死という恐怖の攻撃が続く。皐月は全身でそれを避け、その一方で反撃の瞬間を待ち続けた。一撃でも受けたら終わりだという重圧が彼女を苛んでいた。


 会場には緊迫した熱気が立ち込め、観客たちは息を呑んでその様子を見守っていた。瞬時の決断と高度な技巧を駆使する戦闘はまさに命がけだった。それぞれの戦士が全力を尽くす様子は、観客たちに深い感動を与えていた。戦いは終わりを告げるどころか、ますます激しさを増していくばかりだった。黙々と観戦していたルーカスが行動を起こした。「しょうがないな…一生懸命なんだから、ちょっとだけご褒美をやるか」。彼の指は皐月へ向けられ、ある一言をほのかに口にした。「一滴、与える」。その瞬間、周囲は真っ暗になり、時間が止まったかのように静寂が広がった。指先から放たれた白い光が皐月の身体へと流れ込み、時間は再び動き出した。


「え?何これ!」驚きの声をあげる皐月。その反応には当然だろう。彼女の身体からは透き通るような水色の光が激しく放出されている。その光は強烈で、周囲の者たちが目を覆わずにはいられないほどだ。


 その光が収まった後、相手の男は驚愕の表情で呟いた。「信じられん…こんなのありえねえだろ」。この光景は周囲の全ての者が理解していた。それは「境地突破」の証であり、その輝き二生の覚醒に至った者だけが放つことのできる光だ。


 皐月が二生へと覚醒したという事実は、一種の奇跡とも言えるだろう。覚醒者は千人に一人の割合で生まれるが、ほとんどの者は一段階目でその生涯を終える。しかしながら、過酷な訓練と数多の戦闘を十年間続けることで、十万人に一人が二生境地へと進むことがあるとされている。


 現場にいた者たちは二つの驚きに打たれていた。一つは、目の前で二生への覚醒が起きたという事実。そしてもう一つは、たった20歳ほどの若い女性がそれを成し遂げたという事実だ。30歳のクリスティア副総裁が世界最速で二生への覚醒を達成したとされていたが、皐月はその記録を大きく更新したのだ。


 笑い声が響いた。「ハハハ!なんて面白い子だ。見せ物だな、お嬢さん」。皐月はまだ状況を完全に理解できていなかった。一生の後期に入ったのは去年のことで、たった一年で二段階目に進んだなんて信じられない。しかし、彼女は即座に切り替えた。「こうなったら、まだ勝つチャンスはある!」彼女は素早く男に接近し、手足を使った攻撃を繰り出した。その速度は目にも止まらぬほどで、男は全てをかわしていたが、皐月の動きは明らかに異次元だった。


 周囲の観戦者は一生の存在は、二生以上の者の動きは目では追いきれないと言われていた。まさにその通り、彼女の動きは速すぎてほとんどの者が見ることができなかった。


 皐月は攻撃を続けながら心の中で冷静に考えていた。「普通に動いているだけなのに、今までのブーストをはるかに超える速度だ。それに、全身が軽くなっただけでなく、力が溢れていて、今までとは全く違う…。これなら勝てる!ブーストを使ってみるか!」皐月は再びブーストを発動させた。そして、次の瞬間、周囲は一瞬だけ沈黙し、「おぉ!!!」という驚きの声が響いた。「とっくに合格ラインを超えてるけど、これはびっくりだな」。男は目の前の出来事に驚愕していた。皐月の全身は先ほどと同様に力の具現化が纏わっていた。だが、今度の色は水色ではなく赤色だった。これは二生の後期になって初めて使えるようになる技で、二生境地になってから五年以上の厳しい訓練と戦闘を経て初めて得られるとされている最奥の力だ。それを二生になったばかりの皐月が使っていた。その事実に、そのば場にいる誰もが驚きを隠せなかった。


 皐月は自分の進化に驚きつつ、男に向かって右足のキックを放った。「速い…間に合わない」男は慌てて右手の指輪を外し、左手でガードした。その衝撃は観戦者たちを外へと吹き飛ばし、最前列までが揺れたほどだ。その距離は10メートルほどもあったが、その衝撃は届いていた。「ふう、危なかった…もう少し遅かったら、俺の頭はあちこちに転がっていただろう」皐月は一旦後退し、構えを整え直した。全身に力の具現化が纏わっていたままだ。「負けるわけにはいかない!」と、次から次へと技を繰り出していった。


 しかし、相手はそれを受け流していく。たまに攻撃が当たることもあったが、相手の体にはほとんどダメージが入っていないようだった。皐月の攻撃はさらに激しさを増していった。互角に見える戦いだったが、ついに終止符が打たれた。


 男は「お嬢ちゃん、ごめんね。今日はここまでだ」と言いながら、中指の指輪を外した。次の瞬間、男の拳が皐月の腹に直撃した。皐月の意識は途絶え、そのまま床に倒れた。「決着!!!勝者、龍之介だ!!!」という結果が宣言された。


 ルーカスは実体化し、気を失っている皐月を抱え、自分のアパートに連れて行った。皐月が目を覚ました時、周囲を見渡した。「あれ?ここは?」「あぁ、気がついたか。」「私、負けたのね……」「まぁ、そういうことになるね。」「ってルーカス!?なんでここにいるの?ここはどこ?」と、疑問だらけだった。


「安心しろ、たまたま知り合いが地下闘技場で働いててさ。俺と同じ制服の女の子が倒れているって連絡が来てさ、行ってみたら皐月がいたからさ。」「えぇ、そうだったのね…ありがとう」「たいしたことないよ。今日は泊まっていけばいいんじゃないか。もうこんな時間だからさ。」皐月は時計を見た。すでに深夜の2時だった。「明日も早いし」「えっ、何であなたの部屋で寝ないといけないの?」と即应回答で拒否した。男と一緒に寝るなんて考えただけで恥ずかしいことだ。「「え?そういうことじゃないよ、ただ心配して言っただけなんだけど。」


「それはありがたいけど、じゃあ…帰るわ!」皐月はすぐに部屋を出て行った。


「なんだったんだ?ただ寝ていけばいいのに…」ルーカスは肩を落とし、皐月の後を見送った。


"アメリカにそびえ立つ一つの巨大ビル、その建物には大きな洗練された文字が刻まれていた───「WHITE」。


「昨日、日本で二人の新生が誕生したそうです」、パソコンに向かっていた社員が報告した。


「それは日常茶飯事だろう。そんな些細なことを報告するな」と、彼の上司は無関心に返した。


しかし、社員は続けた。「すみません、ですがこれをご覧いただきたい」と言って、上司に画面を見せた。


「何だというんだ?」と上司は興味津々で社員のパソコンへと近づいた。そして、画面に映った数字を見た途端、彼の顔色が変わった。


「何だと───この数字は!?」覚醒時に起こるエネルギーの波動を示す指数値が異常だった。この部署は人材スカウト部門で、日々の仕事は新たな覚醒者のエネルギー波動をレーダーで感知することだ。


初生覚醒者の波動は1~10、二生では500~1,000。しかし、三生の覚醒はほぼ存在せず、その数は世界でわずか20人。彼らの波動値は10,000~50,000である。今回、画面に映った数字はそれすらも凌駕する60,000だった。


この驚くべき事実は直ちにビル全体に伝達され、最上階の総裁室にも届けられた。「なるほど、これは興味深い。何としてもここに引き入れなければならない」と総裁は宣言した。


「はい、最高の条件を提示し、直ちに行動します!」と返答したスカウトチームは直ちに部屋を後にした。


その後、影から一人の女性がステップを進め、「総裁、私もその方面に用があります。ついでに見てきても良いでしょうか?」と声をかけた。


「構わん、好きにせい」と、総裁は大きく首を振りながら答えた。


翌日、皐月はいつも通り学校へ向かって歩いていた。昨日の出来事は夢のように感じられたが、その独特な感覚がまだ体に残っていた。歩道を進む彼女の約10メートル後方には、40代くらいの女性がいた。その女性はゆっくりと皐月に近づいていた。


その女性がビルとビルの間を通過しようとした瞬間、青年の声が響いた。「止まれ…それ以上彼女に近づくな。」女性はその声を聞くと、ぴたりと足を止めた。しかし、その行動は彼女の意志ではないようだった。体が自動的に動きを止めてしまったのだ。


心の中で、「何だこれは…」と混乱する女性。彼女の足は完全に動けなくなっていた。それは恐怖によるものだった。これは魔法などではないことを彼女はすぐに理解した。二生以上の能力者が放つ圧力が細胞レベルまで恐怖を植え付けた現象だ。


「クリスティアだったか…もしまた彼女に手を出すなら、それは我々への挑戦と受け取る」と、声は静かに告げた。そして、ビルとビルの間の影から一枚のコインが投げられてきた。コインは女性の目の前に落ち、恐怖は彼女から消え去った。


しかし次の瞬間、彼女の顔は先ほどの恐怖以上のものを感じていた。目の前に落ちていた銀色のコインには、「BLACK」と刻まれていたからだ。



少し昔話するね


ブラックは、その存在自体が謎に包まれた組織だ。一部の超人を除いて、多くはその存在すら疑問視していた。


その一部の超人とは、10年前に起きた「神の存在確認実験」に関与した者たちだ。たった5分間の神の攻撃に耐えた事件だ。その時、100名の二生と10名の三生境地、そして総裁がチームを組んで、神が本当に存在するのか確かめるための試みだった。クリスティアも二生としてその一員だった。


総裁は自身が世界最強であると確信していた。自分より強い存在がいてはならないという信念と、神の力を目の当たりにしたいという欲望からこの計画が始まった。神を服従させれば、自分がさらなる力を手に入れられるとも思っていた。


その実験は、あまりにも悲惨なものだった。危機や絶望に陥ると神が助けに来るという噂が広まっていた時期、総裁は男女老若問わず1000人を一箇所に集め、女性にはホワイトのメンバーが強姦を行い、男性には玩具のように刀や銃で傷つけ、命を弄ぶのだ。それはまさに絶望の極致だった。その状態が1週間続き、食事も水も一切与えられず、睡眠もほとんど取れなかった。


総裁はとうとう閃きを得た。「ならば最終手段をとるしかないな」と。その思いつきこそが、とても恐ろしいものだった。それは、10人ずつ目隠しして、ロープで手足を縛り、膝立ちにさせ、さらに1分以内に目の前の目隠しを殺さないと自分が殺されるゲームだった。人々は絶望に陥り、発狂する者、泣き崩れる者が後を絶たなかった。


そして、ついにその計画が実行される。


次々と命が失われていく、一人、また一人。その命を奪う者たちは避けられぬ運命から逃れるため、犠牲者を増やす。しかし、戦うことを選ばなかった者たちもいた。時を経て彼らの数は100人ほどにまで減った。九割の命が絶たれ、死者と血がこの空間を埋め尽くし、死臭が漂う。


総裁は全力で叫びを上げた。「おい、神よ! ここまでしても姿を現さないのか! これでも現れないなら、次はこの10倍の規模で再戦だ! お前が現れるまで終わらせないぞ!」


その次の瞬間だった。空間の上部から、時空が歪むかのような光景が広がり、そこから一人の女性が現れた。女性は水色の髪を持つ、平凡な少女ともいえる姿だったが、その場にいる者たちは一様に気づいた。神が現れたのだ。


女神は口を開いた。「お前ら、度が過ぎたわ。地球の治安を保ててくれるから見逃していたが、これ以上は無理よ。」


総裁は待望の神の姿を前にして、興奮を隠せなかった。「はっ!はっ!はっ!」と笑い、「ついに来たか神よ。誰が上か教えてやるよ」と言った。そして総裁は、自分の体に紫色のオーラを纏い、一瞬で神の前に立ち、拳を振りかぶった。


しかし神は、人差し指一本で総裁の拳を押し留めた。「残念だわ。本当に。」と小声でつぶやいた。女神の指は、総裁の拳をビクともさせなかった。それは総裁の全力の一撃をまるで子供の戯れにすぎないとばかりに無力化したのだ。


「そんな、馬鹿な!」


次の瞬間、総裁の体は二つに分かれた。その切れ目は彼の背後の建物や地面、さらには空気まで引き裂いた。神の手から力は解放され、全ては静寂に包まれた。


「これが罰よ。罪を償ってもらうわ。」彼女の言葉を聞き、ホワイトのメンバーたちは次々と倒れた。3生10名、2生の90名が一瞬で倒れた。なにもしていないはずなのに、彼らは突然その生命を奪われた。


「全滅だけは許してあげる。お前らがいないと地球の秩序が保てないから」と彼女は苦々しく口にした。生き残った10人の命だけは残すという彼女の決断だった。


生き残った10人は仲間たちが突然倒れた事に驚き、しかし、彼らの視線が女神の頭上に向かったとき、恐怖のあまりに腰を抜かした。その上には、時空の割れ目から現れた怪物が、何かを食べていた。


それは、心臓だった。人間の心臓だ。ホワイトのメンバーたちの心臓が、その怪物に食べられていた。


その場には10歳ほどの少女もいた。彼女の瞳には怒りが宿っていた。「大丈夫よ。すぐにあなたたちを治療してあげるわ。亡くなった者は仕方ないとして、生きているなら、どんな重症でもすぐに元通りにする。つらい経験は体は治っても心に深い傷が残ってしまうから、記憶も消すことにするわ。安心して」と彼女は言った。


「記憶は消さないで!」少女が懸命に訴えた。


「いいわよ。あなただけは記憶を残しておいてあげる。」と、神は答えた。「そうそう、二度とこんなことを繰り返さないように、私の自己紹介をしておくわね」と彼女は言い、自分の背中を向けた。背中には、「10」という数字が書かれていた。


「私は、ブラックの10番目の幹部、キシ…覚えておいてね。私より強い幹部は9人もいるからね。」と言い終えた彼女は、生き残った10人に銀色のコインを投げた。そのコインには「BLACK」と彫られていた。


昔話は終わり!


それは昨日の戦いから始まった。皐月は力に満ち溢れた状態にある自分が、未だ理解できずにいた。そして、そんな彼女があっさりと敗れた相手、龍之介。自分が進化を遂げたというのに、その力が全く通じなかったことにショックを隠せなかった。


「おはよう。」


声が後方からかかってきた。振り返れば、彼女の頭を悩ませる男、龍之介がそこにいた。


「あなたは…昨日の…」


「そうだ。昨日は申し訳なかったな。突然、用事ができてしまって。」


「私が全然かなわなかったのは、あなたが3生だからなんですね。」


皐月はこれまでにない激しさの戦闘を経験し、それと同時に3生の圧倒的な存在感を直接体感した。境地が2以上離れている者の気を感じ取ることは、難しい。だが、2生に上がった彼女は、龍之介の気を感じ取ることができた。


「2生になったお前には、隠し通せないか。なぜ、私に会いに来た?」


龍之介は一瞬、思案するような顔を見せ、指を鳴らした。彼と皐月の間に、薄い透明な壁が形成された。


「これから話すことは、他に聞かれるわけにはいかないからだ。」


皐月は自分たちを隔てる透明な壁を見つめた。彼女の心は緊張で張り詰めていた。


男が言葉を放つ。その一言に、皐月は動揺し、驚きを隠せなかった。それほどまでに衝撃的な一言だった。


「実は俺、ブラックのスカウターなんだ。お前を誘いに来たんだよ。」


彼女の頭の中は混乱し、同時に、感情が溢れ出た。涙が溢れ出し、彼女は跪いた。


「ありがとう…。この日を待ち続けていました。」


彼女の瞳には、強くなりたいという熱い思いが宿っていた。なぜ彼女がそんなにも力を求めているのか、その理由を龍之介は問いかけた。


「10年前、ホワイトのクリスティアに親を奪われました。その男は3生の後期、それは周知の事実です。彼と同じ境地、それ以上を目指さなければ、この復讐を遂げることはできません。だからブラックに入り、その力を得たい。それが私の願いです。」


彼女の言葉は、強い決意と願いを込めて語られた。龍之介は少し黙った後、再び口を開いた。


「そうか。分かった。その願い、叶えてやろう。今夜、お前の家に誰かが行く。それがきっかけで、お前をブラックの一員とする。ただし、基地についたらしばらくは戻ってこれない。だから、今のうちに、大切な人との別れをきちんと済ませておくことだ。」


そして龍之介の姿は、彼自身を取り囲む時空の歪みに包まれ、消えた。彼が去った後、皐月の心に残ったのは、満ち足りた喜びだけだった。ブラックへの招待が叶ったからだ。


時間が過ぎ、深い闇が覆いかぶさった夜、一筋の人影が皐月の住む家の前に立っていた。その男は漆黒のローブを身に纏い、その顔を完全に隠していた。しかし、男の振る舞いやその立ち姿からして、ブラックの派遣したスカウターであることに疑いの余地はなかった。


皐月は無言で家から出てきて、その男と視線を交わした。「あなたが、私を迎えに来たのですか?」


男は黙って頷き、指を一瞬鳴らした。


それが何を意味するのかを理解する前に、一瞬のうちに世界が白一色に塗りつぶされた。あたかも重力から解き放たれたかのような感覚に身を委ねると、次の瞬間、視界が開けて新たな風景が広がっていた。皐月が今立っているのは、全てが純白の壁で囲まれた空間、床は完全に黒の大理石で覆われていた。壁にはさまざまな宝石が埋め込まれ、その煌めきは空間全体に華やかさと威厳を漂わせていた。これが、ブラックの基地──私の新しい戦場だ。


黒ローブの男は、皐月をある部屋まで黙々と案内した。「君の新しい居場所だ。ここで、新たな仲間たちと共に生活することになる。ちょうど大会議が2日後に始まる。それまでは、基地の案内を読み、自由に使ってみるといい。ただし、王の区域、大会議室、幹部区域への立ち入りは禁じられている。それでは、また後で。」そう言って男は部屋から消えていった。


部屋の中にはすでに3人がいた。最初に皐月の目に入ったのはオリバーと名乗る黒髪の青年だ。彼は皐月を見つけるとすぐに気さくな笑顔を見せ、「新しいメンバーか!ようこそ!」と歓迎した。


次に名乗ったのは、エミリーという名の女性だ。彼女は一行も読み途中の本から目を上げずに、「ああ、はじめまして。私はエミリー。」と静かに挨拶した。


そして最後の一人、ノアは既にぐっすりと眠っていた。彼の周りに漂う疲れた雰囲気から察するに、夜遅くまで訓練に励んでいたのだろう。


皐月は自分の新しい居住空間となる部屋を見渡した。部屋は意外と広く、それぞれにプライバシーが確保されるような配置で4つのベッドが設置されていた。それぞれのベッド周辺には個々の持ち物が無造作に散らばっており、その配置一つにもその人物の性格や個性が表れていた。


オリバーは皐月が固まったままであることを見て取ると、すぐに詳しい説明を始めた。「これが各自のロッカーで、個人の装備品や持ち物を保管するんだ。食堂は2階にあって、朝昼晩の食事はもちろん、間食や飲み物も自由に取っていいんだよ。トレーニングルームは地下にあって、最新の訓練機器が全て整っているんだ。」


エミリーも本から顔を上げて、「図書室は3階にあって、ここで超人やブラックの歴史に関する知識を学びたいなら、いつでも利用していいわよ。」と付け加えた。


皐月は新しい生活の一日目を、この新しい仲間たちと過ごした。晩餐の時間になると、他の部屋からも新たなメンバーたちが次々と食堂に集まってきた。一瞬で見渡すと、少なくとも30人以上の新人が集まっていたようだ。


皐月は初めての仲間たちと食事を共にした。食堂は広大で、その内部にはいくつものテーブルが整然と並んでいた。テーブルの周りには他の部屋のメンバーたちも一緒に食事をしている。彼女の視界に映る限りで、少なくとも30人ほどの若者が食事を共有していた。


食堂に響くざわめきや会話の中で、彼らのパワーは常に微妙に揺れ動いていた。それはまるで、力強いエネルギーが空気中に振動し、それが皐月の感覚に直接触れてくるようだった。彼らの中には、まだ1生の後期である者もいれば、2生に突入している者もいた。


全体のレベルの高さに皐月は驚かずにいられなかった。



つづきー


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