夜
掲載日:2023/04/26
夜。ベランダに裸足で出る。コンクリートの冷たい感覚。お風呂上がりで火照った体に夜風が当たる。煙草に火をつける。吐いた煙が空に消える。目を瞑ったまま煙草を吸う。そして吐く。とても静かな夜。世界は眠りについてしまったみたいだ。僕は独り取り残されてしまった。
どれぐらいの時間が経ったのだろうか。ふと自分が何かに照らされているような気がした。しかし、目を開くことさえ億劫に感じた。それでも僕はゆっくり目を開けた。そこに映ったのは眩い光を放ち、僕を照らす満月であった。それは今まで見たことがないほど大きかった。僕はその大きさに飲み込まれてしまいそうな感覚に陥った。その光は世界で僕だけをつつみこむ。自然の舞台照明は僕だけを照らす。体が宙に浮き、ゆっくりと吸い込まれそうになる感覚。月はどんどん近づいてきている。その時、ポケットに入れていた携帯が震えた。その通知で我にかえる。僕は自分が何をしているのか理解するのにしばらく時間がかかった。
そして僕は煙草の火を消し、部屋に戻った。布団に潜り、目を瞑る。月光はもうない。




