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第2話 ラスボスのような天使さん

つん……でれ?

それは、昨日のバイト帰りの出来事だった。

朝桐学園の校則で、バイトは禁止されている。しかし、俺はワケあって学園側には内緒でバイトをしているのだが……まぁ、今はこの話は置いておくとしよう。

 バイト先で夜遅くまで残業をしてしまった結果、その日の俺の帰宅時間は凄まじく遅くなっていた。

 疲労に脳をやられながらも、俺は家路を辿っていた。

「つ、つかれた……」

 バイトで使用したヘルメットやタオルを、ズボンのベルト部分に引っ掛け、俺は暗くなり、外灯や店の灯によって照らされた街中を歩いていた。

「今月の給料はいくらになるか分からないけど……ボーナス弾んでもらえると良いな」

 そんな事を呟きながら歩いていた時だった。

「きゃあああぁつ! ひったくりよ!」

突然、直ぐ近くから悲鳴が聞こえる。その言葉に周囲の人間たちが足を止める。そんな中で、唯一足を止めずに人混みを走る黒づくめの男が一人。

「どけぇっ!!」

 間違いない、あれが窃盗犯であろう。というか、俺の方に向かって凄まじい速度で突進してきている。

(変に絡まれる前に避けておくか……)

 面倒事を避けるために、道の隅によろうとするが……それよりも速く、窃盗犯が走り抜け、俺の直ぐそばを通った。

「うわっ!?」

 次の瞬間、覚えのない衝撃が体を襲い、地面に向かって倒れこんでしまう。

「いたた……ったく、ほんとサイアク……って、アレ?」

 立ち上がろうとしたところで、自身の尻部分に違和感を感じた。それもそのはず、尻ポケットの中に入っていた、あるはずの感触が消えていたのである。

「あれ、財布がない!?」

 何度尻ポケットを触っても財布の感触はなく、胸ポケットやカバンの中を探しても感触はどこにもない。

「まさか…………あんのクソ野郎!」

 すぐにその可能性……先ほどの窃盗犯に盗られた可能性に思い至り、怒りを爆発させる。

「待ちやがれこの野郎!」

 その場から飛び起き、慌てて窃盗犯が走っていった方向へと向けて走り出す。

「!」

 車の走る道路へと出て、人混みを通るよりなお早く、直線距離を進む。

「みつけたっ!」

 不自然なほど騒がしい人だかりを見つけ、なんとなく注視してみると、先程ぶつかったと思われる人物……窃盗犯が、未だに走っていた。

「くそっ、裏路地に行きやがった!」

 道が狭く、人通りの少ない裏路地に入ったのが分かる。しかし窃盗犯が道に沿って逃走しているのに対し、俺は道路をそのまま一直線に横切り、追跡している。おかげで、かなりの距離を縮めることには成功したのだ。後は……

「とっ捕まえて、財布を取り戻す!」

 そう意気込み、窃盗犯が入った路地裏に向けて加速する。走る速度なら窃盗犯よりも俺の方がずっと早い。

「俺の財布を返せ、泥棒!」

「チッ、しつこいんだよ!」

 すぐ近くにまで迫った俺に対して怒りを露わにしながら、路地裏に設置されたゴミ箱を足止めとして倒す。しかし、俺はその場で全力で跳躍することで勢いを止めずに窃盗犯に肉薄する。

「俺の財布を返せ! あと慰謝料払えこの野郎!」

「くそっ、触んなガキが!」

 お互いがお互いの服やら手首やらを掴み、動きを封じる。

「もうすぐ警察も来る! 諦めろ!」

「チッ、クソが!」

 警察という言葉に恐怖したのか、窃盗犯の声により強い焦りがにじむ。このまま粘れば、警察が着て、どうにかしてくれる。そんな慢心が、俺に最悪の事態を招く。

「ぐあっ!?」

 突然、お腹のあたりに衝撃を感じ、肺の中の酸素をすべて吐き出してしまう。

「げ、げほっ、げほっ……」

「あんま調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」

 相手に殴られることばかりを警戒しすぎたせいだろう。恐らく、無防備な状態だった腹に、蹴りを入れられたのだ。

 何が起こったのか一瞬分からず、混乱しながら痛む腹を抑えながら蹲る。

「これで! 警察に! 捕まったら! どうしてくれるんだ! あぁ゛!?」

「う、ぐぅ!?」 

 しつこく追いかけられたことでかなり苛立っていたのか、窃盗犯は逃げることも忘れて俺に何度も何度も蹴りを入れる。なんとか顔を腕で覆い、身体を丸くすることで急所へのダメージは最小限に抑えてはいるものの、このままでは本当にまずい。

(や、やばい、は、早く誰か警察を……っ!)

 しかし不幸なことに、この場所は一目の付かない路地裏。しつこく追い詰めたのが仇となったのだろう。次第に、身体が痛みで悲鳴を上げ始める。

(こ、このままじゃ……もう、ヤバい!)

 窃盗犯の追撃に、心と身体が限界を迎えそうになったその時だった。

「はぁっ!」

「ぎゃっ!?」

 突然、どこか聞き覚えのある声と、窃盗犯の悲鳴が耳に届く。それとほぼ同時に、身体を襲う衝撃もなくなった。

「な、なにが……?」

「おっ、あんなにボコボコにされてた割には意外と元気そうだね」

 倒れている俺を見下ろす形で、誰かが声を掛けてきた。恐らく、この人が助けてくれたのだろう。

 男勝りな口調。しかしその口から発せられる声はどこか透き通ったウィスパーボイス調であり、声を聞いただけで女性である事が分かった。、黒いキャップ帽を目深くかぶり、長く繊細そうな黒髪を隙間から出して、結っている。身長もすらりと高く、上半身には赤いパーカー、下は黒いハーフパンツのようなズボンを履いており、シミ一つない魅惑的な太ももが惜しげもなく晒している。背には黒くて小さなバックを背負っており、顔を確認……しようとしたが、マスクと夜にも関わらずサングラスを付けているため、素顔は分からない。

「あ、アンタは……」

「このアマァ! いきなり何しやがる!」

 まるで俺の声を遮るかのように、窃盗犯が怒鳴り声を上げた。よく見ると、窃盗犯の顔には土が付いている。恐らく、俺を助けてくれた彼女が蹴りをいれたのだろう。相当怒っているのか、窃盗犯は大きな声で彼女を威嚇した。

「ギャーギャーうっさいわね。近所迷惑でしょ? さっさと消えて」

 彼女の言い方が気に食わなかったのか、少し離れた位置にいる俺でも聞こえる程、強い歯ぎしりをする窃盗犯。

「テメェ!」

「あ、危ない!」

 我慢が効かなかったのか、窃盗犯は逆上して拳を握り、彼女の顔めがけて殴りかかる。しかし……

「よっ!」

「ぐげぇっ!?」

 彼女は自身の顔を軽く逸らし、紙一重で拳を避けると一気に相手の懐に踏み込み、相手の顔に向けてカウンターパンチを決める。想像以上の威力だったのか、窃盗犯は鼻血を周囲に撒き散らしながら地面に倒れた。

「チッ、汚いわね……」

 嫌悪感を隠そうともせずに、血の付いた自身の拳を見る。おそらく、顔を殴った際の鼻血が拳に付いたのだろう。

「まぁいいや。それよりもほら、顎は狙わないであげたんだから、早く立ちなさいよ」

 鼻を抑えて苦悶の声を上げる窃盗犯に対し、挑発をする少女。

「こ、このっ!」

 衝動的に立ち上がり、再び彼女に殴りかかる窃盗犯。しかし、彼女は慌てた様子もなく、構えることもせずに笑みを浮かべる。

「このっ! 避けるんじゃ! ねぇ!」

「やだ」

 何度も何度もがむしゃらになって殴りかかるが、その全てを軽く避ける少女。

「す、すげぇ……」

 その一連の攻防を見た俺は、そんな言葉を口からこぼしていた。何度も何度も殴りかかる窃盗犯に対し、それを無駄な動き一つせずに回避する少女。それはまるで、素人とプロの殴り合いを見ているようだった。

「ふっ!」

「がふっ!?」

 大きく殴りかかった瞬間、彼女は姿勢を低くし、無防備な相手の腹に対して自身の肘を勢いよくぶつけた。

「まったく、私みたいなか弱い女の子にボロボロに負けて、男として恥ずかしくないの?」

「か、か弱い……?」

 胃の中のものを地面に吐きながら横たわる窃盗犯。たぶん……というか、絶対に彼女はか弱くはないだろう。

「はぁ、情けないなぁ……もっと私を楽しませてよ」

「いやどこのラスボスだよ……」

 残念そうにする彼女に、ツッコミを入れてしまう。

「はぁ……まぁいいや。元から期待なんてしてないし」

 小さなため息を吐く彼女だったが、ようやく俺の方に視線を向け、歩み寄って来る。

「ねぇ、ここに来た時すっごく殴られてたけど、大丈夫?」

地面に座り込む俺と同じ目線にまでしゃがんできた。一瞬、先程の窃盗犯同様にボコボコにされるかと思ったが、そんな事はなく、単純に身を案じてきただけらしい。

「あ、あぁ……ちょっと腕が痛いけど、大丈夫」

 右腕を確認すると、肌色は薄黒く変色しており、明らかに腫れていたのだ・

「あちゃ~、思いっきりアザになってるじゃん。ちょっと服を引っ張るよ?」

「え、ちょっ、痛っ」

 突然、俺の着ていたシャツから腕が露出するように引っ張り、背負っていた小さな黒いバッグから、湿布と包帯を取り出す。

「私が習い事の帰りで良かったね。じゃなきゃこんなの持ってないよ」

「ど、どうも……」

 真剣な様子で俺の腕や肩に湿布を貼り、包帯を手際良く巻いていく彼女。

(あれ? なんかこの人……どこかで見たことあるような……)

 顔にマスクを付け、深く帽子を被っているため素顔は分からないが、その声はどこか聞き覚えがあった。

「ほい、これで終わり。腫れが引くまで強く動かしちゃダメだからね」

「あ、あぁ……ありがとう……」

 記憶の中の人物と、目の前の彼女を照らし合わせようとした矢先に治療は終わってしまい、彼女は立ち上がった。

「それじゃ、私はこれで。この男の処理、よろしくね」

 それだけ告げて、彼女が帰ろうとしたその瞬間だった。

「後ろ危ない!」

「っ!?」

 なんと、先程彼女が倒したはずの窃盗犯が起き上がり、廃材と思わしき木材の棒を持って殴りかかっていたのだ。しかし、俺が直前で声を出したことで、彼女はその場から勢いよく横に向かって跳び退き、攻撃を回避した。その際、大きく動いたためか、帽子とマスクとサングラスが彼女の元から離れてしまう。

「クソがっ!」

 避けられたことで、悪態を吐く窃盗犯。

「うっざいなぁ……っ!」

「ひっ!?」

 彼女に睨みつけられ、本能的に恐怖でも感じたのか、小さな悲鳴を零す窃盗犯。その恐怖が、彼女に決定的な一撃を与える。

「寝てなさい!」

「ぎゃっ!?」

 次の瞬間、彼女はその場で勢い良く上に向かって飛び、窃盗犯の顔に向けて足を振り落とし……顔に、必殺の蹴りを入れた。反射的に木材でガードしようと構えた窃盗犯だったが、そんな行為すら無意味と化す一撃だったのだろう。防御に使った木材ごとへし折れ、窃盗犯は顔から血を流して倒れてた。

「いやぁ、危ない危ない。意外とガッツあるのね」

 軽く笑いながら、地面で苦痛の声を漏らす窃盗犯。そして、それを見下ろす少女。帽子とマスクとサングラスが外れ、その姿が露わになる。

「あ……天使さん!?」

「え?」

 突然名前を呼ばれたことで驚いたのか、彼女……天使 亜梨紗の動きが止まる。

「なんで、こんなこと……」

「あちゃ~バレちゃったかぁ」

 少しだけ気まずそうに視線を逸らした後、彼女はどこか困ったように笑うのだった。








「あ、池見くん! 来てくれたんだね!」

 昼休みとなり、俺は天使さんの指示に従って屋上に来ていた。俺が到着すると、彼女は既に到着していたらしく、お互いの姿を確認した瞬間に声を掛けてきた。

「それで、こんな所に呼び出して何の用?」

 ニコニコと笑みを浮かべる天使さんに対して、俺は無意識の内に警戒の視線を向けていたのだろう。しばらくすると、彼女は大きくため息を吐いた。

「……そんなに警戒するだなんて、酷いなぁ池見くん」

 視線を軽く周囲に向け、誰もいないことを確認すると……

「別に呼び出してカツアゲをしようってワケじゃないんだし、そんなに警戒しなくても良いじゃん」

「っ!」

 雰囲気が変わった。そう思ってしまう程、今の彼女の話し方、態度、仕草は別人のソレだった。

「ま、カモフラージュありがとね、雄介」

「……何のために、俺に窃盗犯撃退の手柄を押し付けたの?」

「あはは、それ聞いちゃうんだ? 女の子のヒミツを探るなんて、ひっどいなぁ雄介ってば」

 ケラケラと笑いながらはぐらかす天使さん。一応、クラスでは俺が窃盗犯を倒して天使さんを助けたという風になっているが……実際はその逆である。

「その手首の怪我だって、昨日の窃盗犯を殴った時の奴でしょ?」

「うん、そうだよ。どう? ちょっと厨二病みたいで面白いでしょ?」

 面白そうに包帯の巻かれた左手を前に出す彼女に、聞きたいことばかりが増えている。

「えっと……天使さんって、二重人格なの?」

「亜梨紗で良いわよ。正直、天使さんって呼ばれるの、嫌いなの。親しい友達には、名前で呼んでもらってるしね」

 少し怒ったような雰囲気で名前を呼ぶように言ってくる天使さん……もとい亜梨紗。

「で、私が二重人格かって話ね……そんな訳ないじゃん。私は私。それ以上でもそれ以下でもない。なに。二重人格期待してた?」

「いや……なんて言うか……普段の雰囲気と昨日の……というか今日の雰囲気が全然違うからさ」

「そんなの、ネコ被ってるだけよ。みんなに優しくて、勉強もできて運動もできて、完璧美少女の天使亜梨紗の本性が、こ~んな性格の悪い美少女だって知られたら、幻滅されちゃうでしょ?」

「自画自賛すげぇなオイ」

 思わず冷めた目で見てしまう。おっと、睨まれてしまったようだ。本能が危険を告げている。

「ほら、私って世間体を気にするタイプだし? 知らぬが仏って言葉があるでしょ?」

「……ソウダネ」

 かわい子ぶる様子の亜梨紗の態度に、無意識にカタコトになってしまう。

「それにほら、雄介のボランティアの事は黙っててあげるし、お互いに悪い事じゃないでしょう?」

「まぁ……そうだけど……」

あの日あの時、俺の腰にはバイトでのヘルメットや、道具などが腰のポーチに入っていた。完全に仕事人のような姿をしており、亜梨紗は俺の姿を見てバイトをしていることを察したらしい。

「雄介は私のことを黙ってる、私はボランティアの事を黙ってる。お互いにウィンウィンでしょ?」

「……どこがだよ」

 一件、対等に見えるこの提案……しかし、その実これは不平等な提案なのだ。その理由は一重に、彼女の人柄にある。

 学校での彼女は、清廉潔白、清楚そのもの。要するに、暴力とは最も遠い存在なのだ。そんな存在に対し、「実は彼女、ラスボスみたいな暴力女なんですよ」と、一生徒でしかない俺が言ったところで、信じてくれる人は誰もいない。

 そして、彼女が一言……池見雄介はバイトをしているといえば、生徒どころか教師も本腰を入れて動くだろう。

「何か言った?」

「いえ、なにも」

 笑顔で問いかけてくる彼女に、俺はそう答えることしかできなかった。ニヤニヤと笑みを隠そうともしていない。恐らく、俺と同じように考えているのだろう。俺は亜梨紗に逆らえないと。

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

「話が速くて助かるよ♪」

 嬉しそうに声を弾ませる亜梨紗。

「私から雄介にお願いしたいことは一つ……私と付き合っ」

「ごめんなさい無理ですさようなら」

「即答!?」

 俺の回答が予想外だったせいか、驚く亜梨紗。なんだ、ちゃんと弄れる部分あるじゃん。

「ここは普通『い、いや……俺なんかが亜梨紗と付き合うなんて、そんな……』って照れた所を、私が弄る流れじゃん!」

「お前、俺がそんな照れるような男に見えるか?」

 自分で言うのもなんだが、俺は恋愛に驚くほど興味がない。俺の姿を見て叔父に「雄介……このまま独身貴族にでもなるつもりか?」と言われたのは記憶に新しい。

「はぁ、つまんないの。せっかく照れた雄介を弄り尽くそうと思ったのに」

「どうでもいいから本題を言え」

 こいつ……見た目と名前とは裏腹に結構腹黒いな。

「まぁ、付き合って欲しいっていうのは、あながち間違いじゃないのよ」

「どういうことだ?」

「私、可愛くてモテるでしょ?」

「………………」

「ちょっと、何か反応しなさいよ」

 少しでも反応したら負けだと思い、話を続けるように促す。そんな俺の態度が気に食わなかったのか、彼女は不満そうな顔をしながら話を続ける。

「……一か月前からのことだけど……私、つけられてるの」

「つけられてるって……つまり、ストーカーか?」

「まぁ、そうなるわね」

 淡白な様子で告げる亜梨紗。

「家に手紙が届くわ、通学路で偶に視線を感じるわで……リラックスできる暇がないのよ」

 どこか疲れた様子の亜梨紗。なるほど、ここに来た時に周囲をやたらと確認することが多かったのは、ストーカーを警戒してたのだろう。

「つまり、俺はそのストーカー事件が解決するまで、お前の護衛をすればいいのか?」

「ま、そういうことね」

「別に、それなら良いけど……俺である必要あるか? ぶっちゃけ、そういうのは警察とかに相談した方が……」

「………………」

 警察、というワードに渋い顔をする亜梨紗。

「警察は……嫌よ。だってあの人たちに話すと絶対、お母さんにも伝わるし……私、お母さんには迷惑かけたくないの」

「なるほど」

 言い方が少し気になるが……今まで、誰にも相談が出来なかったのだろう。

「それに、ストーカーはこの学校にいるの。だから、探偵とかの部外者に協力してもらうこともできない」

「はぁ!?」

 まさかの情報に、驚く。この学校で暴力行為や迷惑行為をしようものなら、即停学。下手すれば退学だ。ストーカーだって論外。普通に停学案件である。

「私がいたずらにストーカーのことを話をして、学校の人たちに迷惑を掛けたくないの。だからこうして雄介に頼んでるってわけ」

「なるほど……」

 彼女なりに、色々と考えてはいるのだろう。ただの性格の悪い二重人格系狂暴女かと思ったが、違うらしい。

「でも貴方なら、私の本当の性格も知ってるし、弱味も握ってるし、口も堅そうだから遠慮なく迷惑をかけられるでしょ? 気兼ねなく友達を頼めるなぁって」

「お前、ひょっとして友達を肉壁か何かだと思ってないか?」

「てへっ」

「最低だなオイ」

 前言撤回。普通に腹黒かった。

「はぁ……分かった。俺も協力するよ。というか、協力するしかないだろ、最初から」

「ありがとね!」

 笑顔で感謝を伝えてくる亜梨紗。

「それじゃあ、今日から友達として、よろしくね? 雄介くん♪」

 屈託のない笑みを浮かべながら、彼女は俺の名を呼んだ。

 その笑顔は文字通り天使のようであり……どこか悪魔じみたものもあった。

 こうして俺は天使 亜梨紗の、〝友達契約〟をすることになるのだった。





 ツンデレとは何かわからなくなりそう

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