第10話 身体測定
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「それじゃあ、午後は身体測定があるので、全員昼休み中に体操着に着替えてくださいね~」
『は~い』
4限目の授業を終えた担任の言葉に、教室にいる生徒がけだるげに返事をする。
「身体測定か……」
「高校生になると、今更って感じがするよな」
俺は明人と共に体操着に着替えるために男子更衣室に向かっていた。一応、クラスの男子はみんな
「……ふと思ったんだけどよ」
「なんだ」
「ウチのクラスの女子って、可愛い子が多いよな。後胸がデカい子」
「興味ない」
なぜ、明人は俺の肩に手を回すのだろう。
「お前、保健委員だったな?」
「安全な位置から保健室を覗ける場所を教えろって話なら御免だ」
「ちっ」
考えが図星だったせいか、舌打ちをする明人。
「第一、この学校で覗きなんてしようものなら秒で停学だぞ」
「分かってるよ」
お互いにそんな事を言いながら、俺たちは男子更衣室に入ったのだが……
「うおっ!? お前ら、何してんの……?」
男子更衣室の扉を開けた瞬間目に入った光景……それは、男子約20名が一か所に身体を寄せ合うように密着し、何かを一転に凝視している光景だった。普通にむさくるしい。
「これは……歴代の勇士によって作られた叡智の結晶さ……」
男子の一人が、なにやらボロボロのノートを俺と明人に見せてくる。
「なんだこれ? 俺にはただのボロボロのノートにしか見えないけど……」
ボロボロのノートの表紙には『夢と希望』と書かれている。何かの小説のタイトルだろうか? しかし、明人にとってはこのノートはかなり衝撃的なものらしい。
「ま、まさかこれは……っ!?」
「ふっ、東條……お前なら存在くらいは知っているだろう?」
なんか、勝手に盛り上がっていた。
「何なのこのノート?」
試しに、明人に聞いてみた。
「う、噂で聞いたことがあるんだ……俺たちよりも何代も前の先輩に、稀代の変態がいたと……」
「は?」
今、明らかに変な単語が混じっていた気がする。
「その先輩は、身体測定の時期になると必ず姿を消していた……女子の身体測定の様子を見るために」
「最低だなオイ……で、そのノートとそのド変態が、どう関わりがあるんだ?」
「このノートは……その先輩が学園生活の全てを掛けて調べ上げた、最強の覗きスポット……それを記した聖遺物だ」
「そんなもんを聖遺物にすんじゃねぇ」
まるで神聖な宝物を触るかのようにそのノートを持つ手を震わせる明人。
「う、噂では教師に回収されたと聞いていたが……お前ら、どうやってこれを?」
「何故か……何故か、この更衣室にあったんだ」
どうやら、男子たちも何故ここにノートがあるのか把握していないようだった。
「まさか……これは天啓なのか? 俺たちに、女子たちの身体測定を拝めという……」
「クソみたいな天啓だな」
俺の一言に、明人含めた男子たちが一斉に睨んでくる。
「テメェに何が分かる! 窃盗犯を助けてから天使との距離を一気に近づけやがってよぉ! あぁ? 俺らへの当てつけか? 仲の良い俺ならいつでも下着くらい見れますよってか?」
「俺とアイツ、そんな関係じゃない。というか、見たくもない物を見せられた俺の気持ちも考えてくれ……」
「見せられた……? はっ、テメェ見たことがあるのか!」
「あ、やべっ」
もちろん、以前のボクシングジムでの出来事である。完全に失敗した……男子たちの目が、完全に親の仇を見る目である。
「粛清……粛清あるのみ!」
『粛清! 粛清! 粛清!』
「みんな、コイツを許して良いのか!」
『否! 否! 否!』
「そうだ、俺たちはこいつを許しちゃいけねぇ!」
『然り! 然り! 然り!』
「め、めんどくせぇ……」
明人の号令に合わせて高ぶる男子たちの闘志。悲しきかな、うちのクラスはこういった団結行動に関しては定評があるのだ。
「やぁみんな、何をしているんだい?」
『テメェも粛清対象だ原田ァ!』
その矛先は、扉を開けて更衣室に入ってきた原田にも向けられた。
「普段からモテモテで女子に恵まれたテメェも俺たちの敵だこの顔面高学歴が!」
「え、なんだい突然……褒めないでくれよ」
「褒めてねぇ! 潰すぞ!」
犬のようにキャンキャンと吠える明人。
「とにかく、このノートは男子だけの秘密だ! 教師はもちろん女子にも……この場にいる男子全員の秘密だ! 全員で、楽園を目指すぞ!」
『おう!』
「ただし雄介、原田! お前らはダメだ! 女子に恵まれてるからなぁ!」
「おう、全然構わない」
「僕も別に平気かな」
俺も原田も、不参加の意を示した。
「よっしゃお前ら! さっそく行くぞぉ!」
『うおおおおおおおお!!』
男子たちは、ノートを持って更衣室を飛び出た明人の後を追うように更衣室を出て行った。
「いやぁ、みんな元気だねぇ」
「…………そうだね」
男子たちが全員で散ったことで、俺と原田は、必然的に2人になってしまった。
「僕たちは僕達で、普通に着替えよっか」
「あぁ」
原田の言葉に同意し、俺たちは着替えを始めた。
「最近、天使さんとはどうだい? 上手くいってるかな?」
「うまく行くも何も、俺と亜梨紗は付き合ってないぞ」
原田の質問に適当に答える。詳しく話す義理もない以上、変に馴れ馴れしくする必要もない。
「酷いなぁ。僕はキミにも興味があるんだよ?」
「は?」
俺にも興味がある?
「どうやってあの天使 亜梨紗を篭絡したのか……いやぁ、何度考えても不思議でさ」
「知るか。というか、むしろ俺は亜梨紗に無理やり付き合わされているんだ。勘弁してほしいくらいだ」
「その割には、随分と楽しそうに見えるけどね?」
「…………」
否定は、出来なかった。しかし、コイツに言うのも癪なので、黙った。
「キミは……天使 亜梨紗のことをどう思っているんだい?」
「別に、どうも思ってない」
事実だ。俺は亜梨紗に恋愛感情なんて抱いていないし、他の女子だって同じだ。
「ただの友達だよ」
「そっかそっか」
先ほどから、意図の読めない質問ばかりを繰り返されている。面倒だ。
「友達……ねぇ」
「……さっきからなんだ? ずっと意図の分からない質問ばかり……言いたいことがあるなら早く言えよ。まどろっこしいのは嫌いなんだ」
「じゃあ、そうさせて貰うよ」
次の瞬間、原田は体操服を着た俺の胸ぐらを掴むと、表情声音共に変えることなく……ただ、底知れない圧力を込めた様子で言葉を紡ぐ。
「天使亜梨紗を、僕に譲れ。」
「…………」
「不相応という言葉があるだろう? 天使亜梨紗の隣に立つのは、僕だ。キミじゃない」
「そうか…………で?」
俺は胸ぐらを掴む手を払い、心からのメッセージを送る。
「言っておくぞ。お前の思惑なんて心底どうでもいい。俺は亜梨紗に頼まれて一緒にいるんだ。お前に命令されて離れるつもりはない」
脱いだ制服を纏め、扉に向かう。
「亜梨紗の隣に立つのは、亜梨紗自身が決めるんだ。勝手にお前が決めるな」
扉に手を掛ける。しかし、更衣室の外に出る前に一つ、これだけはどうしても言っておきたかった。
「俺、やっぱりお前が嫌いだ。その何もかもを思い通りにしようとしているその性格が、心底気に入らない」
その在り方は……あまりにも、俺の神経を逆撫でする。八つ当たりのような者なのかもしれないが……それでも、かなりイラついていた。多分、あれだ。俺と母を捨てたクソ親父に通じるものがあるからなのかもしれない。
「亜梨紗は確かに性格悪いが……それでも、お前よりは百倍マシだ」
俺は、扉を開けて更衣室の外に出た……
「うおっ!?」
扉を出た瞬間、誰かと衝突した。
「うわぁビビったぁ……え、アレって……」
ぶつかった人物を確認しようとしたが、かなりの勢いで走り出していたのか、確認することはできなかった。
「もしかして……亜梨紗か?」
ぶつかった人物が、どこか見おぼえのある黒髪だった気がした。俺は、そんなこと考えながら、俺は更衣室の扉を閉じる。
(まぁ、気にしてもしょうがないか)
俺は直ぐに思考を切り替え、その場から離れようとした……しかし、タイミング悪くポケットに入れたスマホに着信音が届く。
「これって……友梨奈さん?」
スマホには、友梨奈さんとだけ表示されていた。俺は、どこか嫌な予感を覚えつつも、着信のボタンを押すのだった。




