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追加エピソード

 妹が男性に見せる為にお化粧を…………本当に、嬉しい変化だった。

 姉妹の中で一番恋愛に対し積極的なのはあの娘だった。

 それなのに学生時代の一件から男性が怖くなって人生を諦める様になった。


 あの時、あたしとアリスも心に深い傷を負った。

 アリスはリリィを守る事に執心し剣の道を選んだ。

 学生時代に何度か男子からアプローチされたことはあるけどすべて跳ねのけていた。

 アリスもまた、姉を傷つけた『男性』に対し強い不信感を持っていたから。


 あたしだってそうだ。

 正直、恋愛なんてものに希望を見出せなかった。

 それでもあたしまで消極的になってしまえばリリィは自分のせいだと思ってしまう。

 

 だから、あたしは変わらずおしゃれを趣味にしたし恋愛にも積極的な姿勢を見せていた。

 3人でおしゃれをしながら笑い合っていた幼い日々。

 だけど今はひとりでただ鏡に向かって化粧をするだけ。

 

 毎日、毎日。

 本当は泣きそうになって止めてしまいたくなる。

 かつて隣に居た妹達の笑顔は消えてしまって、それでもいつか『あの時』が戻って来ると信じて。


 二人で鏡の前に座ったのは何年ぶりだっただろうか。

 リリィは少しずつ、自分の人生を取り戻し始めている。

 彼の、ユリウスのおかげで。

 

 恐らく彼なら妹の心を暗闇から救い出してくれる。

 そう信じて……


「ねぇ、どうだった?ユリウスはちゃんとお化粧してた事わかった?」


 お化粧をして行った妹に彼がどんな反応をしたかが知りたくてあたしは半休を使って家で待機していた。

 帰ってきた妹の顔を見て、確信はした。これは、上手くいった!!


「ん。まあ、平均点の反応だったけどね……ってだからユリウスは関係無いって!!」


 そう言っている割に顔が紅潮している。

 はいはい、わかってますよ。


「ケイト、そのありがとう。何かあんたにお化粧教えてもらってたらこう、昔を思い出せて楽しかったわ。幼い頃よく鏡の前に座ってはしゃいだわよね」


「!!」


「懐かしいわね。よくお揃いの服着たり……あれ?ケイトなんか泣きそうになってない?」


「いや、ちょっと目に……ゴミがね。ふふっ、おしゃれって楽しいでしょ?ねぇ、今度久々にお揃いの服来て出かけてみる?」


「いや、私とあんたじゃ似合う服も違うでしょ?だいたい、背だってあんたの方が10cm以上高いんだし、流石に年齢的に少し恥ずかしい……」


「ふふ、まあ確かに服の趣味違うしねー。それじゃあ、一緒に服を買いに行きましょう。あんたに似合う服を見つけてあげる。それとお化粧でユリウスなんかイチコロよ」


「だ、だから!何でそこでユリウスが出てくるのよ!?」


 頑張ってね、リリィ。

 いつか自分の気持ちに気づいて諦めていた人生を取り戻せる様に、あたしはあんたを支えるから。

 あんたの事を、あの男に託すその日まで……

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