心霊研究部部長は丘サーファーっぽい陽キャの後輩部員が嫌い
※なろうラジオ大賞3 参加作品
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時計の針は深夜2時。
私達心霊研究部は古いラジカセで空のカセットテープを回し、心霊現象が起こるという鏡の前に立っている。
はしゃいだ生徒が作った土の混ざった雪だるまが、学校前の交差点の信号機の光に照らされ、それこそ幽霊のように浮かんでは消えて見える。
しかし
「なにも起こんねっすね~」
「まだわからん! テープに不審な音が入っているかもしれないじゃないか!」
助手として連れてきたのは、チャラい一個下の子。
私は密かに奴を『丘サーファー』と呼んでいる。
チャラけた男子を揶揄する言葉らしい。
私はコイツが嫌いだ。
だが、一人で深夜の学校に忍び込むのは流石に怖い。
誘っても誰も乗ってくれない中、来ると言ってくれた勇気は買う。
「それより寒くないっすか? 売店の隣の自販行きましょ~、お菓子も持ってきたんで」
「遠足かよ」
まあ確かに寒いし小腹も空いた。
売店隣の自販機には、育ち盛りの我々の為に『おでん』や『お味噌汁』まで売っている。
私は『お汁粉』を……奴はなんと『珈琲』を買っていた。
やっぱりコイツが嫌いだ。
何故この素晴らしいラインナップで珈琲なんだ。
そもそも心霊研究部に入っておきながらサッカー部の助っ人に誘われる陽キャであり、あまつさえハットトリックなどを決めて女子からキャーキャー言われるとか、許せる要素がない。
部室に飾られているオーパーツのレプリカのどくろはまだしも、ただの百面ダイスにまではしゃいで入部を決めたのにもイラつき
「それはただのサイコロだァァァ!!」
と叫びグーパンをかましてしまった私は悪くない。
その後部室へと移動し、お菓子を食べながらカセットを再生。
「なんもないっすね」
……無音だった。
サッサと帰ろうと立ち上がると、小走りで扉へ向かい開けようとする。
紳士気取りか。
「……あれ? 開かね~す」
「馬鹿な」
しかし扉は開かず。
「ふむ、興味深い」などと余裕ぶるも、内心焦っていた。
密室でふたりきり……
(いや私など相手にはしないだろう)
しかし、奴はまるで映画の主人公のように私に壁ドンをし、潤んだ瞳で見つめてくるではないか!
「部長……言いづらいんですが俺ッ」
「なっなんだ?!」
「もう我慢できない……!」
「ひっ?!」
「尿意が……」
「──……」
「あ、開いた」
そして奴はトイレに走り、スッキリとした顔で戻ってきた。
……やっぱり私はコイツが嫌いだ。
この時はまだ、奴と生涯に渡る長い付き合いになるとは、思ってもみなかったのである。
ご高覧ありがとうございます。
申し訳ないのですが、感想返信少し遅くなります。
前作に感想下さった方も、ありがとうございます。
少々お待ちください。