闇魔法Lv0.1なので闇魔法ダークマターが撃てません ~それでも恋のキューピットにはなれた模様~
魔法Lv0.1シリーズの3作目です。今度はどんな魔法が炸裂?するのでしょうか。
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
騎士爵という最下級貴族なのに特別にこの結婚披露宴の末席への出席を許された私。
爵位が低すぎてどうせ誰も話しかけて(貴族の社交のこと)こないのだから出された料理に思う存分舌鼓を打ち鳴らしてやる。
第3皇子は能力は優秀で簒奪の野心もなく大公位もいらないと言われ愛する妻の実家に婿養子に行きたいとだけ公言した。
そこで子供が令嬢が一人しかおらず婿を探していた公爵家との縁談になったのだ。
しっかし本当は人間不信で破滅願望があり王位を簒奪して諸国全部を敵にした大戦争を計画していた危険人物をよく矯正できたものだ。
「此度のレベルアップ、真にめでたきことと思います。そしてそのレベルアップで闇魔法に目覚められたとか」
役職を持たない貧乏騎士爵は冒険者になって家計を支えることも多い。
数代前に聖女を出した我が家も今では役職はなく家計のためにモンスター退治が生業だ。
先祖代々の宿痾であるクソステのためパーティーに入れず、ひたすらノンアクティブなモンスターを狩り続けて5年かけてようやく達した念願のレベルアップ。
はい、成長限界も先祖代々Lv2で終わり!閉廷!以上!解散!
「冒険者ギルドの資料を見たのならもう知っていると思いますが、私はもうレベルアップしませんし魔法レベルが低くダークマターどころか他の闇魔法もろくに扱えません。失礼ですが公爵令嬢様のご期待に応えるようなことはできないと思いますが」
「いえ、貴女のその低い魔法レベルはむしろこの国にとっての福音となるでしょう。ときに私の婚約者である第3皇子様のことはご存じですか?」
「一般的な範囲しか。内政も外交も軍事も優秀だとか」
「・・・じつは彼の心には重い澱みがあり、国を巻き込んでの破滅願望があるのです。このままいけば彼は兄たちを弑し王位を簒奪し破滅のために諸国に軍事侵攻するでしょう」
「とても聞きたくなかったスキャンダルですが先祖がたまに得るスキルのせいで王室から無茶振りを強要されているのは知っています。その上で言いますが私の闇魔法では第3皇子を弑することも矯正することもできませんよ」
「いえ、まだ希望はあるのです。彼がこんな破滅願望を得たのは幼き頃、実の母からの愛を得られず周囲の女性も彼を傀儡にしようと謀り、そのことで女性不信に陥っているからなのです」
「はぁ、ですが女性不信と私の魔法とどんな関係があるのでしょうか?」
「ある日、私は彼の独り言を聞いてしまいました。『ヤンデレっていいなぁ・・・』と。彼は女性からの真実の愛にとても飢えているのです」
「すみません、帰って良いですか?」
「じつは彼は市井に出ているヤンデレ物語本、『フューチャーダイアリー』の大ファンでして」
「王族の性癖なんて知りたくないので帰らせてください」
「以前、公爵領の公爵邸の図面を見たいと言われ、建築時の図面を領から持ってこさせたら小声でぼそりと『地下室はないのか』などと」
「女性を監禁したいんじゃなくて女性に監禁されたいの?どんだけ歪んでんのよその皇子」
「ダークマターは暗黒粒子で全てを破壊する闇魔法。ならば魔力が低ければ私の心だけを良い感じに壊すことはできないでしょうか」
「婚約者のために廃人志願するなんて貴方は既に立派なヤンデレですよ」
「上手くいったら公爵家寄り子にして経済援助もしてあげますよ」
「・・・くっ、そんな誘惑に負けないもん!」
「寄り子なら当然、経済状態のいい騎士爵公子のお婿さんも紹介してあげますよ」
「・・・くっ、殺せ!」
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
結婚式を告げる教会の鐘の音。2人を祝福するライスシャワーと返礼のブーケトス。花嫁を抱き上げる花婿。
そしてよく見ると2人の手首にはまっているお互いを縛る手錠。花嫁の目から消えてるハイライト。
諸国入り乱れての大戦争を阻止したんだ。あのとき『劣化ダークマター』を使った私は悪くぬぇ!
さぁて、心行くまで料理を堪能したからさっさと私邸に帰って釣り書き見て念願のお婿さん探さなきゃ。
純愛が世界を救う。
ヤンデレは純愛です。